PQQ(ピロロキノリンキノン)
ビタミン様物質
PQQとは
PQQはビタミン様物質
PQQはピロロキノリンキノン(Pyrroloquinoline quinone)の略です。
ビタミン様物質に分類されます。
ビタミン様物質とはビタミンと似た生理作用をもっている有機化合物のことをいいます。ビタミン同様に代謝において重要な役割を果たします。
が、ビタミンの定義から外れているためこのように呼ばれます。
ビタミンの定義とは簡単にいうと【人の生命維持に必須であるが、体内で合成することができない(できたとしても必要とする量を体内で合成することができない)ため食品から摂取しなければならない有機化合物】です。
ビタミン様物質に分類されるものは他に「コエンザイムQ10」「L-カルニチン」「α-リポ酸」などがあります。
14番目のビタミンになる可能性
現在、正式に認められているビタミンは水溶性ビタミン9種類&脂溶性ビタミン4種類 あわせて13種類あります。
PQQは14番目のビタミンになる可能性がある化合物です。
2003年に理化学研究所からそのように発表されています。
PQQ発見から発表までの経緯は以下です。
1964年
ナイアシン(ニコチンアミド)やビタミンB2(フラビン)に次ぐ酸化還元反応に関わる第3の補酵素としてバクテリアより発見。
1979年
バクテリア由来のメタノール脱水素酵素から補酵素を抽出し、その分子構造が決定。
出典元
ピロロキノリンキノン
ウィキペディア
1989年
マウス実験にて、PQQが哺乳類でも補酵素として働いている可能性が示唆される。
PQQを添加することにより症状の改善が見られる。
2003年
理化学研究所が、PQQがヒトにとって新規のビタミンになる可能性があると発表する。
AAS→AAAの酸化反応を触媒する酵素であるAAS脱水素酵素の補酵素としてPQQが働いていることが報告される。
※内容はかなりアバウトです。2003年以外の「年」に関して諸説あります。
認められれば、1948年に見つかったビタミンB12以来の「新規」のビタミンになります。
ただ、ビタミンであると確たる証拠がないため、現時点(2020年)でも結論はでていません。
ですが(ビタミンかどうかは云々)、PQQが人に とりわけ脳にとって重要な成分であると認知されるようになってきています。
アメリカでは2008年にFDA(米国食品医薬品局)より新規食品素材として認められ、
日本では2014年に、厚生労働省から食品としての使用が認められています。
PQQについて
PQQについてポイントを簡単にまとめました。
PQQ
- 水溶性のキノン化合物
- キノプロテインの補欠分子族として機能
キノプロテイン
PQQなどキノン構造を有する補欠分子族をもつ酸化還元酵素の総称です。
広義な意味でのキノプロテインとは,PQQの様なキノン部分(図1の4位と5位の様な)を有する分子を補欠分子族として持つ酵素の総称である.
引用元
ピロロキノリンキノン(PQQ)とキノプロテイン ― PQQ のビタミン説について―
J-STAGE - 微量であるが身近な食品に含まれている
PQQは発酵食品や野菜などに含まれています。食品では納豆に多く含まれています。
ただし100ng/g以上で含まれている食品はありません。納豆で~61ng/gです。なお食品ではありませんが、母乳には高濃度に含まれています。140~180ng/ml含まれていると言われています。
- 1日の目安摂取量は20㎎
PQQの有効性がみられるのは20㎎とされています。なのでサプリの目安摂取量は20㎎/日となっているのが多いです。海外・日本問わずです。
この数値を食品からとることは不可能に近いです。 - サプリの原料はPQQ二ナトリウム塩
サプリの原料は、ほぼほぼPQQ二ナトリウム塩【ピロロキノリンキノン二ナトリウム塩】です。
主な効果
- 脳機能改善
- 抗酸化作用
- ミトコンドリアをサポート
ミトコンドリア機能賦活作用
ミトコンドリア新生作用
相性の良い成分
- CoQ10
PQQの効果・効能
PQQの効果・効能 3つ厳選
- 脳機能改善
- 抗酸化作用
- ミトコンドリアをサポート
3つを詳しく
①脳機能改善
脳を活性させる&脳機能の障害を予防する食品を「ブレインフード」と呼びます。
PQQサプリは、新しいタイプのブレインフードとして人気を博しています。
PQQが脳に良い理由はたくさんありますが、ズバリこの2点だと思います。
- 神経成長因子(NGF)の数を増やす
- 強い抗酸化作用で神経細胞を活性酸素から守る
ここで前者のNGFに注目します。
培養細胞を用いた実験において、培養時に「PQQを添加した細胞」と、「添加しなかった細胞」のNGF産出量を比べたところ約40倍の差がでたとのことです。
出典元
「PQQを添加した細胞」VS「添加しなかった細胞」で比べました!
