CLA
多価不飽和脂肪酸の1種
リノール酸の異性体
CLAとは
CLAとはConjugated Linoleic Acidの頭文字を取った略語です。
日本語で共役リノール酸(以降 CLA)です。
CLAはリノール酸の異性体です。
リノール酸は炭素数18、二重結合2つの多価不飽和脂肪酸です。
最初の二重結合の位置はメチル基末端から数えて6番目の炭素にあるのでn-6系多価不飽和脂肪酸です。
CLAは、リノール酸の異性体で、炭素鎖中で共役二重結合を持つもの の総称をいいます。
構造式を使って説明
こちらをご覧ください。
出典元
CLAの生理機能
CLA 共役リノール酸のチカラ
日清オイリオグループ(株)
出典元の構造式を文章で説明すると以下となります。
- 左
リノール酸は炭素数18で、9位と12位にシス型の二重結合を持っています。 - 中
CLAは炭素数18で、9位にシス型、11位にトランス型の二重結合を持っています。 - 右
CLAは炭素数18で、10位にトランス型、12位にシス型の二重結合を持っています。
※位置は、【カルボキシル基を起点に】です。
.
これをもとに
CLAは、【リノール酸の①異性体で、炭素鎖中で②共役二重結合を持つもの の③総称】
を説明します。
①異性体
異性体とは同じ分子式を持ちながら、構造の異なる化合物のことを言います。これに関しては出典元 および 文章の取りまとめ でお分かりいただけると思います。
②共役二重結合
二重結合というのは炭素と炭素の間が=でつながっている状態です。
それを踏まえて、こちらの2つの構造式をご覧ください。
出典元
トランス脂肪酸
農林水産省
出典元 下:
リノール酸は二重結合の間に炭素の単結合( – )を2つ挟んでいます。
【CH=CH–CH₂–CH=CH】
通常の多価不飽和脂肪酸は、二重結合間に-CH₂-(メチレン基 )を挟んだ構造をしています。
出典元 上:
一方でCLAは、メチレン基を含まず、二重結合の間に炭素の単結合( – )が1つのみ存在します。
【CH=CH–CH=CH】
このように、炭素鎖中に2つ(あるいはそれ以上)の二重結合が単結合と交互に存在する結合【二重結合・単結合・二重結合】のことを共役二重結合といいます。
③総称
CLAは、(理論上は)28種類存在します。
CLAは、カルボキシル基から数えて、6位8位 7位9位 8位10位 9位11位 10位12位 11位13位 12位14位の位置に二重結合を有し、各々4パターン(cis・trans、trans・cis、cis・cis、trans・trans)の28(7×4)種類が存在するとされます。
CLAはカルボキシル基末端から6,8-,7,9-,8,10-,9,11-,10,12-,11, 13-,あるいは12,14-位に共役ジエン構造を有し,かつ, シス(cis)型あるいはトランス(trans)型の立体配置をとっている。CLAの各位置異性体には4種類の幾何異性体(cis,trans;trans,cis;cis,cis;trans,trans)が考えられることから,理論上は,合計28種類のCLA異性体が存在する。
引用元
共役リノール酸の食品中の含量と生理機能
J-STAGE
ということで、
CLAは、リノール酸の異性体で、炭素鎖中で共役二重結合を持つもの の総称
です。
cis型 trans型について
ここでcis(シス)型、trans(トランス)型について簡単に説明します。
農林水産省のHPにわかりやすいイラストおよび説明がありましたので、そのままお借りします。
出典元
すぐにわかるトランス脂肪酸
農林水産省
これにて説明不要だと思います。
リノール酸は9位と12位にシス型の二重結合を有します。
リノール酸をはじめとした不飽和脂肪酸のほとんどは炭素間の二重結合がシス型です。
- 定番のオリーブオイルに多く含まれるオレイン酸
リンク - 話題のアマニ油に多く含まれるα-リノレン酸
リンク - 人気の魚の油に多く含まれるEPAやDHA
.
これらは、全部シス型です。
さて、こちらはオレイン酸(シス型)・エライジン酸(オレイン酸の幾何異性体=オレイン酸のトランス型)および飽和脂肪酸のステアリン酸の立体構造です。
出典元
「油脂とは」
農研機構
立体構造の屈折の度合いが異なっているのお分かりいただけるでしょうか?
これって意味があります。
脂肪酸の不飽和結合が
- シス型の場合
脂肪酸の立体構造は、不飽和結合の位置で屈折する。 - トランス型の場合
脂肪酸全体の構造は直線的で、飽和脂肪酸に似てくる。
.
