メチオニン
たんぱく質を構成する20種類のアミノ酸の1種
9種類ある必須アミノ酸の1種
含硫アミノ酸の1種
糖原性アミノ酸の1種
メチオニンとは
メチオニンについて
-
たんぱく質は筋肉、臓器、皮膚、骨、髪、血液などの主成分となっています。これら人間の体を構成するたんぱく質は主に20種類のアミノ酸が数十~数百個以上結合し複雑に組み合わさることで作られます。
-
たんぱく質を構成する20種類のアミノ酸は9種類の必須アミノ酸(体内で合成できないもの)と11種類の非必須アミノ酸(体内で合成できるもの)に分けられています。メチオニンは必須アミノ酸に分類されます。
- メチオニンは側鎖に硫黄を含んだ含硫アミノ酸です。
- メチオニンは体内でリサイクルされます、あるいはシステインに代謝されます。その代謝過程を簡単にまとめると下記となります。
メチオニン代謝
出典元
メチオニンの代謝はヒトのES細胞およびiPS細胞の未分化な状態の維持および分化を制御している
新着論文レビュー
ライフサイエンス統合データベースセンター次の①~⑤はイラストのピンク矢印の流れです。
①【メチオニンを起点に→】メチオニンとATP由来のアデノシンを基質としS-アデノシルメチオニン合成酵素の働きによりSAMe(S-アデノシルメチオニン)が生成されます。
②【SAMeを起点に↓】SAMeがメチル基転移反応酵素の働きによりSAH(S-アデノシルホモシステイン)になります。
③【SAHを起点に←】SAHはホモシステインに加水分解されます。
④ホモステインは再メチル化経路【ホモシステインを起点に↑】か硫黄転移経路【ホモシステインを起点に↓】に入ります。
⑤ホモシステインは再メチル化経路↑ではメチオニンに再生され、硫黄転移経路↓ではシステインに代謝されます。
- メチオニンは肝臓や脳の健康に大きく貢献するアミノ酸です。
摂取量について
10.4㎎/kg/日 成人
例 体重50kgの場合 約520㎎/日
15㎎/kg/日 成人
例 体重50kgの場合 約750㎎/日
参照 必須アミノ酸 ウィキペディア
メチオニンの効果・効能
メチオニンの効果・効能 5つ厳選
- たんぱく質の合成(合成開始の役割)
- 肝機能向上
- 脳機能維持
- アレルギー症状緩和
- 抗酸化作用(by セレンの運搬役など)
そのうち3つを詳しく
①たんぱく質の合成(合成開始の役割)
DNAのもつ遺伝情報【塩基配列】がRNAに写し取られ、その遺伝情報【塩基配列】をもとにして体に必要なたんぱく質が作られます。
このように遺伝情報をもとに特定のたんぱく質が作られることを「遺伝子の発現」といい、遺伝情報の流れ(DNA→RNA→たんぱく質)を「セントラルドグマ」といいます。
セントラルドグマ
DNA【塩基配列】→(転写)→RNA【塩基配列】→(翻訳)→たんぱく質
DNAの塩基配列をRNAにコピーすることを転写といいます。
RNAの塩基配列をもとにアミノ酸を配列したんぱく質をつくる過程を翻訳といいます。
RNAにはmRNA(メッセンジャーRNA)、tRNA(トランスファーRNA)、rRNA(リボソームRNA)の3種類があり「たんぱく質の合成」の際にそれぞれ違う働きを担います。
①DNAの塩基配列を写し取ったmRNAがリボソームに結合します。
②tRNAはmRNAの塩基配列に応じて必要なアミノ酸をリボソームまで運びます。
③リボソームでアミノ酸が順次結合されてたんぱく質が合成されます。rRNAはたんぱく質とともにリボソームを構成している成分です。
ここで塩基配列について説明します。
塩基配列
塩基配列とはDNAの分子内での4種の塩基【アデニン(A)・チミン(T)・グアニン(G)・シトシン(C)】の並び方のことです。3種の塩基を1セットとして1つのアミノ酸を指定する暗号となっています。
DNAではアデニン(A)・チミン(T)・グアニン(G)・シトシン(C)です。
