ビタミンB1の評価 S
ビタミンB1
水溶性のビタミン
ビタミンB1は水溶性のビタミンです。
なので、基本 体内で作ることも蓄えることもできません。
毎日食事などから頻回に分けて摂取する必要があります。
ビタミンB1は糖質の代謝に関わるビタミンです。
チアミンと3種類のリン酸エステル
ビタミンB1は天然ではチアミンと3種類のリン酸エステルとして存在しています。
- TMP
チアミンにリン酸が一つ結合したチアミン一リン酸 - TDP
チアミンにリン酸が二つ結合したチアミン二リン酸
※チアミンピロリン酸(TPP)とも言います。ここではTPPを使用します。 - TTP
チアミンにリン酸が三つ結合したチアミン三リン酸
経口摂取したビタミンB1(チアミン)はそのままの形で、3種類のリン酸エステルは消化官のホスファターゼの作用によりビタミンB1(チアミン)となり、空腸・回腸において能動輸送で吸収されます。
なお食品中のビタミンB1の大部分はTPPで、酵素たんぱく質と結合した状態で存在しています。
4つの酵素の補酵素として
ビタミンB1(チアミン)の活性型はTPPです。
ビタミンB1(チアミン)は細胞内に入るとTPPとなり、ピルビン酸脱水酵素、α-ケトグルタル酸脱水素酵素、トランスケトラーゼ、分岐α-ケト酸脱水素酵素の補酵素として働きます。
ビタミンB1の【補酵素として】働きは、この4つが重要です。
糖質の代謝に深く関わる
ビタミンB1は糖質の代謝に関わるビタミンとして有名です。
それが一目でわかるのがこちらの図です。
出典元
チアミン(ビタミン B1)欠乏による神経組織障害
J-STAGE
ビタミンB1(チアミン)は細胞内に取り込まれるとチアミンピロホスホキナーゼの働きによりTPPになります。
TPPは細胞質ではトランスケトラーゼの補酵素としてペントースリン酸回路で働きます。
ミトコンドリア内ではピルビン酸脱水酵素、α-ケトグルタル酸脱水素酵素の補酵素として解糖系やTCA回路で働きます。
解糖系の分枝路の1つです。グルコース-6-リン酸から出発し、フルクトース-6-リン酸またはグルセルアルデヒド-3-リン酸で再び解糖系に帰ってくる代謝経路です。この経路の主な役割はNADPHとリボース5-リン酸の産生です。NADPHは脂肪酸合成に必要な水素供与体に、リボース5-リン酸は核酸の合成材料に利用されます。
このようにビタミンB1は「糖質の代謝」に関わっています。
関わるの前に「深く」という言葉を付け足していいぐらいです。
それほど糖質の代謝において重要な存在で、ビタミンB1が不足すると解糖系やTCA回路が円滑に行わなくなります。イコールエネルギー不足に陥ります&太ります。
なお分岐α-ケト酸脱水素酵素の補酵素としては、分岐鎖アミノ酸の代謝に関与しています。
ビタミンB1の効果・効能
糖質の代謝に関わる
糖質が主要なエネルギーであることはよくご存知だと思います。
糖質(グルコース)は【解糖系→クエン酸回路→電子伝達系】といった代謝経路をたどり、エネルギー源となるATPへ代謝されていきます。
各径路を簡単にまとめると次になります。
【解糖系】
細胞質基質でグルコースをピルビン酸(または乳酸)に変換するプロセスです。
好気的条件下において、ピルビン酸はミトコンドリアに入りアセチルCoAに変換され、次の代謝経路「クエン酸回路」に組み込まれます。
嫌気的条件下においては、ピルビン酸は乳酸脱水素酵素により乳酸になります。
【TCA回路】
ミトコンドリアのマトリックスで進行する代謝経路です。
ミトコンドリアは外膜と内膜の二重の生体膜で構成されています。外膜はおおもとを囲っている線、内膜はくねくねした部分の線です。内膜に囲まれた内側をマトリックスといいます。
TCA(クエン酸)回路では、アセチルCoAがオキサロ酢酸と縮合反応しクエン酸となります。このサイクルが一巡する間に酸化され、二酸化炭素と水になります。
それとともNADH(及びFADH2)を産生します。
.