ようになります。
それを踏まえると、立体構造だけで、オレイン酸とエライジン酸が、どちらがシス型かトランス型かが、すぐにお分かりいただけると思います。
トランス脂肪酸について
せっかくなのでトランス脂肪酸についても触れたいと思います。
トランス型の不飽和結合を有する脂肪酸を、「トランス脂肪酸」といいます。
トランス脂肪酸は体に悪いといったイメージがあると思います。
実際 体に悪く、トランス脂肪酸の摂取量が多いと、血液中のLDL(悪玉)コレステロールを増やします。それだけなくHDL(善玉)コレステロールを減らします。
ということで、トランス脂肪酸の摂取は避けることが勧められています。
トランス脂肪酸が含まれているもの
トランス脂肪酸は、主に3つに由来します。
①硬化油由来
【マーガリンやファットスプレッドやショートニングなどに含まれる部分水素添加油脂】および【部分水素添加油脂を原材料に使った洋菓子、部分水素添加油脂で調理された揚げ物】にはトランス脂肪酸が含まれています。
固体または半固体の油脂製品(マーガリンなど)を製造する際に、液体の植物油などに、【その不飽和脂肪酸にある二重結合の一部に】水素を付加して固形・半固形化した油脂です。
マーガリンでいうところの「固さ調整」に使われる原料です。水素を添加することで不飽和脂肪酸の二重結合の数が減り、飽和脂肪酸の割合が増えます。それにより適度な硬さの固形油を得ることができます。また酸化しにくくなるという効果もあります。
が、製造工程でトランス脂肪酸ができることがあります。
②肉・乳製品由来
天然の不飽和脂肪酸はシス型ですが、反芻(はんすう)動物では、胃の中のバクテリアの働きによって、トランス脂肪酸が作られます。なので牛肉や羊肉、乳製品の中には、微量のトランス脂肪酸が含まれています。
③高温で処理した食用油由来
植物などから抽出された原油(粗油)は、いくつかの精製工程を経て、食用油となります。
その工程は脱ガム・脱酸・脱色・脱臭です。
うち脱臭工程(=高温下、真空下で水蒸気を吹き込む)で、トランス脂肪酸が微量ながら生成します。
なのでサラダ油などの植物油にも、ごく微量のトランス脂肪酸が含まれていることになります。
①>②>③の順でトランス脂肪酸の含有量が多くなります。
3つの中では①が圧倒的に多いです。なのでニュアンスの違いをつけました。
食品に含まれるトランス脂肪酸の量の一部を取りまとめた表はこちらです。
出典元
ファクトシート トランス脂肪酸
食品安全委員会(内閣府)
常日頃からトランス脂肪酸を意識して避けることは健康上とても大切です。ただし、過度に意識する必要はありません。
というのも、1日あたりのトランス脂肪酸の平均摂取量は日本人は0.7gとなっており、諸外国と比べて圧倒的に少ない摂取量となっています。
※出典元に記載されている食品をたくさん食べている人は要注意です。
CLAはトランス脂肪酸?
さて、話の流れから、「CLAにトランス脂肪酸が含まれているのでは?」といった疑問が生まれるかもしません。
なんせ、CLAの4パターン(cis・trans、trans・cis、cis・cis、trans・trans)のうち
3パターン(cis・trans、trans・cis、cis・cis、trans・trans)にトランス型があるからです。
そうなると、28種類あるCLAのうち、21種類(7×3)がカテゴリー上はトランス脂肪酸にあてはまるということになります。
結論からいうとCLAはトランス脂肪酸ではあるけど、トランス脂肪酸ではありません。
トランス脂肪酸は次のように定義されています。
トランス脂肪酸
少なくとも1つ以上のメチレン基で隔てられたトランス型の非共役炭素-炭素二重結合を持つ単価不飽和脂肪酸及び多価不飽和脂肪酸の全ての幾何異性体(出典:コーデックス委員会栄養表示に関するガイドライン CAC/GL2)
出典元
トランス脂肪酸
農林水産省
ようは
- 一つでもトランス型の二重結合をもつ脂肪酸がトランス脂肪酸
- 但し、共役型は除外