細胞でのテスト
なるほどPQQ 三菱ガス化学(株)
NGFは神経細胞の分化促進、神経細胞の生存維持、神経突起の伸長促進する作用や脳の損傷時には修復する作用などがあるたんぱく質で、認知症などさまざまな神経障害の予防や治療に有効とされています。
ただ NGFは分子量(118個のアミノ酸から構成)が大きく血液脳関門を通過できません。
なので NGFを直接投与するよりも、体内でNGFの合成を促進させる物質を投与するほうが「NGFを増やす」と考えられます。
PQQがまさにそれです。
また,最近PQQは 神経成長因子(NGF)生産に対して促進作用を示すという結果が報告された.NGFはアルツハイマー病に対する有力な予防因子として注目されているだけに,この報告は薬学的に非常に注目されている
引用元
キノノイドコファクターとキノプロテイン の化学
J-STAGE
本発明者らは、前記した見地から、NGFの産生を促進する薬剤について鋭意研究を進めたところ、ピロロキノリンキノン類および そのエステルがNGFの産生を促進する作用を示すことを見出し、この新知見に基づいて本発明を完成した。
引用元
神経成長因子産生促進剤
JPH06211660A
Google Patents
ということで、NGF産生促進作用を示すPQQは健脳に大きく貢献する成分といえます。
最近物忘れが気になる方は、一度試す価値がある成分と言えます。
②抗酸化作用
まずはじめに、活性酸素について簡単に説明します。
活性酸素とは
活性酸素とは「酸化させる力」が非常に強い酸素のことです。活性酸素はその強い力で体内に侵入したウイルスや細菌を取り除く働きがあります。なので適量ならば細胞を保護します。
しかし過剰に発生してしまうと、細胞を攻撃する(酸化させる)ようになります。
酸化した細胞は機能しなくなります。それだけでなく周りに新たな活性酸素を発生させるようになります。
脂質→過酸化物に、たんぱく質→変性させる、核酸→DNA損傷させる、酵素→失活させる といった感じに「身体」にダメージを与え、老化を促進させたり、病気の発生リスクを高めます。
活性酸素の発生要因
活性酸素は呼吸することで発生します。生体内に取り込まれた酸素の数%は【エネルギー代謝の副産物として】活性酸素に変化してしまいます。
発生要因となるのは以下です。
- ストレス
- 激しい運動
- 炎症反応
- 紫外線
- 大気汚染
- 放射線
- たばこ
- 薬剤
- 過酸化脂質が多い食品
生きている限り、活性酸素は過剰に産生されてしまうものと考えてください。
狭義の活性酸素
活性酸素は普通の酸素より反応性の高い(酸化させる力が強い)酸素です。
反応性の高い酸素種を活性酸素種(ROS)と呼び、次の4種が知られています。
◆スーパーオキシド
酸素に電子が1個加わった最も一般的な活性酸素です。ミトコンドリア や 白血球 で生成されます。
生成されたスーパーオキシドは、酵素的あるいは非酵素的に還元を受け より反応性の高い活性酸素種となります。より反応性の高い活性酸素種というのは過酸化水素・ヒドロキシラジカルのことです。
生体にあるスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)という抗酸化酵素の働きにより過酸化水素となります。
◆過酸化水素
SODによってスーパーオキシドが分解されると発生します。過酸化水素の反応性はそれほど高くなく、生体温度では安定しています。ですが、紫外線や金属(鉄イオンや銅イオン)と容易に反応して、傷害性の高いヒドロキシルラジカルを生じます。
体内では、抗酸化酵素カタラーゼおよびグルタチオンペルオキシダーゼにより安全な酸素と水に分解されます。
◆ヒドロキシラジカル
ヒドロキシラジカルは過酸化水素が上記した酵素によって十分に還元されない場合に、フェントン反応により生じます。
ヒドロキシラジカルは最も酸化力が強い活性酸素です。生体内の糖質・脂質・たんぱく質・核酸などに反応し障害を与えます。その結果、老化を促したり、遺伝子を傷つけがんを発生させたりします。活性酸素による多くの病気は、ヒドロキシルラジカルによるものと考えられます。
◆一重項酸素
紫外線によって皮下組織で大量に発生します。非常に強い酸化力を持った活性酸素です。
通常の酸素分子は基底状態で三重項酸素と呼ばれています。一重項酸素は、基底状態の三重項酸素分子がエネルギーを受け取ることで、一重項状態に励起された酸素分子のことです。一重項酸素は普通の酸素分子よりも不安定で反応しやすくなっています。
このうち
フリーラジカルはスーパーオキシド・ヒドロキシラジカル
フルーラジカルでないのは過酸化水素・一重項酸素です。
.