クエン酸(=アセチルCoA+オキサロ酢酸)→イソクエン酸→α-ケトグルタル酸→スクシニルCoA→コハク酸→フマル酸→リンゴ酸→オキサロ酢酸→
※クエン酸は上記の反応をへてオキサロ酢酸に戻ります。オキサロ酢酸は新たなアセチルCoAと反応して再びクエン酸を生じます。
生じたNADH(及びFADH2)は電子伝達系に送られます。
【電子伝達系】
電子伝達系はミトコンドリア内膜のたんぱく質複合体や補酵素間で電子(解糖系およびβ酸化・TCA回路で生じ、NADHやFADH₂で運搬してきた)のやり取りが行われる過程のことをいいます。
これにより生じるプロトン濃度勾配を利用してATPの合成が行われます。
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このうち赤太文字がビタミンB1が関与している部分です。
ビタミンB1はピルビン酸からアセチルCoAを生成する反応を触媒する酵素「ピルビン酸脱水素酵素」の補酵素として働きます。
またTCA回路のα-ケトグルタル酸→スクシニルCoAを触媒する酵素「α-ケトグルタル酸脱水素酵素」の補酵素として働きます。
なので、ビタミンB1が不足していると、糖質の代謝がスムーズに行われなくなります。
脳
ビタミンB1は脳の働きを高める栄養成分です。
糖質の代謝に含まれる話ですが、重要なのであえて別枠で説明します。ご容赦ください。
脳のエネルギー源となるのはブドウ糖(=グルコース)のみです。
糖質を絶食しているとき脂肪酸のうち一部がケトン体という物質に変わります。飢餓時および糖尿病などで脳のエネルギー源としてグルコースが利用できない場合に、このケトン体がグルコースの代わりに脳のエネルギー源となります。なのでのみではありません。
食事などから取り入れた糖質はグルコースに分解され、血流により脳に運ばれます。脳内には運ばれたグルコースと酸素が反応してATPを生成し、そのATPを脳を働かせるエネルギーとして利用します。
脳はエネルギーを大量に消費するため、それにともない糖質の代謝に関与するB1の消費量も増大します。
脳の重さは体重の約2%しかありませんが、消費するエネルギーは体全体の20%を占めています。
脳を活性化させるにはエネルギー源である糖質はもちろんのこと、その代謝に必須であるビタミンB1の摂取も重要となります。
なお、ビタミンB1は神経において補酵素以外の特異的な作用を行うとも考えられています。
特異的な作用は補酵素(TPP)としてでなくでなく、チアミン三リン酸(TTP)の働きであると考えられています。
チアミン三リン酸は、シナプス小胞において、アセチルコリンの遊離を促進し、神経伝達に関与するといわれている。
引用元
チアミン
ウィキペディア
とにもかくにも、ビタミンB1は脳や神経の働きを正常に保つために欠かすことのできない成分です。
BCAAの代謝
BCAA(分岐鎖アミノ酸)はBranched Chain Amino Acidsの頭文字のことで、必須アミノ酸のバリン、ロイシン、イソロイシンの総称のことをいいます。この3つのアミノ酸は分子が枝分かれした構造をしているので、3つまとめてBCAAと呼ばれています。
BCAAは筋たんぱく質を構成しているアミノ酸の約15~20%、必須アミノ酸の約35~40%を占めています。
BCAAは筋肉の主原料となっているだけでなく、運動時 筋肉内でエネルギー源としても利用されます。そのため「筋肉」にとって非常に重要な存在とされています。
ビタミンB1は分岐α-ケト酸脱水素酵素の補酵素としてBCAAの代謝に関与しています。
アルコールの代謝
肝臓でアルコールはADH(アルコール脱水素酵素)やMEOS(ミクロゾーム・エタノール酸化系)によって、二日酔いの原因となる物質アセトアルデヒドに分解されます。
MEOS→アセトアルデヒドの代謝にビタミンB1が必要となります。
出典元
アルコール代謝のしくみ
お酒と健康の関係
アサヒグループ
続いてアセトアルデヒドは、ALDH(アルデヒド脱水素酵素)によって分解されて酢酸になります。
その酢酸は最終的に水と二酸化炭素に分解され、尿、汗などなって体外に排泄されます。