です。
というわけで、共役型トランス脂肪酸はトランス脂肪酸に定義にあてはまりません。
ということで、CLAは(化学的には)トランス脂肪酸ではあるけど、(体に悪さをする)トランス脂肪酸ではありません。
共役リノール酸は構造的にトランス型の二重結合を有するものも多く、天然に含まれるトランス脂肪酸であるが、体内で非共役トランス脂肪酸以外の脂肪酸と同様に振る舞うことから、アメリカ食品医薬品局ではトランス脂肪酸の規制から除外している。
出典元
共役リノール酸
ウィキペディア
CLAは9cis・11trans型と10trans・12cis型
CLAは総称のことで、28種類あると述べました。
代表的なCLAは
- 9cis・11trans型
- 10trans・12cis型
です。
市販のCLA商品は、サフラワーなどリノール酸を多く含む油をアルカリ異性化し、生成されたもので、9c,11t-CLAと10t,12c-CLAが同程度含まれます。
一般にはリノール酸を高含有する植物性油脂をアルカリ異性化することで高CLA含有油脂を得ることができる。この場合,c9,t11型に加えて,t10,c12型のCLAがおおよそ50%ずつの割合で生成する。
引用元
共役脂肪酸の機能性食品成分への応用に関する研究
J-STAGE
ということで、共役リノール酸(CLA)の栄養成分レビューは、基本
- 9c,11t-CLA
- 10t,12c-CLA
のことだと考えてください。
CLAのもつ生理作用は、主にこの2つによるものです。
- 抗肥満作用
- 抗動脈硬化作用
- 抗糖尿病作用
- 抗がん作用
- 血圧上昇抑制作用
- 免疫調節作用
※9c,11t-CLA 10t,12c-CLAで有する作用(または作用の活性度合い)が異なりますが、
ここでは一緒くたにしてCLAの作用とします。
CLAの摂取量について
人の体内ではCLAはほとんど作ることができません。なので外から補給する必要があります。
食品会社やサプリ会社によるCLAの1日の目安摂取量は1000~2000mgです。
なお、日本人がCLAの有する生理作用を得るには1日2300mgの長期摂取が必要との研究報告もあります。
以上より,日本人は1日 2 .3 g のCLAサプリメントを長期摂取することで有益な生理作用を得ることができると考えられた
引用元
日本人の共役リノール酸摂取量に関する考察
J-STAGE
実際の摂取量
日本人が1日の食事からCLAを摂取している量は約37.5mgとされています。
本研究の結果から,日本人の1日当たりのCLA摂取量は37. 5mgであった
引用元
日本人の共役リノール酸摂取量に関する考察
J-STAGE
約200mg/日という説もあります。
いずれにしても目安量(1000~2000mg)には、とうてい及ばない数値です。
サプリからの摂取がベストです。
CLAの補足 その1
CLAは反芻動物の肉や乳に含まれる成分です。
反芻(はんすう)をする動物。牛、ヤギ、ヒツジなど。
反芻とは一度飲み込んだ食べ物を再び口の中に戻して、かみなおして再び飲みこむことをいいます。
反芻動物の胃の中に存在する微生物によって、飼料中のリノール酸をもとに生成されます。
ということで、食品であれば肉や乳製品が主たる供給源となります。
ただCLAの含有量は、多いとされる牛乳ですら、わずか5.5㎎/1gです。
牛乳1gあたりではなく、牛乳に含まれている脂質1gあたりなのでごくわずかだといえます。
ということで、食品から推奨摂取量(1000~2000mg)を取るのは、ほぼ不可能といえそうです。
というわけで、サプリからの摂取がベストです。
CLAの補足 その2
ちなみに、食品からだと10t,12c-CLAがほとんど取れません。
食事中に含まれる CLA は 9c,11t-18 : 2であり,10t, 12c-18 : 2 は検出されなかった.
引用元
日本人の共役リノール酸摂取量に関する考察
J-STAGE
さきほど、次の注釈したのを覚えていますでしょうか?
