さてファイトケミカルシリーズのカロテノイド編も今回紹介する栄養成分でようやく終わります。今日の記事を合わせて9記事もカロテノイド編に割いてしまいました。
というかファイトケミカルシリーズもついにその18まできてしまいました。その18まできているのにファイトケミカルの6つのカテゴリー(ポリフェノール、カロテノイド、含硫化合物、糖関連物質、アミノ酸関連物質、香気成分)のうち2つしか説明し終わっていません。
やばいです・・・
と思いきや残りの4つはポリフェノールやカロテノイドと比較すると有名な栄養成分が少ないのでさらっと終わるはずです。
カロテノイドの復習
今回でカロテノイドが終了するということで、カロテノイドというものをさらっと振り返ってみたいと思います。
カロテノイドとは 野菜、果物などの植物や動物に含まれる黄色、赤色などの色素成分の総称でその種類は600種類以上あるといわれています。
少し専門的なことをいうとカロテノイドは、化学式C40H56の基本構造を持つ化合物の誘導体のことをいいます。このうち炭素と水素原子のみでできているものをカロテン類とし、それ以外(酸素原子など)のものを含んでいるのをキサントフィル類にわけています。カロテノイドのうちアルコールに溶けるほうがカロテン類で、アルコールに溶けないほうがキサントフィル類とわけることもできます。
カロテン類に含まれる有名なものは、βカロテン、αカロテン、γカロテンとリコピンです。このなかでもとりわけメジャーな存在はβカロテンとリコピンです。
βカロテン
βカロテンはプロビタミンAとして体内でビタミンAが不足した時に、必要に応じてビタミンAに変換されます。
約600種類あるカロテノイドのなかに約50種類プロビタミンAが存在していますが、そのなかでビタミンAの変換率がもっとも高いのがβカロテンです。ビタミンAとして作用(目の健康維持、粘膜の健康維持、抗酸化など)がおおいに期待できます。
またビタミンAに変換されない分はβカロテンとして、強い抗酸化作用を発揮します。
リコピン
リコピンはトマトなどに含まれている赤色の色素成分のことをいいます。リコピンの特筆すべき点は、抗酸化力が極めて高い点です。同じカロテン類で抗酸化作用が強いとされているβカロテンの2倍の効力があるといわれています。また抗酸化力をもったビタミンとして有名なビタミンEの100倍の効力をもっているといわれています。リコピンは活性酸素のなかでも特に酸化力の強い一重項酸素を除去する作用をもっています。
キサントフィル類に含まれるものとしてルテイン、ゼアキサンチン、カプサイシン、βクリプトキサンチンを紹介してきました。
ルテイン、ゼアキサンチン
ルテインとゼアキサンチンは眼球にある黄斑部というところに多く存在しています。黄斑部は眼球で最も光が集まる部分であり、物を判別したり、文字を読んだりするためのとても重要な部位です。
この2つは体内では常に一緒に存在しています(ゼアキサンチンはルテインの構造異性体です。体内の代謝によってルテインが変換されたものがゼアキサンチンです)。
ルテイン、ゼアキサンチンともに強い抗酸化力をもっていて、特に目に発生する活性酸素の除去に働きます。黄斑変性症を予防する効果があります。
黄斑に異常が起きる病気です。加齢や活性酸素によるダメージが原因とされ、視力の低下を引き起こします。
カプサイシン
カプサイシンは唐辛子の辛味成分です。カプサイシンには脂肪燃焼効果があります。アドレナリンなどのホルモンの分泌を促し、脂肪分解酵素リパーゼを活性化させ、脂肪を分解してエネルギーを生み出す働きを促進します。
βクリプトキサンチン
βクリプトキサンチンはみかんに多く含まれるだいだい色の色素成分のことをいいます。みかんのなかでも温州みかんに多く含まれています。
βクリプトキサンチンもプロビタミンAの一種で、ビタミンAの働きをします。βクリプトキサンチンの働きとしては骨粗しょう症予防、免疫力を高める働き、美肌をつくる効果などが期待できます。数あるカロテノイドの中でも長期間に渡り体内に蓄積されるという特徴があります。冬に多くのみかんを食べれば、夏にみかんを食べなくても血中のβクリプトキサンチンの濃度を高く保つことができβクリプトキサンチンの働きを継続して受けることができます。
これが今までやってきたカロテノイド類のざっとしたまとめです。
ところでハゲ茶瓶と若ハゲはどうなったのでしょうか?