活性酸素は他にもありますが、狭義の活性酸素はこの4種です。
体内には過剰になった活性酸素を除去する酵素が備わっています。
が、その酵素は加齢とともに減ってしまいます。
なので食事などにより外から抗酸化物質を積極的に取り入れる必要があります。
それでは本題に移ります。
PQQにはスーパーオキシド、過酸化水素、一重項酸素、ヒドロキシラジカルを消去する抗酸化作用があります。
多くの酸化還元活性を持つ物質と同様に,PQQは抗酸化作用を示す⁶⁾.過酸化水素やヒドロキシラジカル,スーパーオキシドを消去する活性が報告されているが,逆にそれらフリーラジカルを生成する能力もある.
引用元
ピロロキノリンキノンPQQとキノプロテイン―PQQのビタミン説について―
J-STAGE
還元型PQQは一重項酸素を消去、つまり、一般的な酸素(三重項酸素)へ変えるのにそれ自身は化学的構造を何ら変えることなく反応している。つまり、触媒的に消去しており、大量に存在する必要なく、消去が可能である。
引用元
一重項酸素の消去方法
JP2012097020A
Google Patents
①脳機能改善 にてPQQの脳に良い理由として2つ挙げました。
- 神経成長因子(NGF)の数を増やす
- 強い抗酸化作用で神経細胞を活性酸素から守る
後者はこのことです。
そのままなのですが、PQQは強い抗酸化作用で神経細胞を活性酸素から守ります。
どのくらい「強い」かを示す数値は次です。
還元型PQQのラジカル消去速度は、
7.4倍 比較対象 ビタミンC
還元型PQQの一重項酸素消去速度は、
6~22倍 比較対象 水溶性の代表的な抗酸化物質たち【ビタミンC、尿酸、カテキン(エピガロカテキン及びエピカテキン)】
2~3倍 比較対象 脂溶性の代表的な抗酸化物質たち【ビタミンE(α-トコフェロール)、コエンザイムQ10】
参照
抗酸化 PQQ資料館
なるほどPQQ 三菱ガス化学(株)
.
ということで、PQQはイチ抗酸化物質としても魅力的な成分といえます。
さて、先のJ-STAGEの引用文のなかに引っかかるところがあったかもしれません。
「逆にそれらフリーラジカルを生成する能力もある」のところです。
これはプロオキシダントのことです。
プロオキシダント
プロオキシダントとは「抗酸化物質自体が、濃度や環境などによって抗酸化物質として機能せず、逆にラジカルとなり酸化を促進してしまう作用をもってしまう」ことをいいます。
PQQに限らず他の抗酸化物質にもプロオキシダント作用あります。基本、体内に取り入れた抗酸化物質の数%はプロオキシダントになると考えてください。
なので個人的にはあまり気にする必要はないと思います。
食事からだとまったく気にする必要がなく、サプリからでも目安量をしっかり守ってさえいれば、心配はいらないと思います。
長寿効果があるかも
なお(プロオキシダントとはおそらく別件ですが、)、PQQは細胞膜由来の低レベルの活性酸素ROSの産生させ、長寿を誘導させることが名古屋大学の研究により判明しています。
PQQの投与により、研究のモデル生物「線虫」の平均寿命が最大30%以上延長する ことが確認できました。
その寿命延長メカニズムを要約すると下記となります。
PQQ が細胞膜に存在する活性酸素を合成する酵素に働きかける
→低レベルの活性酸素ROSが細胞膜上で生じる
→この低レベルの活性酸素ROSが細胞内の生体防御応答に重要な遺伝子群を機能させ、生体防御を強化する
寿命が延長する
.
