システイン

システインの評価 S

システイン

筋肉・皮膚・臓器・血球成分・ホルモン・酵素など体を構成しているものの主成分はたんぱく質です。

たんぱく質は主に20種類のアミノ酸が複雑に組み合わさることで作られます。
筋肉・皮膚・臓器など同じ「たんぱく質」なのに形・性質・働きが異なっているのはアミノ酸の組み合わせや配列の順番が違うためです。

20種類のアミノ酸はたんぱく質を構成する材料となるほか、必要に応じてエネルギー源としても利用されます。
20種類のアミノ酸は9種類の必須アミノ酸(体内で合成できない)と11種類の非必須アミノ酸(体内で合成できる)に分けられています。

システインは非必須アミノ酸に分類されます。システインは分子構造中に硫黄を含んでいる含硫アミノ酸の1種です。

含硫アミノ酸

硫黄を含むアミノ酸を含硫アミノ酸といいます。含硫アミノ酸の代表的なものとしてメチオニン・システインがあげられます。

システインは生体内ではメチオニンから生成されます。

システインの主な働きは肌・爪を健康に保つ効果(ケラチンの重要な構成要素として)、美白・美肌効果解毒作用です。

 

システインの効果・効能

髪を健康に保つ 

髪においては、その成分のほとんどがケラチンなので 髪≒ケラチンといっても言い過ぎではないと思います。

髪の構成

  • たんぱく質 80~%
    (うちケラチンたんぱく質 80~90%
  • 水分   ~10%
  • 脂質   ~4.5%
  • メラニン ~5.5%

※数値はアバウトです。
※単に「髪の90%以上がケラチン」と表現されることが一番多いと思います。自身もこの表現を一番使っています。


髪のケラチンは18種類のアミノ酸で構成されています。
そのうちシステインはもっとも重要なアミノ酸といえます。理由は以下2つです。

①ケラチンに最も多く含まれているアミノ酸

こちらは髪のケラチンのアミノ酸組成です。

ご覧の通りシスチン(システインが2分子結合したアミノ酸が一番多く含まれています。ケラチンを構成するアミノ酸は18種類ありますが、このアミノ酸だけで全体の約1/6を占めています。

 

②ケラチンの構造を安定化させる

システインはジスフィルド結合を形成することでたんぱく質の構造を安定化させます。

ジスルフィド結合 
たんぱく質分子内、あるいはたんぱく質分子間で2つのシステインに含まれるSH基同士が酸化されることで形成させる架橋のことをいいます。S-S結合、シスチン結合、ジスルフィド架橋とも呼ばれます。
ジスルフィド結合はたんぱく質の立体構造の安定化に大きく寄与しています。

ジスルフィド結合、またはS-S結合と呼ばれる結合は、タンパク質の中に含まれるイオウを用いた結合です。
この結合には、システインというイオウを含んだアミノ酸が深く関わっています(図1)。
システインは、タンパク質中の含有量としてはそれほど多くありませんが、タンパク質の中の他のシステインとジスルフィド結合を作ることができます(図1右)。


[図1]

このジスルフィド結合は、他の結合に比べてとても強い結合なので、タンパク質はしっかりと構造を保つことができます。

引用元
タンパク質分子の形を保つ 2007.3.29 ~ ジスルフィド結合をつくる ~
大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構

ジスルフィド結合は髪のケラチンにおいて多く存在し、その構造を安定させています。
先の①でケラチンにもっとも多く含まれているのがシスチンといいましたが、システインが「ジスフィルド結合」としてケラチン分子を固く結びつけるために多く存在していることになります。

.
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ケラチンにもっとも多く含まれる かつ ケラチンの構造を安定化させる役割を担っているシステインは健康な髪を生み出すために絶対に欠かしてはならない成分といえます。

 

美白効果 

シミはこのイラスト内にある①~④のプロセスを経て肌の表面に現れます。


※イラスト内の活性酵素は活性酸素に訂正。

この①~④において、システインはプロセスを「抑制」したり、「促進」したりすることで、シミを防ぎます
①~④の「プロセス」および「システインの関与」を説明します。

  1. 肌に活性酸素が発生する


    紫外線を浴びると活性酸素が肌の真皮層に大量に発生します。その活性酸素は皮膚の組織に入りこみ表皮にあるケラチノサイト、真皮にある繊維芽細胞を刺激します。これら細胞からは情報伝達物質が生成されます。情報伝達物質は表皮最下部にあるメラノサイトを刺激します。

    システインには抗酸化作用がある

    この作用により体内に活性酸素が過剰に発生するの防ぐの

    システインはプロセス①を抑制するってわけね!
    シミ予防の第一歩は肌に発生する活性酸素を可能な限り除去することだよね!

