脂肪酸の摂取比率

脂質

脂質とは水に溶けず、有機溶媒に溶ける性質をもつ化合物の総称のことです。
脂質は化学構造の違いにより、大きく単純脂質複合脂質誘導脂質の3つに分けられます。

  • 単純脂質
    脂肪酸と各種アルコールのエステル

    例 中性脂肪、ロウ
  • 複合脂質
    単純脂質にリン酸、糖などが結合したもの

    例 リン脂質、糖脂質、リポたんぱく質
  • 誘導脂質
    単純脂質や複合脂質の加水分解や合成で生じるもの

    例 ステロール類、脂溶性ビタミン類、脂肪酸

 

 

脂肪酸

脂肪酸は脂質の主要構成成分で、脂質の性質を決定づける重要な要素となります。

脂肪酸は炭素(C)、水素(H)、酸素(O)が鎖状につながった形をしています。

炭素と水素が鎖状につながったもの(炭化水素鎖)の端にメチル基(CH3-)、もう一方の端にはカルボキシル末端(-COOH)が結合しています。

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脂肪酸の種類

脂肪酸は炭素の数つながり方【炭化水素鎖中の二重結合(C=C)の有無、二重結合の数、二重結合の位置】により種類わけされています。

炭素の数

  • 短鎖脂肪酸
    炭素数 6個以下
  • 中鎖脂肪酸
    炭素数 8~10個
  • 長鎖脂肪酸
    炭素数 12以上

※数字は書籍やサイトによりけり

二重結合の有無

  • 飽和脂肪酸
    二重結合なし

  • 不飽和脂肪酸
    二重結合あり
二重結合の数

  • 一価不飽和脂肪酸
    二重結合が1個
  • 多価不飽和脂肪酸
    二重結合が2個以上
二重結合の位置

  • n-3系脂肪酸(ω-3脂肪酸)
    メチル基末端から数えて3個目の炭素に最初の二重結合がある

  • n-6系脂肪酸(ω-6脂肪酸)
    メチル基末端から数えて6個目の炭素に最初の二重結合がある

  • n-9系脂肪酸(ω-9脂肪酸)
    メチル基末端から数えて9個目の炭素に二重結合がある


 

飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸

脂肪酸は大別すると飽和脂肪酸不飽和脂肪酸にわけられます。


出典元
EPAとは
SPORTS EPA
日本水産(株)

飽和脂肪酸は短鎖・中鎖・長鎖脂肪酸に分類されます。

不飽和脂肪酸はすべて長鎖脂肪酸です。

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飽和脂肪酸は体内で合成できる脂肪酸です。

不飽和脂肪酸のうち一価不飽和脂肪酸は体内で合成できる脂肪酸です。
不飽和脂肪酸のうち多価不飽和脂肪酸は体内で合成できない脂肪酸です。食事などで外から取り入れる必要があるため必須脂肪酸と呼ばれます。

まとめると以下になります。

飽和脂肪酸
炭素数 4~ (短鎖・中鎖・長鎖脂肪酸)
二重結合なし

体内合成 可

代表 パルミチン酸、ステアリン酸、酪酸

 

不飽和脂肪酸
炭素数 18~ (長鎖脂肪酸のみ)
二重結合あり

二重結合の数(1→一価・2つ以上→多価)
位置(ω-3位・6位・9位)により以下3つに分類


一価不飽和脂肪酸(n-9系脂肪酸)
体内合成 可

代表 オレイン酸

 

多価不飽和脂肪酸(n-3系脂肪酸)
体内合成 不可

代表 α-リノレン酸、DHA、EPA

 

多価不飽和脂肪酸(n-6系脂肪酸)
体内合成 不可

代表 リノール酸、γ-リノレン酸

.

 

脂肪酸の働き

脂質の主な働きはエネルギー源細胞膜の材料ホルモンの原料の3つです。
これを前提として不飽和脂肪酸・不飽和脂肪酸の働き及び特徴を簡単にまとめると以下になります。

飽和脂肪酸

働き

  • エネルギー源
  • 細胞膜の材料

 

特徴

  • 常温で個体
  • 動物性の油に多い
  • 酸化しにくい
  • 取り過ぎると血液中の中性脂肪やコレストロールを増やす
不飽和脂肪酸

働き

  • エネルギー源
  • 細胞膜の材料
  • ホルモンの原料

 

特徴

  • 常温で液体
  • 植物性の油に多い
  • 酸化しやすい
  • 血液中の中性脂肪やコレストロールを低下させる
脂肪酸の種類により生理作用が異なります。なので、上記が必ずしもあてはまるわけではありません。例えば不飽和脂肪酸の一価は多価に比べると酸化しにくい脂肪酸です。

飽和脂肪酸は主にエネルギー源として、不飽和脂肪酸は主に生理活性物質およびその前駆体として「脂質」の役割を果たす といえます。

 

 

脂肪酸の摂取比率

飽和脂肪酸の過剰摂取は動脈硬化のリスクを高めます。一方で不飽和脂肪酸の適量摂取は動脈硬化の予防になります。

現代の日本人の食生活においては 【飽和脂肪酸を取り過ぎている不飽和脂肪酸が不足しがち】な傾向があります。

なので飽和脂肪酸を減らし、不飽和脂肪酸を増やすことが大切です。

「日本人の食事摂取基準(2015年版)」は、飽和脂肪酸からの摂取エネルギーが総摂取エネルギーに占める割合の目標量を、18歳以上の男女において7%以下としています。

これに対して、農林水産省が試験的に行った飽和脂肪酸の摂取量の推定では、通常の食生活において20歳以上の日本人が摂取している飽和脂肪酸の平均的な脂肪エネルギー比率は8.2%となり、脂質だけではなく飽和脂肪酸もとりすぎの傾向にある可能性が示されています。したがって、飽和脂肪酸のとりすぎについても注意する必要があります。

引用元
脂質のとりすぎに注意
農林水産省

とはいえ、飽和脂肪酸が不足、不飽和脂肪酸が過剰でも体にとってはマイナスとなります。
摂取するバランスがとても重要です。

3大栄養素のうち脂質から摂取する比率は25%未満に抑えることを前提として

エネルギー産生栄養素バランス

「日本人の食事摂取基準(2015年版)」では、生活習慣病の発症予防とその重症化予防を目的として、一歳以上の人を対象に、新たにエネルギー産生栄養素バランスの目標量の範囲が設定されました。

栄養素 目標量の範囲(%)
たんぱく質 13~20
脂質 20~30(飽和脂肪酸は18歳以上において7%以下)
炭水化物 50~65

引用元
エネルギー産生栄養素バランスとは
栄養成分ナビゲーター
江崎グリコ(株)

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脂肪酸の理想の摂取バランスは以下です。

飽和脂肪酸:一価不飽和脂肪酸:多価不飽和脂肪酸=3:4:3


出典元
第6回脂肪酸学
一般社団法人Jミルク

多価不飽和脂肪酸のうち日本人が取りすぎている傾向があるのがn-6系多価不飽和脂肪酸です。理由としては日本人がn-6系多価不飽和脂肪酸のリノール酸をよく取るからです。
なので多価不飽和脂肪酸にも理想の摂取バランスがあります。

n-6系多価不飽和脂肪酸:n-3系多価不飽和脂肪酸=4:1

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普段の食生活において、飽和脂肪酸とn-6系多価不飽和脂肪酸の摂取を減らして、n-3系多価不飽和脂肪酸の摂取を増やすことを心掛けることが大切となります。

 

 

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