ヒトの培養細胞を用いた実験でも同様に活性酸素合成酵素を活性化させることが確認されています。
PQQにはヒトの寿命を延長させる可能性があるといえそうです。
細胞膜由来活性酸素による寿命延長メカニズムを世界で初めて発見
ー新規食品素材PQQがもたらす寿命延長のしくみを解明ー
プレスリリース
名古屋大学
ピロロキノリンキノン二ナトリウム塩(PQQ)の寿命延長効果を確認
ニュースリリース
三菱ガス化学(株)
③ミトコンドリアをサポート
ミトコンドリアはほとんどすべての細胞に存在する細胞内小器官です。
ミトコンドリアの主な機能はエネルギー源であるATPの産生です。
我々ヒトは、【ミトコンドリアからATPの形で供給され、このATPを分解して得られるエネルギーを使う】ことで、生命を維持するおよび身体活動を行うことができます。
ミトコンドリアは1つの細胞に50~2500個存在しています。特に高いエネルギー需要がある脳や心臓といった臓器に多く存在しています。
残念ながらミトコンドリアは活性酸素や加齢などが原因で機能が低下します&減ってしまいます。
このことが病気や老化の引き金となります。
PQQは以下2つの作用によりミトコンドリアを強力にサポートします。
ミトコンドリア機能賦活作用
ミトコンドリアの主な機能はエネルギー源であるATPの産生です。他にもいくつかあり、その1つが「活性酸素の産生」です。
ミトコンドリアはATPを生成する場所であると同時に活性酸素の発生源でもあります。
生体内で生じる活性酸素の多くはミトコンドリアの電子伝達系で発生しているとされています。
電子伝達系における電子の伝達の際に、複合体Ⅰや複合体Ⅲから漏れ出した電子によって、酸素分子が一電子還元され活性酸素の1種「スーパーオキシド」が発生するとされています。
先に説明した通り、PQQには強力な抗酸化作用があります。
その抗酸化作用はミトコンドリアがエネルギーを産生する時に発生する活性酸素からミトコンドリア(のDNA)を保護する働きをします。
出典元
ハリもうるおいも欲しい!エイジングケアにはPQQ(ピロロキノリンキノン)がおすすめ
Olive Channel
(株)DHC
活性酸素の攻撃によるダメージが軽減されたミトコンドリアは効率よくエネルギーを生み出すことができます=ミトコンドリアは活性化されます。ということで、PQQにはミトコンドリアを活性させる効果があります。
遺伝情報を担っているDNAは細胞の核内に存在します。実はミトコンドリアの中にもDNAが存在しています。これをミトコンドリアDNAといいます。ミトコンドリアDNAは、核のDNAとは異なる輪っかになったDNA【環状の二重らせんDNA】を持っています。核のDNAと比べるとミトコンドリアDNAは活性酸素の攻撃を受けやすい&修正能力が劣ります。
ミトコンドリアDNAの損傷はミトコンドリア機能低下に直結します。その結果、エネルギー不足に陥ったり、ミトンドリア病の発症につながってしまいます。
この効果は【電子伝達系で働き、同じくエネルギー産生時に発生する活性酸素からミトコンドリアを保護する】COQ10との併用によりさらにパワーアップされます。
我々は、ミトコンドリア賦活活性を示す組成物を鋭意研究した結果、ピロロキノリン誘導体がミトコンドリア賦活活性を有することを見出した。さらに還元型補酵素 Qとピロロキノリンキノン誘導体を組み合わせることにより、相乗的なミトコンドリア賦活活性が発現することを見出した。
引用元
ミトコンドリア賦活剤
WO2006025247A1
Google Patents
ミトコンドリア新生作用
PGC-1αとはPPARγをはじめとするいくつかの核内受容体と相互作用し、さまざまな標的遺伝子の転写調節を行う転写共役因子です。特にミトコンドリアを構成する分子、あるいはその機能を発揮するに関わる分子の転写制御に関与するため、ミトコンドリアの生合成と機能のマスター調節因子として知られています。
PGC-1αが発現することで起こることは
- ミトコンドリアを増加させる&ミトコンドリアの機能を増強させる
- 脂肪酸β酸化を亢進させる
- GLUT4(血液中の糖を骨格筋に取り込む糖輸送体)の発現を増加させる
- 骨格筋における分岐鎖アミノ酸の代謝を促進させる
マイオカイン「Irisin(イリシン)」を分泌することで
- 白色脂肪細胞の褐色化が促進する
※GLUT4の発現を増加させるに関しては諸説あります。ここでは増加させるで話を進めます。
です。
これらは「ミトコンドリア」および「エネルギー代謝に関わる」ことばかりです。
なので、PGC-1αの発現を増やす(または活性化させる)ことをすれば
「若々しさ」「減量」「病気予防」などを手に入れることできます。
PGC-1αは以下の条件にて発現量が増えます。
- 寒冷刺激により褐色脂肪細胞や骨格筋に発現量が増えます。
- 運動により骨格筋に発現量が増えます。
- 絶食により肝臓に発現量が増えます。
出典元
若い体を目指すなら“ミトコンドリア”を増やせ?