DNAの情報をコピーしたRNAでは、アデニン(A)・ウラシル(U)・グアニン(G)・シトシン(C)となりチミン(T)がウラシル(U)に置き換わります。
その暗号の単位(3つのアルファベットの並び)はコドンと呼ばれます。コドンは64種類あり20種類のアミノ酸に対応するようになっています。
例
CCU プロリン
GAA グルタミン酸
UAU チロシン
20種類のアミノ酸に対してコドンが64種類あるのは同一のアミノ酸に対して複数のコドンが対応しているからです。
例
プロリン CCU CCC CCA CCG
ロイシン UUA UUG CUU CUC CUA CUG
対応するコドンが1種類しかないアミノ酸があり、それはAUG→メチオニンとUGG→トリプトファンです。
標準遺伝暗号表
非極性アミノ酸は緑色、極性アミノ酸は黄土色、酸性アミノ酸は赤色、塩基性アミノ酸は青色で示している。
メチオニンは非極性アミノ酸だが、AUGコドンがタンパク質合成開始のために重要な役割を果たす「開始コドン」を兼ねているため、色を代えて示している。引用元
遺伝暗号は進化する
学科紹介 生命科学部
東京薬科大学
なお64種類のうち3種類のコドンUAA UAG UGAはどのアミノ酸にも対応していません。この3種類のコドンは終止コドンと呼ばれ、これらが出現したときはたんぱく質合成の終了(翻訳の停止)を意味します。
通常の翻訳はメチオニンに対応するAUGから開始されます。
そのためAUGは開始コドンと呼ばれています。
翻訳の仕組み
翻訳は 開始コドン【AUG】を起点としスタートしその後、3つの塩基を1セット=コドンとして1つのアミノ酸を指定していきます。終止コドン【UAA・UAG・UGA】まで来るとその前で終了します。
UUUUAUGGAAUG UUA UGU UGU CAU UGG UAGUUUUAU
※AUG(メチオニン)は開始コドンの場合と通常のメチオニンの場合があります。開始コドンはたんぱく質合成開始後に除去されます(多くの場合)。
.
ようはすべてのたんぱく質の合成はメチオニンから始まるです。
全てのタンパク質合成はメチオニンから始まるが、8割以上のタンパク質から翻訳中にメチオニンが除去される。
引用元
第1301回 リボソームから伸びるRNA触手の役割
広報・セミナー
京都大学 ウイルス・再生医科学研究所
まず、30S サブユニット(青)と「開始tRNA」と呼ばれるMet-tRNA(黄)の複合体がmRNA(赤いひも)に結合します。mRNAにコードされた開始コドン(AUG)をMet-tRNAが認識すると、リボソームの50Sサブユニットが結合し、タンパク質の合成(翻訳)が始まります。
引用元
Stage1 翻訳開始
マルチメディア資料館
国立遺伝学研究所
たんぱく質の合成において9種類ある必須アミノ酸のうちどれか一つでも不足すると「合成」に支障をきたします。なので9種類すべてが重要です。
ただ、開始アミノ酸としての役割を果たしているメチオニンは必須アミノ酸の中で「特に」重要と言ってもいいかもしれません。
②肝機能の向上
メチオニンは肝機能を向上させるアミノ酸です。
その主たる理由は下記3つです。
①アルコールの代謝促進作用
肝臓でアルコールはADH(アルコール脱水素酵素)やMEOS(ミクロゾーム・エタノール酸化系)によって、二日酔いの原因となる物質アセトアルデヒドに分解されます。
続いてアセトアルデヒドは、ALDH(アルデヒド脱水素酵素)によって分解されて酢酸になります。
その酢酸は最終的に水と二酸化炭素に分解され、尿、汗などなって体外に排泄されます。
出典元
アルコール代謝のしくみ
お酒と健康の関係
アサヒグループ
メチオニンにはアルコールの代謝促進作用があります。
②抗脂肪肝作用
脂肪肝とは肝臓の病気の一つで肝臓に脂肪が異常に蓄積されている状態のことをいいます。メチオニンは脂肪の代謝を促進し肝臓に脂肪が蓄積するのを防ぎます。