     

  2. メラノサイト内のチロシナーゼが活性される

    メラノサイトが刺激されるとメラノサイト内にある酵素チロシナーゼが活性されます。この酵素がメラノサイト内にあるチロシンと結合することでメラニンが生成されます。チロシナーゼが活性されると肌にたくさんメラニンが作られることになります。

    システインにはチロシナーゼの活性を抑制する作用もあるのよ

    この作用によりシミの原因となるメラニンの数を減らすことができるわ

    システインはこのプロセス②も抑制するってわけね!

     

  3. 肌のターンオーバーを促す


    通常ではあればメラニンは肌のターンオーバーとともに排出されます。肌のターンオーバーが乱れると肌の細胞に色素沈着しシミとなって肌表面に現れます。肌のターンオーバーを正常化させることがシミを防ぐことになります。

    ここではシステインは「促進」させるのよ

    システインには肌のターンオーバーを促進させる働きがあるの

    例えメラニンができても 肌のターンオーバーを促進させればシミになりにくくなるってことね!

     

  4. 肌色メラニンを増やす


    メラニンには色の濃い黒色メラニン(ユーメラニン)と、色の薄い肌色メラニン(フェオメラニン)の2種類があります。肌色メラニンはシミを作らないメラニンです。
    同じメラニンでも黒色より肌色を増やせばシミの目立たちにくい肌を作り上げることができます。

    システインは黒色メラニンを減らし肌色メラニンを増やす働きもするのよ

    あと、(ビタミンCと協働で)できてしまった黒色メラニンを還元型の淡色メラニン働きもするの~

    このプロセスも促進させるの~

    ちょっと!ちょっと!!
    ここ「促進」っていうの 無理あるよ~

.

このようにシステインは①②を抑制し、③④を促進する働きをもつため【シミを減らす・シミを薄くする】美白効果が非常に高い成分です。

そのため外用・内用問わず美白ケア商品に主成分として配合されています。

 

システインのサプリメントによくあるキャッチフレーズ集

  • 肌や髪、爪を構成するアミノ酸として欠かせない存在
  • 透明感ある美しさを目指す方に
  • いつまでも黒く美しい髪の毛を維持するため
  • お酒やたばこを好む方に、グルタチオンを助ける成分です
  • 体の代謝をサポート

 

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システインの摂取量、不足、過剰

システインの摂取量
システインの推奨摂取量は日本では設定されていません。海外ではシステインのもとであるメチオニンと合わせての摂取量が設定されています。

メチオニンの摂取量

15
/kg/日 成人
例 体重50kgの場合 約750㎎/日

2007年 WHO/FAO/UNU合同専門協議会報告では必須アミノ酸メチオニンの1日の推奨摂取量を15㎎と設定しています。この数値はシステインと合わせたもので、その内訳はメチオニン+システイン=10.4+4.1となります。