日経Gooday
(株)日本経済新聞社
とはいえ、実行する&それを継続するのは簡単なことではありません。
とくに高齢になると難しいといえます。
そんなときにPQQが役立ちます。
PQQには【上記の状況ににもっていかなくとも】PGC-1α活性化させる働きがあるとされているからです。
その理由として、PQQ は PGC-1α (Peroxisome Proliferator-Activated Receptor-γ Coactivator-1α)転写因子を活性化する、すなわち、カテコールアミン, グルカゴンあるいは 運動等のような多くの生理的活性化因子 と同類の CREB(cAMP Responsive Elementbinding)タンパク質のリン酸化を通して PGC-1α を誘導すると提案しだした。
引用元
PQQ の動物・植物に対する作用*―――自らの研究史として
総合情報センター
中部大学
PQQは細胞内のNAD⁺(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)の濃度を高めることでAMPKを活性化→PGC-1αを活性化といった流れを作り出すようです。
以上の結果から,PQQは細胞内NAD+濃度の上昇を介して,SIRT1及びAMPKを活性化し,PGC1α の転写活性を上昇することでミトコンドリア新生を促進する分子機構が示唆された。
引用元
日本農芸化学会平成 28 年度関西支部大会 (第 496 回講演会) 講 演 要 旨 集
Pyrroloquinoline quinone(PQQ)によるミトコンドリア新生促進
作用の分子機構解析 49/61
公益社団法人日本農芸化学会 関西支部 事務局
さて、先ほどPGC-1αの発現で起こることとして以下を挙げました。
- ミトコンドリアを増加させる&ミトコンドリアの機能を増強させる
- 脂肪酸β酸化を亢進させる
- GLUT4(血液中の糖を骨格筋に取り込む糖輸送体)の発現を増加させる
- 骨格筋における分岐鎖アミノ酸(BCAA)代謝の促進させる
マイオカイン「Irisin(イリシン)」を分泌することで
- 白色脂肪細胞の褐色化が促進する
※GLUT4の発現を増加させるに関しては諸説あります。ここでは増加させるで話を進めます。
ここで、1つだけ強調したいものがあります。一番上の
.
です。特に前者です。
長々と説明しましたが、ここでは PQQにこの働きがあることを覚えておいてください。
つまるところミトコンドリア新生作用です。
一般的にはPQQといえば脳機能改善だと思います。
個人的には ミトコンドリア新生作用です。
PQQの働き分析【見た目編】
合計 43/60点
薄毛
6.5点
「薄毛」改善 に関わるPQQの働きは主に次です。
- 発毛エネルギー
細胞のエネルギー源であるATPは発毛の際にたくさん必要となります。なのでエネルギー産生工場と呼ばれるミトコンドリアを元気にさせることが「発毛」にとって大切です。
PQQにはミトコンドリア賦活作用があります。 - 抗酸化作用
髪は毛乳頭に運ばれた栄養素をもとに毛母細胞が細胞分裂をすることで生まれてきます。
頭皮に発生した活性酸素は毛母細胞を傷つけその働きを弱めます。また皮脂を酸化させ頭皮を硬化させます。
活性酸素を除去する抗酸化物質をとることは薄毛予防の基本です。
PQQには抗酸化作用があります。 - コエンザイムQ10との相乗効果
上記したミトコンドリア賦活作用&抗酸化作用は、コエンザイムQ10も有します。
コエンザイムQ10との相乗効果により、PQQのミトコンドリア賦活作用&抗酸化作用はさらにパワーアップされると考えられます。本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、PQQ類またはその塩に育毛効果を見出し、更にCoQ10を共存させた場合、育毛効果が相乗的に高まるという予想外の注目すべき新知見を見出し、本発明を完成させるに至った。
引用元
育毛用組成物およびそれを用いた育毛方法
JP2010120904A
Google Patents育毛目的で、この2つの成分をセットでとるのは大有りです。
白髪
7点
「白髪」予防 に関わるPQQの働きは主に次です。
- 抗酸化作用
紫外線などにより生じる活性酸素は色素細胞(メラニンを作る細胞=メラノサイト)のもととなる色素幹細胞を攻撃しその機能を低下させます。
※毛母細胞に隣に色素細胞が存在しています。色素幹細胞は色素細胞から少し離れたバルジ領域(皮脂腺の下あたり)に存在しています。色素幹細胞の機能が低下すると「色素細胞減少→メラニン減少→白髪発生」というような流れを作ってしまいます。抗酸化作用を有するPQQは色素幹細胞の機能低下を防ぐと考えられます。
参照
白髪を増やさない 血流アップ&抗酸化【日経ヘルス19年2月号】
日経doors - 過酸化水素
上では活性酸素を一括りにして説明しました。中でも過酸化水素はズバリ白髪に関わる活性酸素です。
黒髪のもとメラニンはメラノサイトでアミノ酸【チロシン】に酸化酵素【チロシナーゼ】が作用することで生成されるのですが、過酸化水素はチロシナーゼを破壊する働きがあるからです。
PQQには過酸化水素を消去する力があるとされています。
美肌
8点
「美肌」作り に関わるPQQの働きは主に次です。
- 繊維芽細胞の増殖
真皮は「コラーゲン」「エラスチン」といった線維状のたんぱく質と「ヒアルロン酸」などのゼリー状の基質でできています。
コラーゲン・エラスチンが皮膚を支え、ヒアルロン酸が真皮の水分量を一定に保つ働きをしています。これら3つの成分の働きにより肌にハリ・弾力・潤いが生まれます。なお3つの成分を生み出しているのは繊維芽細胞です。
PQQは繊維芽細胞のDNA合成促進作用があるとされます。 - 抗酸化作用
肌の細胞にダメージを与えるのが紫外線などにより発生する活性酸素です。
細胞を活性酸素の攻撃から守る抗酸化物質の1つがPQQです。 - ひ薄化
ひ薄化とは加齢とともに肌が薄くなる現象のことです。肌が薄くなれば、シワが目立ちやすくなります&傷つきやすくなります。肌の老化を促進させる原因の1つとされます。PQQの塗布(外用のPQQ)はひ薄化に対する優れた抑制効果があるとされています。
参照
誰にでも起こりうる「肌粗しょう現象」とは!?