また脂肪を乳化する働きもあります。この働きにより肝臓でできた脂肪を血中に運びやすくします。
③SAMeの原料
SAMe(S-アデノシルメチオニン)は体内でメチオニンとATPから生成される物質です。肝臓や脳に多く存在し、肝機や脳の健康維持に大きく貢献します。
SAMeが肝機能を向上させるのはSAMeに【強力な抗酸化作用・肝臓の解毒作用を有するグルタチオン】および【胆汁酸の分泌を促し肝臓の働きを助けるタウリン】といった肝臓に良い物質の合成を促進させる働きがあるからです。
※SAMeの働きが上記①②の作用(の一部)に関わっています。
⑤抗酸化作用(by セレンの運搬役など)
◆セレンの運搬役
ミネラルのセレンは体内にある抗酸化酵素グルタチオンペルオキシダーゼの構成成分です。なのでグルタチオンペルオキシダーゼを活性させるにはセレンを摂取する必要があります。
セレンは生体内ではそのほどんどがたんぱく質と結合した形態(セレノプロテイン)で存在しています。
セレンはシステインの硫黄原子がセレンに置き換わったセレノシステインとしてたんぱく質の中に存在しています。セレノシステインを含んだたんぱく質をセレノプロテインと呼びます。セレノプロテインは25種類あります。
有機セレン化合物 セレノメチオニン セレノシステイン
無機セレン化合物 セレン酸 亜セレン酸 など
無機セレン化合物は動物実験などに使われます。食品中に含まれていることはほとんどありません。
セレンの供給源となるのは食品(有機セレン化合物)です。
食品中のセレンの多くはたんぱく質と結合しており主に動物性食品がセレノシステインの形態で、植物性食品がセレノメチオニンの形態で存在しています。
セレノシステインよりセレノメチオニンが【体内へすばやく吸収される&吸収率が高い】とされています。
なのでセレノメチオニンがセレンの主要な摂取形態といえます。
実際、セレンサプリメントの原材料の「セレン」はセレノメチオニンがほとんどです。
※セレンサプリメントの原材料欄に表記されている「セレン酵母」の主成分はセレノメチオニンです。
なお体内に取り入れたセレノメチオニンはメチオニンの代謝経路のシスタチ二オン経路によりセレノシステインに代謝され、セレノプロテインの合成に利用されます。
ここで言ったかったことは「体内でメチオニンがセリンの運搬の役割を果たしている」です。
その点より、メチオニンはセリンのもつ抗酸化作用に貢献しているです。
◆システイン、グルタチオンのもと
強力な抗酸化作用を有する物質システインおよびグルタチオンは生体内ではメチオニンから生成されます。
出典元
メチオニンの代謝はヒトのES細胞およびiPS細胞の未分化な状態の維持および分化を制御している
新着論文レビュー
ライフサイエンス統合データベースセンター
※ホモシステインから↓の代謝のことです。
以上から「メチオニン」は体内の抗酸化力を高める成分といえます。
メチオニンの働き分析【見た目編】
合計 48/60点
薄毛
9.5点
「薄毛」改善 に関わるメチオニンの働きは主に次です。
- ケラチンの材料
髪の90%以上はケラチンと呼ばれるたんぱく質でできています。ケラチンは18種類のアミノ酸で構成されています。ケラチンのアミノ酸組成
※%はおおよその値です。メチオニンはケラチンを構成しているアミノ酸の1つです。円グラフの「その他」の17%に含まれており、その率は1%です。
わずか1%となるとさほど重要ではないと思われます。
が、そうではありません。この1%が満たされているかが毛髪の生育のカギを握るといっていいほどメチオニンは重要な存在です。メチオニンはいわば「アミノ酸の行列のリーダー」といえます。このリーダーの後に、さまざまなアミノ酸がくっついて、その配列によって髪になったり、爪になったりするのです。つまり「リーダー」がいないと、せっかく他のアミノ酸が足りている状態でも、効率よく髪などの組織になりづらい、というわけです。