が、アルコールを大量に飲んだ場合、ALDHだけでは分解が追いつかなくなります。
そこで違うルート【アセトアルデヒド→アセトイン】でも分解されます。その代謝でもビタミンB1が必要となります。
つまるところ、お酒をたくさん飲む方はビタミンB1の消費が激しくなります。
ビタミンB1のサプリメントにあるキャッチフーズ集
- 活力ある生活にかかせない栄養素
- 疲労を感じやすいかたにおススメ
- スポーツをよくするかたに
- 脳の働きをサポート
- たばこ、お酒をよく飲むかたに
ビタミンB1の摂取量、不足、過剰
ビタミンB1の欠乏症による有名な病気は脚気とウェルニッケ脳症です。
ビタミンB1が欠乏することで末梢神経障害と心不全をきたす病気です
ビタミンB1が欠乏することによっておこる脳障害のことをウェルニッケ脳症といいます。
ウェルニッケ脳症が発症した約8割の方は、記憶力の低下を特徴とする後遺症(コルサコフ症候群)が生じます。
現代の日本において、普通の食生活を送っている限りビタミンB1の欠乏症が起こることは稀です。
ビタミンB1の豆知識
あらゆる食品の中でビタミンB1が一番多く含まれると言われている「豚ヒレ」です。
0.98mg/100g含まれています。
ちなみに ビタミンB1の含有量が【1mg/100g(可食部)】を超える食品は存在しないとされています。
このことは 食事によるビタミンB1の過剰の心配がいらない理由の1つです。
これはにんにくに含まれるアリシンがビタミンB1の吸収率と持続力を高める=ビタミンB1の働きをパワーアップさせるからです。
アリシンは体内においてビタミンB1と結合しアリチアミンになります。それによりビタミンB1の働きを向上させ、さらなる疲労回復効果をもたらします。そして優れた滋養強壮効果をあらわします。
なのでニンニク料理を食べるとスタミナがつきます。
ビタミンB1と相性の良い栄養成分
・アリシン
タケダのアリナミンシリーズの有効成分はフルスルチアミンです。
フルスルチアミンはアリチアミン【ビタミンB1+アリシン】を安定化させたプロスルチアミンのニンニク臭を改善させた成分です。
出典元
Vol.2 フルスルチアミンの誕生
元気の雑学 アリナミン
武田コンシューマーヘルスケア(株)
コーヒーの香り成分の1つであるフルフリルメルカプタンを利用するとニンニク臭が改善されることが判明され、フルスルチアミンが完成しました。
出典元
Vol.2 フルスルチアミンの誕生
元気の雑学 アリナミン
武田コンシューマーヘルスケア(株)
ビタミンB1のレーダーチャート解説
- 6
このカテゴリーに効果があることで有名。即効性があったり、継続して摂取することで効果を感じる - 5
このカテゴリーに効果があることで有名。継続して摂取することでなんとなく効果を感じる - 4
このカテゴリーに効果があるといわれている。効果が得られることを期待して飲んでいる - 3.5
このカテゴリーに効果があるといわれているが、個人的に摂取目的としていない - 3
このカテゴリーになんらかの効果があるもの - 2
このカテゴリーとはあまり関係ないと思われる - 1
このカテゴリーとは関係ないと思われる
※4以上が摂取目的となっているカテゴリー
ビタミンB1 総合評価 S 16.5
5つのカテゴリーのうち、評価が高い上位3つのカテゴリーを足したものです。「B~SS」でつけています。
SS 18点
S 16点以上
A+ 14点以上
A 12点以上
B+ 10点以上
B 9点以下
髪(薄毛)評価3
糖化とは体内に余った糖質がたんぱく質とくっつき、たんぱく質を劣化させる現象のことをいいます。
糖化が進むと髪の健康を脅かすことになります。
髪の毛の主成分であるケラチン(たんぱく質)が糖化すると髪の毛が切れやすくなったり抜けやすくなります。
頭皮のコラーゲン(たんぱく質)が糖化すると、頭皮の弾力や柔軟性が失われ、髪が育ちにくくなります。
糖質の代謝を促すビタミンB1には抗糖化作用があります。
肌(美肌)評価4
コラーゲン繊維は架橋(コラーゲン架橋)によって分子間がつながっています。
出典元
老化を進める「糖化」から身を守る対策とは?