財経新聞
美白
8点
「美白」ケア に関わるPQQの働きは主に次です。
- 美白(抑制)
メラニンを大量に作らせないことが美白の前提です。メラニンは紫外線から生じる活性酸素の刺激などによりメラノサイトが活性されることで大量に作られます。
紫外線から生じる活性酸素は「一重項酸素」です。この活性酸素が、メラノサイトの活性化にしいてはシミやしわの原因となります。PQQは一重項酸素に対する消去能があります。単にあるのではなく、かなりあると考えていいと思います。
還元型PQQの一重項酸素消去速度◆水溶性の代表的な抗酸化物質たち【ビタミンC、尿酸、カテキン(エピガロカテキン及びエピカテキン)】と比較して6~22倍
◆脂溶性の代表的な抗酸化物質たち【ビタミンE(α-トコフェロール)、コエンザイムQ10】と比較して2~3倍
一重項酸素を消去する抗酸化成分といえば、アスタキサンチンやリコピンといったカロテノイド類が有名です。知名度的には劣りますが、PQQも十分活躍すると思います。
- 美白(排出)
メラニンは肌のターンオーバーとともに排出されます。メラニンが過剰に作られて、それがターンオーバーとともに排出されないと肌の細胞に色素沈着し、シミとなって肌の表面に現れます。シミを防ぐにはメラニンを過剰に作らせないことはもちろん、ターンオーバーが正常に行われることも重要です。PQQは肌のターンオーバーを促進する成分の1つです。
PQQにミトコンドリアを活性させる&細胞増殖を促進させる働きがあるからです。参照
ハリもうるおいも欲しい!エイジングケアにはPQQ(ピロロキノリンキノン)がおすすめ
Olive Channel
(株)DHC
筋肉
5.5点
「筋肉」増強 に関わるPQQの働きは主に次です。
- 筋損傷
運動誘発性の筋損傷は激しい運動後に生じます。主たる原因は激しい運動を行うことで発生する酸化ストレスです。
抗酸化作用を有するPQQは酸化ストレスを軽減させます
PQQは筋損傷からの回復に有効な成分の1つにカウントしてもいいかもしれません。
脂肪
8点
「脂肪」減少 に関わるPQQの働きは主に次です。
- PGC-1α
PGC-1αとはPPARγをはじめとするいくつかの核内受容体と相互作用し、さまざまな標的遺伝子の転写調節を行う転写共役因子です。特にミトコンドリアを構成する分子、あるいはその機能を発揮するに関わる分子の転写制御に関与するため、ミトコンドリアの生合成と機能のマスター調節因子として知られています。
PGC-1αには様々な作用があります。その中にミトコンドリアを増やし、脂質代謝を亢進させる作用やGLUT4(血糖を骨格筋に取り込む糖輸送体)を増やすことにより糖代謝を促進させる作用があります。つまるところPGC-1αが増えるとエネルギー産生が促進される=痩せるです。
PGC-1αは寒冷刺激により褐色脂肪細胞や骨格筋に発現量が増加します。
運動により骨格筋に発現量が増加します。
絶食により肝臓に発現量が増えます。PGC-1αはPGC-1αを活性化させる成分をとることでも増えます。
PQQはその成分の1つと考えられています。
PQQの働き分析【中身編】
合計 49.5/60点
身体
8.5点
「身体」の構成材料 に関わるPQQの働きは主に次です。
- ミトコンドリア新生