引用元
髪と「食事」の密な関係
健康の雑学
元気通信 養命酒製造(株)メチオニンの不足が薄毛・抜け毛の原因になるはとても有名な話です。
- システインの生成
さてもう一度髪のケラチンのアミノ酸組成をご覧ください。
ケラチンのアミノ酸組成一番多く含まれているアミノ酸はシスチンで約17%を占めています。シスチンはケラチン繊維を結びつける役割をしており、シスチンの含有量が十分か否かが髪の健康を左右するといわれるほど髪にとって重要です。
※%はおおよその値です。
シスチンはシステインが2分子結合したアミノ酸です。システインは体内ではメチオニンから作られます。上記①でケラチンのアミノ酸組成において1%しか含まれていないメチオニンを「重要な存在」としたのはこの点も多いに関係しています。
つまり「髪のケラチンにもっとも多く含まれているシスチン(システイン)をメチオニンが体内で作り出している」からメチオニンが髪にとって重要ということです。 - ポリアミンの合成
ポリアミンは毛乳頭細胞の増殖を促進させることで、毛包内にIGF-1やFGF-7などの細胞増殖因子を増やし「ヘアサイクルの成長期の維持・延長」に働きかけます。体内には20種類以上のポリアミンが存在しています。代表的なポリアミンはプトレスシン・スペルミジン・スペルミンです。メチオニンの代謝物SAMeはポリアミンの生合成に必要です。
図 2. ポリアミンの合成経路出典元
オリザポリアミン
製品案内 オリザ油化(株)
白髪
7.5点
「白髪」予防 に関わるメチオニンの働きは主に次です。
- 過酸化水素の除去に関与
黒髪のもとメラニンはメラノサイトでアミノ酸チロシンにチロシナーゼと呼ばれる酸化酵素が作用する(チロシナーゼが酸化させる)ことで生まれます。
なのでチロシンが不足する 、あるいはチロシナーゼの働きが衰えると【メラニンが作られなくなり】白髪が多くなります。「チロシナーゼの働きが衰える」に活性酸素の一種「過酸化水素」が関与しています。というのも過酸化水素にはチロシナーゼの形成を破壊する働きがあるからです。
毛包内で過酸化水素が蓄積することが白髪を引き起こす大きな原因となっています。体内には過酸化水素を除去する抗酸化酵素が存在します。それはカタラーゼおよびグルタチオンペルオキシダーゼです。これら酵素を活性させることが白髪予防になります。
メチオニンはこのうちグルタチオンぺルオキシターゼの活性に間接的に関わっています。
理由は以下です。
◆セレンの運搬役
セレンは体内にある抗酸化酵素グルタチオンペルオキシダーゼの構成成分です。なのでグルタチオンペルオキシダーゼを活性させるにはセレンを摂取する必要があります。
食品中のセレンの多くはたんぱく質と結合した形【セレノシステイン or セレノメチオニン】です。このうちセレノメチオニンのほうがセレンを効率的に吸収できます。セレノメチオニンはセレンとメチオニンが結合した(メチオニンの硫黄原子がセレンに置き換わった)アミノ酸です。◆グルタチオンの生成に関与
グルタチオンペルオキシダーゼはグルタチオンを電子供与体として過酸化水素を水と酸素に分解します。グルタチオンは体内でメチオニンから生成されます。※メチオニン代謝(硫黄転移経路)
メチオニン→SAMe→SAH→ホモシステイン→(硫黄転移経路)→シスタチオン→システイン→グルタチオン
美肌
7点
「美肌」作り に関わるメチオニンの働きは主に次です。
- システイン
システインは生体内ではメチオニンから生成されます。システインは肌のターンオーバーを正常化させる働きや抗酸化作用があります。肌の美しさを保つ成分です。 - グルタチオン
