わたしサクランボ (青春を)もう一回

あらかじめ言っておかなければならないことがあった。私の家系はハゲ家系である。特に父親のほうは、兄弟全員男で、全員ハゲテイル

さくらんぼ少年、狂気じみてきた

真ん中がパックリ広がり、前髪周辺が透けてきたボクの焦りはすごかった。
毎日排水溝にたまる髪の毛の本数確認、枕元にある髪の毛の死がいの収集活動
その行動はなにかに取りつかれたかのようだった。

その姿のボクは、傍から見たらまるで狂人だった。

しばらくしたある日、こんな狂気じみた行動した後に、ボクはふっと冷静になってみた。

「これは思い込みが激しいだけではないか」

「鏡で見ている姿と他人から見られる姿ってよく違うって言われるし、茶髪にすると誰でもうっすら透けるもんやないんか?黒より茶色のほうが、白に近いやん。よし友人に聞いてみよう」こう思った。

もとから自虐ネタが好きなボクにとってこの質問をすることはたいして難しいことではなかった。

友人たちに
やべー最近、髪薄くなってきちゃった。将来はげるかも

こんな質問とも独り言ともとれる会話を切り出すと

ほとんどの友人が
そんなことねえよ~」、「気にしすぎだよ」と希望していた答えを返してくれた。

「やっぱりな、こんなもんなんだよ。鏡で見ている自分は、他人が見えている『自分』とは違うんだ。以前とかわっていないんだ。真ん中のラインが太くなったって思い込んでいるだけなんだ」そう安心した。

ただ一人だけ、この「社交辞令的」なラリーが違ったやつがいた当時、親友だったやつだ。

さくらんぼ少年、ショックを受ける

えっ・・・・・

耳を疑った。彼は何をいっているんだ。ボクの耳の鼓膜というゴールが突き破れたかと勘違いする言葉をはっした。

こう言われた。

「確かに薄くなっているかも、将来はげるんじゃね。YOU、アルシンドになっちゃうよ~」

「そんなことはない」という言葉を期待していたボクに、
ストレートかつちょっと前に流行ったCMのキャッチフレーズを入れてきた親友の返しが重く脳裏に響いた。

ボクの「薄くなっていると思い込んでいるだけ」という期待は大きく裏切られた。

ボクの何かが音となって 砕け散った。

その日を境に親友とは疎遠になってしまった。
後でわかったことだが親友はボクが自虐で笑いを取るとタイプであったため、あえてそれに乗っかっただけだった。
彼からしたら、まさかボクがそこまで真剣に悩んでいたとは思いもよらなかったのだろう。

 

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さくらんぼ少年、ぶっ壊れる

この事態を収束させるにはどうすればいいのか、悩みに悩んだ。
「17だぜ、まだ17だぜ、なのになぜこんな辱しめを」

狂いに狂ったボクは恐ろしい行動に走った。

「坊主頭」にした。

2学期に茶髪デビューをしたその数週間後に坊主にしたのだ。
一発屋芸人と呼ばれる人でもここまで短い期間で消えることはないだろう。
平成の今風に変貌したボクは、数週間後には戦後にタイムスリップしたのだ。

野球部でもない帰宅部のもやっし子が坊主になった。

バリカンを買い、毎週末、髪の毛の長さを3㎜に揃えた。

なぜ坊主にしたかって?

答えは「ハゲ隠し」だ。髪が短くなることで、パックリわれてスカッとしていた部分が目立たなくなるのだ。
なにより短いことで抜け毛が目立たなくなり、精神的に楽になる。
短いので抜けた髪の毛たちが枕元、床、排水溝で目立たなくなり、抜け毛を数えなきゃという強迫概念がなくなる。

抜けている髪の毛は、長さが短いので、
「これ眉毛じゃね?あはは眉毛だろ、もしくはまつ毛か?この野郎!」
と自分に言い聞かせることができ、ポジティブな感覚を生み出すことが出来る。

後こんな勘違いもしていたヒゲはそれば、そるほど濃くなる髪も同じ原理で、そればそるほど濃くなると。

当時のボクはバリカンで髪を切っていたのかそっていたのか分別できないほど追い込まれていたのだ。

それから、大学生になるまでの数年間、坊主で過ごすことになった。

勝手に思い込み「人はなぜ坊主にするのか」

おそらく60%は「ハゲ隠し」、「天パー隠し」、30%は「おしゃれ」、あるいは「セットがめんどくさい」、
残りの10%は部活などで「半強制的」

社会人限定だと85%がハゲ隠し等、15%がおしゃれ等になる 

あくまでも私の思い込みである

 

さくらんぼ少年、ぼっちの傾向表れる

ボクは髪が薄くなったこともあり卑屈になっていた。親友とはそれ以来、卒業するまで話すことはなかった。

少ないながらもいた友人たちの数も減った。

彼らからしたら、2学期に入り少し垢抜けた「連れがわずか数週間後に野球部でもないのに坊主にしていることに違和感もあったのだろう。

ボクのまわりから友人が一人、また一人と減っていった。

さくらんぼの称号を取り除くなんてもってのほか、
甘酸っぱい青春、輝ける青春は木っ端みじんのちりとなり、
高校時代は二度と思い出したくない時期として脳裏に刻まれた。

 

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