人間の体は60兆個(37兆個の説もあり)の細胞でできています。その細胞内は細胞小器官が存在します。そのうちの1つがミトコンドリアです。ミトコンドリアは真核細胞のエネルギー産生を担っています。ミトコンドリアは1細胞中に数百~数千個存在します。
細胞質中の40%はミトコンドリアです。
ミトコンドリアの総量は体重の10%と言われています、例えば体重50kgであれば5kgはミトコンドリアということになります。ミトコンドリアは加齢とともに減ってしまいます。PQQはミトコンドリアを増やす働きをします。
この項目で「ミトコンドリア」は違和感を感じるかもしません。
ただPQQのミトコンドリア新生作用は、どこかの項目で評価対象し、高評価すべきと考えました。
次のエネルギー項目でもよかったのですが「新生」を強調したかったのでここにしました。
エネルギー
8.5点
「エネルギー」生成 に関わるPQQの働きは主に次です。
- ミトコンドリア
エネルギー源であるATPは、ミトコンドリア内に糖質(グルコース)、脂質(脂肪酸)を取り込まれ、ミトコンドリアで酸化されることで産生されます。ゆえにミトコンドリアはエネルギー産生の中心的役割を担っているといえます。
PQQはミトコンドリア増やす&活性化させる成分です
病気
6.5点
「病気」予防 に関わるPQQの働きは主に次です。
- 心臓疾患
多くのエネルギーを必要とする臓器は脳や心臓です。
なのでそれら臓器にはミトコンドリアが多く存在しています。ミトコンドリアの機能低下や減少はそれら臓器の病気を引き起こすことになります。
ミトコンドリアの機能低下や減少を防ぐPQQは心臓疾患の予防になるといえます。 - 糖尿病
PQQには抗糖尿病作用があるとされます。糖尿病モデルのマウス実験により耐糖能が改善することが確認されています。 - 肝臓疾患
PQQには肝障害保護効果があります。肝臓疾患の予防・治療に役立つとされます。また、PQQについて近年までに細胞の増殖促進作用、抗白内障作用、肝臓疾患予防治療作用、創傷治癒作用、抗アレルギ−作用、逆転写酵素阻害作用およびグリオキサラ−ゼI阻害作用−制癌作用など多くの生理活性が明らかにされている。
引用元
ピロロキノリンキノン粉体
JP2011098911A
Google Patents - 白内障
白内障は目の水晶体という部分が何らかの原因で白く濁ってしまう病気です。何らかの原因は主に紫外線などで生じる活性酸素です。抗酸化作用を有するPQQは目に発生した活性酸素の除去に働きます。PQQには抗白内障作用があります。
体質
7点
「体質」改善 に関わるPQQの働きは主に次です。
- アンチエイジング
アンチエイジングを叶えるためには、細胞レベルから若返ることが大切です。細胞レベルから若返るとはミトコンドリアが元気になる【ミトコンドリアを活性化させる&ミトコンドリアを増やす】ことだと思います。
【ミトコンドリア機能賦活作用&ミトコンドリア新生作用】を有するPQQはミトコンドリアを元気にさせる成分です。 - 長寿
研究で、PQQの投与が線虫(研究のモデル生物)の平均寿命を最大30%以上延長させることが確認できました。
その寿命延長メカニズムを要約すると下記となります。PQQ が細胞膜に存在する活性酸素を合成する酵素に働きかける
→低レベルの活性酸素ROSが細胞膜上で生じる
→この低レベルの活性酸素ROSが細胞内の生体防御応答に重要な遺伝子群を機能させ、生体防御を強化する
寿命が延長する
.