グルタチオンは3つのアミノ酸がペプチド結合した「トリペプチド」と呼ばれる化合物です。グルタチオンはシステイン・グルタミン酸・グリシンをもとに体内で生合成されます。強力な抗酸化作用や解毒作用を有しており美肌作りに大きく貢献する成分です。システインのもととなるメチオニンはグルタチオンの生成にも関与しています。 - ポリアミン
ポリアミンは細胞内の核酸(特にRNA)と相互作用することで核酸の合成やたんぱく質の合成を促進します。細胞の増殖や分化に深く関わっている物質です。
肌においては繊維芽細胞の分裂を促進させたり、表皮細胞の生まれ変わりをサポートすることで「美肌」づくりに貢献しています。
SAMeはポリアミンの生成に関与する成分です。SAMeはメチオニンの代謝産物です。
美白
7.5点
「美白」ケア に関わるメチオニンの働きは主に次です。
- システイン
システインは美白効果の高い成分として非常に有名です。
その理由は主に次です。
①メラニンが過剰に作られるのを防ぐ
シミのもととなるメラニンはチロシンとチロシナーゼ酵素が結合することで作られます。チロシナーゼが活性されるとメラニンがたくさん作られてしまいます。システインにはチロシナーゼの活性を抑制し、メラニンが過剰に作られるのを防ぐ働きがあります。②メラニンを作ってもシミを作らない
メラニンには色の濃い黒色メラニン(ユーメラニン)と、色の薄い肌色メラニン(フェオメラニン)の2種類があります。肌色メラニンはシミを作らないメラニンです。
メラニンはチロシン→ドーパ→ドーパキノン→メラニン【黒色 or 肌色】という代謝過程を経て作られていきます。システインには黒色メラニン生成へ抑え、肌色メラニン生成を促す作用があります。
③シミのもととなる黒色メラニンを無色化
システインの抗酸化作用はメラニンに直接働きかけ黒色メラニンを色素を還元する(淡色化)働きをもっています。この作業は同じく抗酸化作用をもつビタミンCと協力して行われます。④肌のターンオーバーを正常化させる
肌のターンオーバーは表皮の細胞で行われています。
紫外線や加齢などの影響により表皮細胞の活動が衰えていると肌のターンオーバーが正常に行われなくなります。その結果、メラニンの排出が上手くいかずシミが増えてしまいます。シミを防ぐには、肌のターンオーバーを正常化させることが重要となります。システインには肌のターンオーバーを正常化させる働きがあります。システインは生体内でメチオニンから作られます。
出典元
メチオニンの代謝はヒトのES細胞およびiPS細胞の未分化な状態の維持および分化を制御している
新着論文レビュー
ライフサイエンス統合データベースセンター - グルタチオンの生成
グルタチオンはグルタチオン酸・システイン・グリシン・3つのアミノ酸からなるトリぺプチドです。システインの生成に関わるメチオニンはグルタチオン生成にも関与しています。グルタチオンも優れた美白効果をもつ物質です。グルタチオンの美白効果のイメージとしては上記したシステインの働きがさらにパワーアップしているものと捉えてください。
筋肉
9点
「筋肉」増強 に関わるメチオニンの働きは主に次です。
- 筋肉のたんぱく質
筋肉はたんぱく質でできています。筋たんぱく質は合成と分解を24時間繰り返していて、1日を通じて合成量と分解量のバランスがとれていれば筋肉量を保つことができ、合成量が分解量を上回れば増やすことがでます。
筋肉を増量するためには合成を繰り返し行えるだけの「たんぱく質」を意識して摂取する必要があります。
筋肉を増量するために特に意識して摂取するべきは体内で作ることのできない9種類の必須アミノ酸です。メチオニンは必須アミノ酸に分類されています。リンク
メチオニンを表すコドン「AUG」は翻訳開始を指定するコドンであるため「すべてのたんぱく質の合成はメチオニンから始まる」とよく言われています。 - クレアチンの構成成分
「筋トレ」で使われる主要なエネルギー源はクレアチンです。クレアチンはアルギニン・グリシン・メチオニンから生合成されます。