【※9c,11t-CLA 10t,12c-CLAで有する作用(または作用の活性度合い)が異なりますが、ここでは一緒くたにしてCLAの作用とします。】
これがCLAの作用の一部です。
- 抗肥満作用
- 抗動脈硬化作用
- 抗糖尿病作用
- 抗がん作用
- 血圧上昇抑制作用
- 免疫調節作用
このうち、CLAの生理作用といって真っ先に挙がるのが、抗肥満作用です(だと思います)。
CLAの抗肥満作用は、主に10t,12c-CLAによるものです。
また異性体による違いとしては,異性体精製物を用いた研究などから10t,12c-CLAが抗肥満作用の活性本体であることが示されている。
引用元
共役リノール酸の新規栄養生理機能
J-STAGE
というわけで、CLAでも10t,12c-CLAでなければ抗肥満作用を(あまり)得られないということになります。
繰り返しになりますが、10t,12c-CLAって、食品にほとんど含まれていません。
なので、抗肥満作用を得るには、サプリからということになります。
そもそも、食品に含まれるCLA(ほとんど9c,11t-CLA)の量はわずかです。
なので、CLAの作用を得るには、基本 サプリからということになります。
というわけで、
【※9c,11t-CLA 10t,12c-CLAで有する作用(または作用の活性度合い)が異なりますが、ここでは一緒くたにしてCLAの作用とします。】
これはサプリでの摂取 前提です。
CLAのサプリについて
CLAのサプリには、脂肪型CLAとトリグリセライド型CLAの2タイプがあります。脂肪型と比べ、トリグリセライド型CLAは体内の吸収が早いのが特徴です。
ゴールドジムの商品はトリグリセライド型です。
CLAのサプリに、「トナリン」「トナリンCLA」と銘打った商品があります。
トナリンは天然の紅花やヒマワリの種から抽出されたCLAのことです。純度が高いトリグリセライド型CLAで、高いCLA活性を有するといわれています。
ドイツのBASF社の独占ライセンス製品です。
CLAの効果・効能
CLAの効果・効能 5つ厳選
- 抗肥満作用
- 抗動脈硬化作用
- 抗糖尿病作用
- 抗がん作用
- 血圧上昇抑制作用
そのうち1つを詳しく
①抗肥肥満作用
CLAには抗肥満作用があります。CLAの抗肥満作用には脂肪燃焼を促進する&脂肪を溜めさせないの2パターンあります。この2つを別々に説明したいと思います。
なお、こちらは脂肪燃焼のメカニズムです。
- 分解 体脂肪を脂肪酸とグリセリンに分解する
- 運搬 分解されてできた脂肪酸を細胞のミトコンドリアに運搬する
- 燃焼 ミトコンドリアで脂肪酸がエネルギー貯蔵物質ATPに変わる
ATPがエネルギーとして消費される→脂肪燃焼
説明中にたびたび「メカニズム」の言葉をはさみますが、メカニズムはこのことを指しています。
脂肪燃焼を促進する
■CLAは脂肪の分解を促進する
体脂肪を脂肪酸とグリセリンに分解する酵素が「HSL(ホルモン感受性リパーゼ)」です。この酵素を活性させることが脂肪燃焼のスタート=メカニズム①分解です。
HSLが活性されると脂肪が分解されて、脂肪酸が血中に放出され、次のメカニズム②運搬・③燃焼へと移行するといった流れになります。
HSLが活性化されるのは空腹時や運動時です。
空腹時や運動時に脂肪動員ホルモン(アドレナリン・グルカゴン・成長ホルモンなど)が分泌されると活性化されます。
なのでCLAの摂取はメカニズム①分解を促進させます。
=脂肪燃焼を促進させます。
■CLAは脂肪酸のβ酸化を亢進させる
脂肪が分解され、血中に放出された脂肪酸は骨格筋などの細胞のエネルギー源として利用されます。
ここでの【エネルギー源として利用】は【脂肪酸がATPに変換され、利用される】です。
.
です。
脂肪酸が→β酸化に進むには細胞内のエネルギー産生工場といえる場所ミトコンドリアに運ばれる必要があります。
ミトコンドリアは外膜と内膜の二重の生体膜で構成されています。外膜はおおもとを囲っている線、内膜はくねくねした部分の線です。内膜に囲まれた内側をマトリックスといいます。
ミトコンドリアに脂肪酸を運搬するのがカルニチンの役割です。
脂肪酸はカルニチンと結合することで、ミトコンドリア内に入ることができます。
これを踏まえて、先ほどの流れを補足すると次になります。
.
ここで🚚【脂肪酸+カルニチン】→【ミトコンドリア🤢】の流れを説明します。
脂肪酸はアルブミンというたんぱく質と結合し、筋肉の細胞に運ばれます。
そして細胞質に取り込まれた後、活性化され脂肪酸アシルCoAに変換されます。
脂肪酸をエネルギーに変える場所はミトコンドリアのマトリックスです。
ただし、脂肪酸は脂肪酸アシルCoAのままではミトコンドリアの内膜を通過することができません。
一時的にカルニチンと結合し脂肪酸アシルカルニチンになることでミトコンドリア内膜を通過することができます。
※脂肪酸アシルカルニチンになれなければ脂肪に逆戻りすることになります。
.