参照 必須アミノ酸 ウィキペディア

なお システイン製剤・サプリは240mg~500㎎/日を目安摂取量としているメーカーが多いです。

 
システインの不足
「システインが不足している」は「ケラチンが不足している」と言えるかもしれません。システインはケラチンに多く含まれるアミノ酸だからです。

髪・爪・肌(角質)は主にケラチンで作られています。なので抜け毛が増えたり、爪が割れやすくなったり、肌のトラブルが増えたりします。

 
システインの過剰
システインの過剰摂取が糖尿病を悪化させる可能性があることが示唆されています。糖尿病の方、糖尿病予備軍の方は摂取に注意してください。

参照
【研究発表】L-システインによる膵β細胞からのインスリン分泌攪乱機構の解明 東京大学大学院 総合文化研究科・教養学部

システインの過剰摂取は動脈硬化を悪化させるのか KAKEN

システインの豆知識

 
グルタチオン
グルタチオンはグルタミン酸・システイン・グリシンの3つのアミノ酸からなるトリペプチドです。

グルタチオンは肝臓で多く作られます。
数ある抗酸化物質のなかで特に抗酸化力が強いとされ、一部では最強の抗酸化物質とも言われています。

グルタチオンを構成する3つのアミノ酸のうちシステインの濃度がその律速段階となっています。

グルタチオンはグリシン,グルタミン酸,システインの3つのアミノ酸より構成されているが,グルタチオンの合成においてはその合成にかかわる酵素の活性のみならず,細胞内でのシステインの濃度がその律速段階となっている

引用元
CD44バリアントアイソフォームはシスチントランスポーターxCTを細胞表面に安定化することで癌細胞の抗酸化システムを制御し腫瘍形成を促進する
新着論文レビュー
ライフサイエンス統合データベースセンター

3つのアミノ酸のうち あえてどれが一番重要かを決めるとしたら、システインと言えるかもしれません。

 
白髪になる?
システインの摂取は白髪につながる説が根強くあります。実際、システインサプリのレビューには白髪が増えたという感想がよく見られます。

その理由としてシステインには数多くの美白作用があり、非常に高い美白効果を発揮する成分であることが挙げられます。
システインの有する美白作用のなかで特に黒色メラニンを減らす働きが白髪に関わるとされています。

個人的な意見としては「システインの摂取は白髪の増加とはあまり関係ない」です。

理由はシステイン摂取=白髪増加を示す因果関係の研究報告がないこと顔と髪(頭皮)の皮膚のメカニズムや役割が異なるからです。
メカニズムという表現が適しているかわかりませんが、顔と髪の皮膚では皮膚の厚さ・皮脂線の数などが違います。

出典
左:山村雄一・久木田淳、他 「現代皮膚科学大系第3巻A」p.335、1982年
右:上野賢一著「小皮膚科書」p.29、1981年

頭皮の仕組みと特徴 
HAIR CARE  花王グループより引用
  

メラニンは基本「細胞を紫外線から守るために作られる」のですが、肌のメラノサイトでできたメラニンは表皮細胞の新陳代謝(肌のターンオーバー)とともに排出されます。髪のメラノサイトできたメラニンは隣の毛母細胞に取り込まれ髪に色を着ける働きをします。

ということで、システインの摂取は白髪の増加とはあまり関係ないと思っています。
ただし「システインを摂取したら白髪が増えた」情報が数多くあがっているのは事実です。
完全に無視することができない(だから「あまり」をつけています)ので、気になるかたはビオチンを一緒に取るなどの対策をとるか、摂取量を控えるなどされるとよろしいかと思います。

 

 

システインと相性の良い栄養成分

・ビタミンC
・ビタミンB2

・ビタミンB6

 

システインのレーダーチャート解説

評価基準

6 
このカテゴリーに効果があることで有名。即効性があったり、継続して摂取することで効果を感じる

5 
このカテゴリーに効果があることで有名。継続して摂取することでなんとなく効果を感じる


このカテゴリーに効果があるといわれている。効果が得られることを期待して飲んでいる

3.5 
このカテゴリーに効果があるといわれているが、個人的に摂取目的としていない


このカテゴリーになんらかの効果があるもの


このカテゴリーとはあまり関係ないと思われる


このカテゴリーとは関係ないと思われる

※4以上が摂取目的となっているカテゴリー 

 

 

システイン 総合評価 S 17.5

 総合評価について
5つのカテゴリーのうち、評価が高い上位3つのカテゴリーを足したものです。「B~SS」でつけています。
SS  18点
S  16点以上
A+ 14点以上
A  12点以上
B+ 10点以上
B  9点以下

 髪(薄毛) 評価6 

髪の主成分はケラチンと呼ばれるたんぱく質です。髪の90%以上はケラチンでできています。

ケラチンのアミノ酸組成
※%はおおよその値です。

ケラチンに最も多く含まれているシスチンはシステイン2分子が酸化されて結合してできるアミノ酸です。
「毛包内においてシスチン(システイン)の含有量が十分かどうかが髪の毛の健康状態を左右する」といっても過言ではありません。