日経グッデイ
日本経済新聞社
糖化がすすみ、AGEsが蓄積されるとコラーゲンの分子間にAGEsによる架橋(AGEs架橋)が形成されます。
そうするとコラーゲンが破壊・変性され、コラーゲン繊維特有の強さやしなやかさが失われ、ハリ・弾力が低下してしまいます。
糖化はズバリ肌の老化の元凶です。
糖質の代謝を促進するビタミンB1は糖化を予防します。
体型(ダイエット)評価5.5
エネルギーとして消費されず余剰となった糖質は中性脂肪として蓄えられます。
「余剰」は糖質の取り過ぎが主たる原因ですが、糖質の代謝がスムーズにいかないこともあてはまります。
糖質を多く取る人にとっては、糖質の代謝を促進するビタミンB1が不足することが肥満原因の一つになります。
体力(普段)評価6
1日にとる総エネルギー量のおよそ6割は炭水化物(糖質)からです。
その他(免疫力)評価5
腸管は全身の免疫細胞の60%~70%が集まっている最大の免疫組織です。特に小腸は免疫システムの中心といえます。
小腸(回腸)にはパイエル板と呼ばれる免疫機能を司るリンパ組織があります。
出典元
予防の立役者「IgA抗体」
乳酸菌B240研究所
大塚製薬(株)
パイエル板の入り口にM細胞と呼ばれる抗原取り込み専門の細胞が存在し、病原体をパイエル板の中へ誘導しています。
パイエル板の領域には、T細胞・B細胞・マクロファージなどの免疫細胞が集まっており、病原体はこの免疫細胞たちにより処理されます。
最近の研究で、ビタミンB1はパイエル板の領域にある免疫細胞の維持に関与していることが判明しています。
代表的な例がビタミンB1だ。不足するとかっけなど神経障害を伴う疾患を起こすことが知られていたが、最近の研究から、腸の「パイエル板」という組織にある免疫細胞の維持にも深く関わっていることがわかった。ビタミンB1が減るとパイエル板は小さくなり、生体の防御機能が弱くなる。
引用元
免疫高めるビタミン B1などの関わり、仕組み判明
ヘルスUP 健康づくり
NIKKEI STYLE
ビタミンB1のサプリメント紹介
ビタミンB1の欠点(体内へ吸収率が低い&体内での滞留時間が短い)が改善された成分「アリチアミン」「ベンフォチアミン」のサプリメントを紹介します。
アリチアミン
ビタミンB1 参照一覧
ビタミンB1解説 「健康食品」の安全性・有効性情報 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所
ビタミンB1の働きと1日の摂取量 健康長寿ネット 公益財団法人長寿科学振興財団
(2)水溶性ビタミン 厚生労働省
チアミン 食品安全委員会肥料・飼料等専門調査会 食品安全委員会
ビタミンB1について JFRL ニュース Vol.5 No.30 一般財団法人 日本食品分析センター
ビタミンB1 J-STAGE
チアミン(ビタミン B1)欠乏による神経組織障害 J-STAGE
日本の健康を支えたビタミン : ビタミンB_1の発見と医薬品への応用(「たっぷりビタミン・バイオファクター学」-これから教科書にのる可能性のあること-,平成27年度 日本ビタミン学会市民公開講座) J-STAGE