さて、脂肪酸アシルCoAから脂肪酸アシルカルニチンへ変換する反応を触媒する酵素は、ミトコンドリア外膜に存在するCPT-1です。
アシルCoAとカルニチンをアシルカルニチンに変換する酵素です。ミトコンドリアにおけるβ酸化の律速酵素となっています。
この酵素の活性が高まると脂肪酸のミトコンドリアへの輸送が促進されます。
ミトコンドリアに内部に移動した脂肪酸アシルカルニチンは、ミトコンドリア内膜の内側に存在する酵素CPT-2の働きにより、カルニチンと脂肪酸アシルCoAに分かれます。
その後、脂肪酸アシルCoAは、ミトコンドリアのマトリックスにてβ酸化を受け、アセチルCoAになり、→以降の代謝に進んでいきます。
.
→TCA回路
アセチルCoAは、TCA回路に組み込まれ、酸化されます。その過程で生じた水素を水素受容体であるNAD⁺及びFADが受け取ります【→NADH及びFADH2に】。
→電子伝達系
生じたNADH及びFADH2はミトコンドリアの電子伝達系に送られます。電子伝達系では運ばれた【NADH及びFADH2】を利用して大量のATPを生成します。
さて、ここでのポイントをもう一度いいます。
脂肪酸アシルCoAから脂肪酸アシルカルニチンへ変換する反応を触媒する酵素は外膜に存在するCPT-1です。この酵素の活性が高まると脂肪酸のミトコンドリアへの輸送が促進されます。
つまるところ、CPT-1を活性化させる成分をとると脂肪酸のミトコンドリアへの輸送が増加し、脂肪燃焼が進む ことになります。
CLAはCPT-1を活性化させる成分にあてはまります。
CLAはCPT-1の発現を増やす働きがあります。
体脂肪が減少する一因として,CLA摂取により脂肪組織および筋肉でカルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ(CPT)活性の増加が観察されている
引用元
共役リノール酸の機能と代謝
J-STAGE
以上がCLAの脂肪燃焼を促進する働きです。
つづいて脂肪を溜めさせないの説明に移ります。
脂肪を溜めさせない
簡単にまとめます。
※HSLについては■CLAは脂肪の分解を促進するで、登場済みです。復習がてらご覧ください。
リポたんぱく質リパーゼ
【存在場所】
脂肪細胞外 血管内皮細胞
【働き】
血中の中性脂肪を脂肪酸とグリセリンに分解
より詳しく言うと血中を流れているリポたんぱく質中の中性脂肪を脂肪酸とグリセリンに分解します
【結果】
生じた脂肪酸は筋肉や脂肪組織に取り込まれエネルギー源として利用される
ただし
余った脂肪酸は脂肪細胞内に取り込まれ中性脂肪に再合成されて、そのまま貯蔵される=体脂肪となる
ホルモン感受性リパーゼ
【存在場所】
脂肪細胞内
【働き】
脂肪細胞内の中性脂肪を脂肪酸とグリセリンに分解、血中へ放出
アドレナリン、ノルアドレナリンなどの脂肪動員ホルモンによって活性化されると脂肪を分解します
【結果】
生じた脂肪酸は筋肉や脂肪組織に取り込まれエネルギー源として利用される
ただし
利用されなかった脂肪酸は脂肪細胞内に取り込まれ中性脂肪に再合成されて、そのまま貯蔵される=体脂肪となる
.