ヒトの培養細胞を用いた実験でも同様に活性酸素合成酵素を活性化させることが確認されています。
PQQにはヒトの寿命を延長させる可能性があるといえそうです。 - 尿酸値
体内で生成されたプリン体および食品からのプリン体は体内で尿酸へ変換され、その後排泄されます。ただしプリン体が過剰になり尿酸が血液中に増えすぎると、排泄しきれずに高尿酸血症になってしまいます。高尿酸血症が長期間続くと尿酸が結晶化し「痛風」を引き起こします。つまるところ「尿酸値が高いと痛風になりやすい」です。
PQQには尿酸値の改善効果があるようです。すでにさまざまなヒト試験の結果によって示されている効果だけでも、「脂質」や「尿酸値」の改善、女性や高齢者を中心に多くの方を悩ませている「肌乾燥」の防止など、PQQがもたらす機能は脳だけでなく多岐にわたります。
引用元
その他の効果
PQQの効果
なるほどPQQ 三菱ガス化学(株) - フレイル・サルコペニア
サルコペニアとは筋肉が急激に減少している状態のことをいいます。それにより肥満になったり、転倒や骨折のリスクが高まります。
フレイルとは、肉体や精神、食生活や栄養、社会や環境に関して「脆弱」な状態を示す概念のことです。簡単にいうと「加齢により心身が老い衰えた状態」のことです。
75歳以上の後期高齢者における要介護の原因の1位はフレイルです。違いが分かりにくいかもしれませんが、フレイルの原因の一つにサルコペニアがあると考えてください。
サルコペニアの要因はさまざまです。その中にミトコンドリア機能低下や酸化ストレスやインスリン抵抗性があります。
これらを予防・改善するPQQは高齢者のQOL(生活の質)を高める成分と言えるかもしれません。 - 睡眠
PQQ摂取のヒト試験で、睡眠の質や気分が改善されたとの報告がなされています。
精力
9点
「精力」増進&「性機能」向上 に関わるPQQの働きは主に次です。
- 女性不妊症
妊娠を望む健康な男女が、ある一定期間、避妊することなく通常の性交を継続的に行っているにもかかわらず、妊娠しない場合が不妊症です。女性不妊の原因の一つは卵子のミトコンドリアの機能低下です。
卵子には多くのミトコンドリアが存在しています。このミトコンドリアの機能低下が卵子の老化に、しいては不妊につながるとされています。PQQにはミトコンドリアを新生させる&活性させる働きがあります。
- 男性不妊症
高い抗酸化作用をもつPQQには精子を酸化ストレスから保護する働きあります。
マウス実験によりPQQに数々の効果(受精能や精子形成異常の改善)が確認されています。PQQの摂取により精子の運動率の向上が期待できます。男性不妊症に貢献する成分の1つです。
参照
PROFA(プルーファ)
クリニック限定サプリメント
ロート製薬(株)
健脳
10点
「脳」の健康 に関わるPQQの働きは主に次です。
- 脳機能改善効果
PQQは脳に良い成分です。
理由はたくさんありますが、個人的に注目しているのは次の2点です。- 神経成長因子(NGF)の数を増やす
- 強い抗酸化作用で神経細胞を活性酸素から守る
※ミトコンドリア増やす&活性させる作用なども脳にプラスです。
実際、実験(試験)により脳機能改善効果があることが証明されています。
例えば、PQQを20mg/日を12週間摂取するグループと摂取しないグループにわけて、短期記憶テストを行ったところ摂取したグループに記憶力の改善がみられています。
出典元
「PQQを摂取した人」VS「摂取しなかった人」で比べました!
証明!PQQ
なるほどPQQ 三菱ガス化学(株)その他の数々のヒトおよび動物実験(試験)でも、脳の機能を向上させることが証明されています。
PQQのサプリメント紹介
コエンザイムQ10とセットになっているサプリメントを紹介します。
PQQのまとめ
分析【見た目編】43点
分析【中身編】49.5点
PQQ ミトコンドリア新生作用 参照一覧
なるほどPQQ 三菱ガス化学(株)
PQQビタミン説へのアプローチ J-STAGE
ピロロキノリンキノンPQQとキノプロテイン―PQQのビタミン説について― J-STAGE
(5) ピロロキノリンキノン(PQQ)の生理学的重要性(バイオファクター研究のブレークスルー : 「PQQ」) J-STAGE
新規補酵素PQQ の化学的機能 J-STAGE
PQQ(ピロロキノリンキノン)(ビタミン類縁化合物に関する最近の研究) J-STAGE
マウス骨芽細胞MC3T3-E1の石灰化能に与えるPQQの影響 J-STAGE
神経栄養因子の基礎研究とその医学的応用 J-STAGE
PGC-1αによる骨格筋ミトコンドリアの制御 J-STAGE
超高齢社会における サルコペニアとフレイル J-STAGE
COQ(ユビキノン)とPQQ(ピロロキノリンキノン) ~ビタミン様物質あるいはビタミンとして注目される2種のキノン化合物 ~ JFRL ニュース No.36 一般財団法人 日本食品分析センター
PQQ、脳機能改善など高齢化社会にニーズ ~食品開発展2016セミナー 日本食品機能研究会(JAFRA)
ビタミン・バイオファクターと栄養 日本微量栄養素学会
ストレス低減食品 公表特許公報(A) 国立研究開発法人科学技術振興機構
食品に含まれるピロロキノリンキノン誘導体の検索と定量に関する研究 KAKEN:科学研究費助成事業データベース(国立情報学研究所)
PQQ の体内動態と脂質代謝に及ぼす影響
KAKEN:科学研究費助成事業データベース(国立情報学研究所)
PQQ の動物・植物に対する作用*―――自らの研究史として 総合情報センター 中部大学
三菱ガス化学が提案「アンチエイジングの本質」スポーツにも有効 健康産業流通新聞
外用組成物 JP2015063486A Google Patents