クレアチンは「強度の高い運動(無酸素運動)の筋収縮時」のエネルギー源として利用されます。
クレアチンが筋肉内に満たされていれば、筋トレ時に最大筋力を発揮できるので間接的な筋肉量の増加につながります。クレアチンの生合成経路①腎臓 L-アルギニン+グリシン → グアニジノ酢酸+L-オルニチン
②肝臓 グアニジノ酢酸+S-アデノシルメチオニン → クレアチン+S-アデニル₋L-ホモシステイン
①腎臓でアルギニンとグリシンを原料に、酵素【グリシンアミジノトランスフェラーゼ】の作用によりグアニジノ酢酸とオルニチンが生成されます。
②肝臓でグアニジノ酢酸+S-アデノシルメチオニンを原料に、酵素【グアニジノ酢酸メチルトランスフェラーゼ】の作用によりクレアチンが生成されます。
S-アデノシルメチオニンはメチオニンから生成されます。
脂肪
7.5点
「脂肪」減少 に関わるメチオニンの働きは主に次です。
- 脂肪の代謝(by カルニチンの原料)
カルニチンは脂肪を燃焼させる際にとても重要な役割を果たしています。重要な役割とは脂肪をミトコンドリア内へ運搬することです。
脂肪が分解されて生じる脂肪酸はミトコンドリアのマトリックスで酸化されますが、カルニチンが不足していると脂肪酸がミトコンドリア内に入ることができなくなります。
入れなかった脂肪酸は脂肪へと逆戻りになります。そのため「脂肪を減らす」には体内にカルニチンが十分に存在することが前提となります。
生体内においてカルニチンはリジンとメチオニンを原料に肝臓で生成されます。メチオニンはカルニチンの原料として脂肪の代謝に関わっています。
体内のカルニチンの約1/4はリジンとメチオニンをもとに作られたカルニチンです。約3/4は食品からの供給です。
メチオニンの働き分析【中身編】
合計 48/60点
身体
10点
「身体」の構成材料 に関わるメチオニンの働きは主に次です。
- たんぱく質の材料
メチオニンはたんぱく質を構成する20種類のアミノ酸の1種です。そのうち体内で合成することのできない必須アミノ酸です。たんぱく質を作るには9種類ある必須アミノ酸すべてが重要です。ただ、「たんぱく質合成」について「すべてのたんぱく質の合成はメチオニンから始まる」「メチオニンが不足するとすべてのたんぱく質合成に支障をきたす」などメチオニンが言及されていることが多くなっています。
たんぱく質の合成に特に重要なアミノ酸といっても言い過ぎではないかもしれません。なおメチオニンは制限アミノ酸になりやすいアミノ酸の1つとしてあげられています。意識して摂取する必要があります。
制限アミノ酸食品中のたんぱく質のうち必要量に対して充足率の低い必須アミノ酸ことをいいます。
エネ
8.5点
「エネルギー」生成 に関わるメチオニンの働きは主に次です。
- 糖原性アミノ酸
飢餓状態の時は主に筋肉のたんぱく質が分解されてアミノ酸が作り出されます。そして分解されて生じたアミノ酸から糖を作りだし、その糖をエネルギー源として利用します。このことを糖新生といいます。
糖新生に用いられるアミノ酸を糖原性アミノ酸と言います。メチオニンは糖原性アミノ酸です。 - クレアチンの構成成分
ATP-CP系(クレアチン系)は筋肉に蓄えられているクレアチンリン酸を使ってATPを再合成するシステムです。30秒以内の瞬発的な運動時に必要とする筋肉の収縮の際に使用されます。クレアチンリン酸+ADP → クレアチン+ATP※クレアチンリン酸がクレアチンとリン酸に分解されるとエネルギーが放出されます。このエネルギーを使ってリン酸とADPからATPを再合成します。
この反応で生じたクレアチンはクレアチンキナーゼによってリン酸化されクレアチンリン酸として再利用されます、あるいは非酵素的に分解されクレアチニンになります。
クレアチンは主に腎臓・肝臓でグリシン・アルギニン・メチオニンから生成されます。