リパーゼはこのように脂肪を分解する酵素ですが、
- LPLは【血液中の中性脂肪を分解して】脂肪細胞内に取り込む=体脂肪として溜める要素が強く
- HSLは【体脂肪を分解して】脂肪細胞外に放出させる=脂肪を分解してエネルギーとして利用する要素が強く
なっています。
CLAにはLPLを阻害する働きがあります。
なので、CLAは体脂肪の蓄積を防ぐ働きをします。
■CLAは脂肪の蓄積を抑制する その2
糖質はブトウ糖に分解され、小腸に吸収されたのちに全身の細胞に取り込まれます。この取り込みをするのがインスリンの役割です。
食事をすると血糖値が上がり、すい臓からインスリンが分泌されます。血糖値を下げる過程でインスリンは血中の糖を細胞に取り込むように働きます。
インスリンが肥満ホルモンと呼ばれる理由は「糖質をとると血糖値が急上昇しインスリンが分泌される」その際「ブドウ糖が過剰となった場合、エネルギーとして利用されなかった余ったブトウ糖を脂肪細胞に運び体脂肪として蓄える」働きをするからです。
インスリンが標的とする臓器は骨格筋、肝臓、脂肪組織です。
インスリンが働く順番もこの順です。インスリンはまずは筋肉に、次に肝臓に、最後に脂肪に働きかけます。このことをインスリン・ヒエラルキーと呼びます。
このインスリン・ヒエラルキーが崩れるケースがあります。暴飲暴食によりインスリンが大量に分泌されるとまずは筋肉にではなくまずは脂肪に働きかけるようになってしまいます。これが肥満の原因となります。
なおインスリンの働きやすさを「インスリン感受性」と呼びます。インスリンが筋肉ではなく脂肪に働きかけているような状態をインスリン感受性が低い、またはインスリン抵抗性があるといった表現をします。
CLAにはインスリンの感受性を高める働きがあります。
以上のことから、10trans、12cis-CLA食による脂肪組織重量の低下はFASやLPL遺伝子発現の低下が関与すること、TNFαの発現抑制に介してインスリン抵抗性を改善する可能性が示唆された。
引用元
共役リノール酸の抗肥満作用に関する分子生物学的研究 研究課題
KAKEN:科学研究費助成事業データベース(国立情報学研究所)
インスリンの感受性が高まると【脂肪に向かうインスリンが減るため】脂肪の蓄積を防ぐことができます。
以上、CLAの抗肥満作用をまとめると以下のようになります。
CLAの抗肥満作用
- 脂肪の燃焼を促進する
◆CLAはHSLの働きを活性させる
◆CLAはCPT-1の発現を増やす - 脂肪を溜めさせない
◆CLAはLPLの働きを阻害する
◆CLAはインスリン感受性を高める
さて、すでに説明しましたが、CLAの抗肥満作用は、主に10t,12c-CLAによるものです。
10t,12c-CLAは食品にほとんど含まれていません。
ということで、CLAの抗肥満作用を得るには、基本 CLAのサプリからということになります。
なので、説明した話はサプリから取ることが前提となります。
※そもそも食品に、CLA自体がほとんど含まれていません。CLAの有する効果・効能を得るには、基本 CLAのサプリからということになります。
CLAにはさまざな生理作用があります。ただその作用機構は不明&複雑な点が多いです。
例えば、CLAには抗酸化作用があるとされていますが、その一方でない説、あってもすごく弱い説、逆に酸化を促進する説があります。
例えば、CLAは脂肪組織において脂肪酸合成系酵素を抑制するといわれていますが、肝臓では脂肪酸合成系酵素を活性させるとの説もあります。
ここでは基本「いい方向」で評価します。例えば 抗酸化作用に関してはある で評価します。
ただ疑わしきケースは点数は低く設定しています。
CLAの働き分析【見た目編】
合計 36.5/60点
薄毛
4点
「薄毛」改善 に関わるCLAの働きは主に次です。
- 抗酸化作用
活性酸素が頭皮に過剰に発生すると毛乳頭細胞や毛母細胞の機能が低下し薄毛につながります。CLAには抗酸化作用があります。 - インスリン感受性
インスリンの働きが低下する「インスリン抵抗性」が35歳未満男性の早期薄毛症状の発症指標になるとの報告があります。CLAにはインスリン感受性を高める作用があります。参照
メタボ改善と同じ「スイーツ絶ち」で薄毛を予防&治療しましょう/抜け毛予防
毎日が発見リンク
白髪
4点
「白髪」予防 に関わるCLAの働きは主に次です。
- 血圧上昇抑制作用
毛細血管のゴースト化をご存知でしょうか。