 肌(美白) 評価6 
システインは美白効果の高い成分として非常に有名です。
その理由は次です。

①メラニンが過剰に作られるのを防ぐ
シミのもととなるメラニンはチロシンとチロシナーゼ酵素が結合することで作られます。チロシナーゼが活性されるとメラニンがたくさん作られてしまいます。システインにはチロシナーゼの活性を抑制し、メラニンが過剰に作られるのを防ぐ働きがあります。

②メラニンを作ってもシミを作らない
メラニンには色の濃い黒色メラニン(ユーメラニン)と、色の薄い肌色メラニン(フェオメラニン)の2種類があります。肌色メラニンはシミを作らないメラニンです。
メラニンはチロシン→ドーパ→ドーパキノン→メラニン【黒色 or 肌色】という代謝過程を経て作られていきます。システインには黒色メラニン生成へ抑え、肌色メラニン生成を促す作用があります。

③シミのもととなる黒色メラニンを無色化

システインの抗酸化作用はメラニンに直接働きかけ黒色メラニンを色素を還元する(淡色化)働きをもっています。この作業は同じく抗酸化作用をもつビタミンCと協力して行われます。

肌のターンオーバーを正常化させる
肌のターンオーバーは表皮の細胞で行われています。


紫外線や加齢などの影響により表皮細胞の活動が衰えていると肌のターンオーバーが正常に行われなくなります。その結果 メラニンの排出が上手くいかずシミが増えてしまいます。
シミを防ぐには、肌のターンオーバーを正常化させることが重要となります。システインには肌のターンオーバーを正常化させる働きがあります。

⑤過脂化メラニンを防ぐ
過酸化脂質が肌に蓄積されると通常のメラニンとは異なる「過脂化メラニン」を生み出します。過脂化メラニンとは通常より濃く、より長く居座るシミを生み出すメラニンだと考えてください。

過酸化脂質は自然に排泄されることはありません。そのため分解させる必要があります。過酸化脂質の分解に働くのは体内にある抗酸化酵素グルタチオンペルオキシダーゼです。
グルタチオンペルオキシダーゼはグルタチオンの存在下、過酸化脂質を水とアルコールに分解します。
生体内のグルタミンの合成にシステインは原料として関与しています。

 

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 体型(筋肉)評価3 
筋肉痛の要因の一つは活性酸素です。
激しい運動を行うと呼吸量が増加し、大量の活性酸素が体内に発生します。活性酸素による酸化ストレスは筋肉においては損傷や炎症をもたらし筋肉疲労を引き起こす要因となります。

筋肉痛を予防するにはあらかじめ細胞内に抗酸化物質を蓄えておく(増やしておく)ことが大事となります。
細胞内の主要な抗酸化物質はグルタチオンです。

グルタチオンはグルタミン酸・システイン・グリシンの3つのアミノ酸からなるトリペプチドで、肝臓で多く作られます。
グルタチオンが体内に豊富にあると酸化ストレスより生じる筋肉疲労を防ぐことができます。

細胞内のグルタチオンの量はシステインの量によるとされています。というのもグルタチオンを構成する3つのアミノ酸のうちシステインが他のアミノ酸より細胞内濃度が低くなっている(≒律速段階となっている)からです。

 体力(普段)評価4.5 
システインはエネルギー代謝系の数々のSH酵素の賦活剤として作用します。

疲れを回復するには

体の代謝を助け、必要なエネルギーを効率よく作り出すことが大切です。そのためには、栄養素をエネルギーに変換する「酵素」の働きを助けて、エネルギーをつくるTCAサイクルをスムーズに回す、L-システインを摂取するなど内側からのケアが重要です。

引用元
肌の代謝とL-システイン
ハイチオール エスエス製薬

 その他(抗酸化)評価5.5 
システインはチオール系抗酸化物質です。自らのチーオル基を用いて(還元剤として)活性酸素種を除去します。システインは酸化させる力が一番強いヒドロキシラジカルを除去する働きをします
システインは他の抗酸化物質【=グルタチオン】の材料にもなります。

 

 

システインについて勝手に語る

 

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