- 脂質の代謝
メチオニンはカルニチンの材料として脂質のエネルギー代謝に関わります。
病気
5.5点
「病気」予防 に関わるメチオニンの働きは主に次です。
- 肝臓の病気
脂肪肝とは肝臓に脂肪が異常に蓄積されている状態のことをいいます。具体的には肝細胞の30%以上に脂肪がたまっている状態のことをいいます。日本人の3~4人に1人が潜在的に抱えていると言われています。
脂肪肝が進むと肝炎や肝硬変に、さらに肝臓ガンにつながる危険性もあります。
脂肪肝の原因の1つはアルコールの取り過ぎです。アルコールを大量に飲むと、肝臓での中性脂肪合成が高まる→肝臓に脂肪がたまりやすい状態になる=脂肪肝になります。
メチオニンにはアルコールの代謝を促進させる働きと肝臓に脂肪が蓄積するのを防ぐ働きがあります。脂肪肝をはじめとする肝臓の病気を予防する効果が高いアミノ酸です。リンク - 動脈硬化
メチオニンには血中コレストロール値を下げる作用があります。なのでメチオニンが不足するとコレストロールが血管壁に沈着しやすくなり動脈硬化の発生・進行リスクが高まります。
- がん予防
メチオニンには抗腫瘍作用があります。ガン予防の効果も期待できます。
メチオニンには上記の真逆の働きをする場合&報告があるので注意が必要です。
①メチオニンを過剰摂取すると脂肪肝になるといわれています。
②メチオニン代謝経路内のホモシステインの代謝(メチオニンの再生およびシステインへの変換)が上手くいかない場合はホモシステインの蓄積につながります。ホモシステインの蓄積は動脈硬化の発生・進行リスクを高めます。
③メチオニンの摂取を制限することが長寿や健康(ガンの抑制などになる)につながるという研究報告があります。
体質
8点
「体質」改善 に関わるメチオニンの働きは主に次です。
- アレルギー
メチオニンはアレルギーの予防・改善の効果があります。メチオニンにはヒスタミン(体内でアレルギー反応を引き起こす化学物質)の血中濃度を下げる働きがあるからです。 - デトックス
含硫アミノ酸には有害ミネラルと結合し体外排出を促進する働きがあります。その1つメチオニンはデトックス効果のあるアミノ酸として有名です。 - 肝機能
メチオニンから生成される(メチオニン代謝から産生される)数々の物質は肝臓に良いものが多いです。その代表ともいえるのがグルタチオンとタウリンです。◆グルタチオン
グルタチオンは肝臓にある解毒酵素を活性させ肝臓の解毒力を高める成分です。
◆タウリン
タウリンは肝細胞の再生させたり、胆汁酸の分泌を促すことで肝臓の働きをサポートする成分です。メチオニンは肝機能をアップさせる効果が非常に高いアミノ酸といえます。
- むくみ
メチオニンには利尿作用があります。そのためむくみの予防・解消効果が期待できます。「メチオニンを取ればむくみ解消になる」というよりは「メチオニンが不足すると利尿作用が低下しむくみやすくなる」と考えてください。
精力
7.5点
「精力」増強&「性機能」向上 に関わるメチオニンの働きは主に次の3つです。
- カルニチン
妊活に抜群の効果を発揮する成分としてカルニチンが注目を浴びています。
事実、産婦人科やレディースクリックで不妊治療の一環としてカルニチンサプリの摂取がよく勧められています。リンク
「カルニチンが不妊に効く」のは「ミトコンドリアの活性」が関係しています。女性不妊の原因の一つは卵子の老化です。
卵子には多くのミトコンドリアが存在しています。このミトコンドリアの機能低下が卵子の老化につながるとされています。なので卵子のミトコンドリアを活性化させることができれば卵子の老化を遅らせ、その質を保つことができます。カルニチンは脂肪酸をミトコンドリア内に運ぶことでエネルギー産生を促進させる成分です。イコール「ミトコンドリアを活性させる」ことです。