簡単にいうと酸素や栄養を運ぶ毛細血管に隙間ができ、そこから【それらを含んだ】血液が漏れだすことをいいます。その先に血液が流れなくなり、そのまま毛細血管が消えてみえるようになることをゴースト化といいます。
※毛根には毛細血管を通して酸素や栄養が運ばれています。毛細血管のゴースト化によって影響を受けるのは、体の一番端にある髪(頭皮)と肌です。そのためゴースト化が頭皮の近辺で起こると薄毛や白髪の原因になるといわれています。
さて、ゴースト化の原因は加齢や生活習慣が大きく関係してきます。生活習慣の中には「糖質の過剰摂取」「高血圧」「運動不足」「睡眠不足」などが当てはまります。
CLAには血圧上昇抑制作用があります。毛細血管のゴースト化の予防に、しいては白髪の予防になるかもしれません。
参照
ゴースト血管が危ない~美と長寿の鍵 毛細血管~
NHKスペシャル NHK
リンク
美肌
5.5点
「美肌」作り に関わるCLAの働きは主に次です。
- 抗酸化作用
肌の細胞にダメージを与えるのが紫外線などにより発生する活性酸素です。CLAには細胞を活性酸素の攻撃から守る抗酸化作用があります。生草を摂取する放牧では、貯蔵飼料を摂取する舎飼いに比べて、牛乳中には抗酸化作用や抗ガン作用のある共役リノール酸(CLA)濃度が高いとされ、牛乳の高付加価値化の方策として期待される。
引用元
放牧飼養下で生産される牛乳中の共役リノール酸濃度
農研機構 - 抗炎症作用
CLAは皮膚の炎症を抑えます。CLAには炎症を誘導するPGE2(プロスタグランジンE2)の産生を抑制する働きがあります。 - 抗糖化
糖化とは体内に余った糖質がたんぱく質とくっつき、たんぱく質を劣化させる現象のことをいいます。糖化を予防するにはまずはインスリンがしっかりと働くことが前提となります。インスリンの感受性を高めることは抗糖化につながります。CLAにはインスリンの感受性を高める作用があります。
美白
5.5点
「美白」ケア に関わるCLAの働きは主に次です。
- PGE2産生抑制作用
紫外線を浴びた皮膚では、表皮細胞でプロスタグランジンE2(PGE2)やインターロイキン1αといった炎症因子が産生されます。これら炎症因子は皮膚の炎症を引き起こすだけでなく、メラノサイトに働きかけメラニンの生成を活性化させます。
PGE2はリノール酸から代謝されてできるアラキドン酸より産生されます。CLAにはリノール酸からのアラキドン酸への代謝を阻害する作用があります。
CLA は n-6 系不飽和脂肪酸における LA から GLA への代謝を阻害する。結果としていくつかの組織において AA と PGE2 の水準は減少する。
引用元
共役リノール酸単独または他の脂肪酸との混合投与による皮膚特性の修飾
『Cosmetology』第14号(2006年発行)
公益財団法人 コーセーコスメトロジー研究財団この作用によりPGE2の産生を減少させます。この働きは美白にもプラスになると考えられます。
参照
ヒアルロン酸が『紫外線による炎症』を抑制することを発見
ロート製薬(株)
筋肉
7.5点
「筋肉」増強 に関わるCLAの働きは主に次です。
- インスリン感受性を高める
筋肥大のためには、筋トレ後にたんぱく質を摂取することはマストです。
この時、糖質をプラスするとたんぱく質だけを摂取するよりも筋肉の合成率が高まります。これはインスリンが関係してきます。糖質をとるとインスリンが分泌され細胞に糖を取り込む働きが促されます。たんぱく質と糖質を同時にとることで、糖質に反応し分泌されたインスリンが筋肉細胞に糖のみならずたんぱく質を取り込むようになり筋肉の合成を高めるといったメカニズムとなります。
さてインスリンの標的臓器は筋肉・肝臓・脂肪です。働きかける優先順位もこの順番です。
インスリンの感受性が低いと筋肉より脂肪のほうに働きかけてしまいます。
なのでトレーニング後にたんぱく質+糖を取る際、インスリンの感受性を高めておくと効果的な筋力アップが期待できます。
CLAにはインスリンの感受性を高める作用があります。参照
結果にコミットー!効果2倍の筋肉UP術
NHK ガッテン!純粋な筋肉だけでバルクアップしろ ー前編ー
DNS ZONE (株)ドーム
脂肪
10点
「脂肪」減少 に関わるCLAの働きは主に次です。
- 抗肥満作用
CLAには抗肥満作用があります。ただ単にあるのではなく「非常に」あるといえます。CLAは脂肪を燃焼させる&脂肪を蓄積させない働きをします。詳しくは効果・効能欄をご覧ください。
CLAの働き分析【中身編】
合計 43/60点
身体
3.5点
「身体」の構成材料 に関わるCLAの働きは主に次です。