2人は家(ハゲ茶瓶の)を爆破してまで警察から逃げていました・・・・
ブーブーブーブー(パトカーのサイレン)
さて今回も2人が逃げている間に何の設定もない私が授業を行います。
キサントフィル類の最後、そしてカロテノイド類の最後を飾るのはアスタキサンチンです。
※今回もただ単に説明するだけで飽きてしまうと思いますので、ところどころに少女の変顔写真を載せておきます。本文とは一切関係ないのであしからず。
アスタキサンチン
アスタキサンチンはカロテノイドの一種でキサントフィル類に分類されます。サケやイクラ、エビ、カニなどに多く含まれる赤色の天然色素です。
カロテノイドとは 野菜、果物などの植物や動物に含まれる黄色、赤色などの色素成分の総称のことといいましたが、この「動物に含まれている」カロテノイドの代表格がアスタキサンチンといえます。
ただしサケ、エビ、カニなどの動物が自らアスタキサンチンを作り出すことはできません。これらの動物の体内にアスタキサンチンが含まれている仕組みは「食物連鎖」です。
海にヘマトコッカスと呼ばれる微細藻がいるのですが、ヘマトコッカスが自らアスタキサンチンを作っています。このヘマトコッカスを動物プラクトンのオキアミなどが食べ、サケ、エビ、カニなどはこのオキアミなどを食べることで自身の体にアスタキサンチンを蓄え身体を赤色に染めています。なのでアスタキサンチンは動物に含まれているのですが、厳密にいうと植物由来のカロテノイドといえます。
※サプリメントなどに含まれているのはサケ、エビ、カニなどといった海産物から抽出したものではなく、微細藻のヘマトコッカスから取り出したものです。
アスタキサンチンといえば、抗酸化力が極めて強いことで知られています。数ある抗酸化物質の中でもその効力は群を抜いているといえます。
抗酸化力
ちょっと抗酸化と活性酸素について説明します。
抗酸化作用とは体内で過剰に発生する活性酸素から体を守る作用つまり細胞が酸化されるのを防ぐ作用のことです。
そもそも活性酸素は「酸化させる力」が非常に強い酸素のことで体内に侵入してきた菌やウィルスを取り除く役割をもっています。活性酸素がある程度あるおかげで、我々の細胞は菌やウィルスから守られています。
ただし過剰に発生してしまうと正常な細胞まで傷つけ、身体をサビさせて老化させたり、病気の原因となってしまいます。
本来、我々の体内には活性酸素を無毒化させる抗酸化酵素というのが備わっていますが、この酵素は加齢とともに減ってしまいます。
そもそも紫外線、喫煙、飲酒、過度の運動、ストレス、電磁波など活性酸素が過剰に発生してしまう環境で生活しているため、体内に備わっている抗酸化酵素だけでは無毒化させることは難しいことです。
なので体内で活性酸素の除去に働く抗酸化物質を食事などから積極的に取り入れる必要があります。
活性酸素には主に4種類あります。スーパーオキシド、過酸化水素、一重項酸素、ヒドロキシラジカルです。
このうち一重項酸素は紫外線などで生成される活性酸素で、非常に強力な酸化力をもっているものです(ちなみに4つのなかで一番強力な酸化力をもっているのはヒドロキシラジカル)。
さきほど体内に抗酸化酵素が備わっているといいましたが、体内には一重項酸素を無毒化する抗酸化酵素は備わっていないといわれています。
アスタキサンチンはこの一重項酸素に対する抗酸化力が非常に強いといわれていおり、その効力はβカロテンの5倍、コエンザイムQ10の800倍、ビタミンCの6000倍といわれています。
アスタキサンチンの強力な抗酸化力の秘密
なぜアスタキサンチンがここまで強力な抗酸化力をもっているのかというとアスタキサンチンの抗酸化作用は細胞膜全体に効力を発揮するからです。
抗酸化物質は水溶性、脂溶性にわかれており、体内ではどちらかのエリアでしかその抗酸化力を発揮することができません。
例えば脂溶性であるビタミンEは細胞膜のみに作用します。水溶性であるビタミンCは細胞膜の中に入ることはできず、細胞膜の内側、外側の液体の中で作用を発揮します。
緑のラインが細胞膜と考えてください。脂溶性の抗酸化物質はこのラインで作用します。水溶性の抗酸化物質はその内側あるいは外側で抗酸化力を発揮します。
また細胞膜でもその抗酸化物質が作用するエリアが異なっています。
これは細胞膜そのものをクローズアップした絵です。細胞膜は内側が脂溶性、外側は水溶性である二重の膜におおわれています。
細胞膜のなかでもビタミンEの抗酸化作用はこの内側のみしか作用していません。βカロテンは中心部しか作用していません。細胞膜のなかでもサンドイッチ状になっている内側(細い線状の部分)しか作用していないことになります。
いうのを忘れましたが、アスタキサンチンは脂溶性の抗酸化物質です。
アスタキサンチンは内側や中心部にも作用します。それだけなく外側(〇が連なっている部分)の膜を貫通した形で存在し、その部分にも抗酸化作用を発揮しています。なので、細胞膜全体を活性酸素から守っているということになります。アスタキサンチンの強力な抗酸化力はこのような理由からです。
このように非常に強いアスタキサンチンの抗酸化作用は動脈硬化、黄斑変性症といった病気の予防・改善から美肌・美白といったアンチエイジング対策まで幅広くその効果を発揮しています。
カロテノイドの紹介は今回で終わりです。次回からその他編として残り4つのカテゴリー(含硫化合物、糖関連物質、アミノ酸関連物質、香気成分)にあてはまる有名な栄養成分を紹介しています。
さて2人は無事に隣町の廃墟に到着することはできたのでしょうか・・・・