この働きにより不妊に悩んでいる女性を「妊娠しやすい体質にする」のをサポートします。メチオニンはカルニチンの原料です。カルニチンは肝臓および腎臓でリジンとメチオニンを原料にして生成されます。
- ポリアミン
ポリアミンの一種スペルミンは精子の運動性に重要な役割を果たしており精子の形成に必須の成分とされています。ポリアミンの代謝【アルギニン→オルニチン→プトレスシン→スペルミジン→スペルミン】内でプトレスシン以降の代謝には脱炭酸化SAM(ⅾ-SAM)からのアミノプロピル基の供給が必要となります。
図 2. ポリアミンの合成経路出典元
オリザポリアミン
製品案内 オリザ油化(株)体内では「脱炭酸化SAM」はアデノシルメチオニン脱炭酸酵素の作用によりSAMeから作られます。SAMeはメチオニンから作られます。
- 亜鉛の吸収率UP(by キレート化)
亜鉛は性ホルモンにも深く関与しており生殖機能の維持には欠かせないミネラルといわれています。
吸収率が低いミネラルとして有名で、腸管からの吸収率は約30%とされています。キレート剤でもあるメチオニンは亜鉛の吸収を助けるアミノ酸です。海外ではメチオニンと亜鉛を結合させたスペシャルフォームの亜鉛サプリ(オプティジンク)が販売されています。
リンク
健脳
8.5点
「脳」の健康 に関わるメチオニンの働きは主に次です。
- 神経伝達物質の生成
メチオニンの代謝物SAMeは神経伝達物質の生成にメチル基供与体として働きます。
◆セロトニン
睡眠や精神の安定に深く関わる神経伝達物質です。セロトニンはトリプトファンから生成されます。この代謝にSAMeが関与しています。◆ノルアドレナリン
ストレスに対抗する際に働く神経伝達物質です。ノルアドレナリンはチロシンからドーパミンを経由して生成されます。チロシン→ドーパミンの代謝反応を促進するのがSAMeです。◆アセチルコリン
記憶、学習、認知能力に関わる神経伝達物質です。アセチルコリンの原料となるのがコリン(ホスファチジルコリン)です。体内のコリンの生合成にもSAMeは関与しています。リンク - リン脂質の合成に関与
細胞膜はたんぱく質と脂質で構成されています。脂質のうちほとんどはリン脂質で、このリン脂質が細胞内外の情報を伝達する・細胞と細胞の間の情報を伝達する役割を果たしています。メチオニンの代謝物SAMeはメチル供与体としてリン脂質(ホスファチジルコリン)の合成に関与しています。 - パーキンソン病
パーキンソン病の改善や進行遅延目的にグルタチオンが利用されています。グルタチオンは脳の細胞内にも存在し活性酸素種から脳を守る役割を果たしているからです。メチオニンの代謝経路内(硫黄転移経路)にて生成されるシステインの一部がグルタチオンに変換されます。
- 脳のエネルギー源
絶食時に糖原性アミノ酸は肝臓で行われる糖新生によりグルコースを作り出します。それにより脳の働きに必要なエネルギーを確保します。メチオニンは糖原性アミノ酸の1種です。
メチオニンのサプリメント紹介
L-メチオニンは必須アミノ酸で、つまり体により作られず食事やサプリで摂取する必要があります。L-メチオニンは細胞の強力な掃除人、グルタチオンの生成をサポートし、自然な解毒プロセスを支援します。体内でL-メチオニンは、健康的な関節をサポートする化合物、SAMe(S-アデノシルメチオニン)にも変換されます。さらに人体は消化した、L-メチオニンなどの含硫アミノ酸に、タンパク質合成と生体活性硫黄を頼っています。
引用元
Now Foods, L-メチオニン、500 mg、100粒
iHerb.com
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メチオニンのまとめ
分析【見た目編】48点
分析【中身編】48点
メチオニン 肝機能向上 参照一覧
メチオニンのさらなる働き ニッサン情報 日産合成工業(株)
メチオニン 若さの秘密 (株)わかさ生活