- 徐脂肪筋肉
CLAの有する生理機能の中でも特筆すべきは抗肥満作用です。これにさらに筋肉をつけやすくするといった働きも加わります。
ゆえに、CLAは徐脂肪筋肉量の増加を促す成分といえます。引き締まった体型を作りあげるのを強力にサポートします。
エネ
8点
「エネルギー」生成 に関わるCLAの働きは主に次です。
- 脂質のエネルギー代謝
脂肪からエネルギーを産生する流れは簡潔にいうと次です。- 分解 体内に蓄積された中性脂肪を脂肪酸とグリセリンに分解する
- 運搬 分解されてできた脂肪酸を細胞のミトコンドリアに運搬する
- 燃焼 ミトコンドリアで脂肪酸がエネルギー貯蔵物質ATPに変わる
CLAは以下の理由からこの流れに深く関与しています。
①CLAは脂肪分解酵素HSLを活性させる働きをします。脂肪の分解を促します。②分解で生じた脂肪酸はカルニチンと結合することでミトコンドリア内に入ることができます。CLAは脂肪酸とカルニチンが結合する際に必要な酵素を活性させる働きをします。
以上から、CLAは脂肪からのエネルギー産生に深く関与している成分といえます。
病気
8.5点
「病気」予防 に関わるCLAの働きは主に次です。
- がん
動物実験により、CLAに発がん抑制効果があることが確認されています。CLAには,抗がん・抗肥満作用の他にも,抗動脈硬化作用,糖尿病改善作用,アレルギー抑制作用など多様な摂取効果が報告されている
引用元
共役リノール酸の新規栄養生理機能
J-STAGE - 動脈硬化
ラット実験により、CLAの摂取は血清のコレストロールや中性脂肪の減少させることが確認されています。 - 糖尿病
CLAはインスリンの感受性を高める働きをします。 - 高血圧
ラット実験によりCLAに血圧上昇抑制作用があることが確認されています。
この作用は◆血圧を上昇させるアンジオテンシンの分泌を高める「アンジオテンシノーゲン」の産生抑制
◆交感神経の活動を亢進し、血圧を上昇させる作用をもつ「レプチン」の産生抑制
◆高血圧の危険因子であるインスリン抵抗性を改善する「アディポネクチン」の遺伝子発現および血中濃度の上昇
参照
共役リノール酸の新規栄養生理機能
J-STAGE - 骨粗鬆症
CLAには骨代謝改善作用があります。骨粗鬆症予防になります。
体質
9.5点
「体質」改善 に関わるCLAの働きは主に次です。
- アレルギー
CLAにはアレルギー反応を引き起こすPGE2の産生を抑制する働きがあります。リノール酸からアラキドン酸(PGE2のもと)の代謝を阻害することでPGE2を減少させます。
- メタボ
ラット実験によりCLAには糖と脂質の代謝を改善し抗メタボリックシンドローム作用を有するホルモン「アディポネクチン」の血中の濃度を上げる働きがあることが確認されています。また、脂肪酸である共役リノール酸は、ラットにおいて血中のアディポネクチン濃度を増加させることが報告されている
引用元
公開特許公報(A)_アディポネクチン分泌増加剤
国立研究開発法人科学技術振興機構 - 長寿
アディポネクチンは長生きホルモンとして有名です。ラット実験によりCLAの投与がアディポネクチンの遺伝子発現および血中濃度の上昇させることが確認されています。 - 免疫力
ラット実験によりCLAに抗体産生増強効果があることが確認されています。CLAの免疫調節機能の一つとして抗体産生の増強効果が挙げられる。
引用元
共役脂肪酸の機能性食品成分への応用に関する研究
J-STAGE - 冷え性
CLAには血液中のコレストロールや中性脂肪を減らす働きがあるとされます。この働きは血流改善に、しいては冷え性の予防・改善に効果を発揮します。
精力
7.5点
「精力」増強&「性機能」向上 に関わるCLAの働きは主に次です。
- PGE2産生抑制作用
アラキドン酸から生成されるプロスタグランジンE2は子宮を収縮させる作用があります。これが生理痛の原因となります。
CLAにはリノール酸からのアラキドン酸への代謝を阻害する作用があります。この作用によりプロスタグランジンE2の減少させます。 - カルニチン
卵子のミトコンドリアの機能低下は不妊の原因の一つとされます。なので卵子のミトコンドリアを活性化させる成分が妊活に活用されています。脂肪酸をミトコンドリア内に運ぶ役割を果たしているカルニチンはミトコンドリアを活性させる成分の代表です。実際、産婦人科やレディースクリックで不妊治療の一環としてカルニチンサプリの摂取がよく勧められています。
CLAはカルニチンの仕事「ミトコンドリアへの運搬」を強力にサポートする成分です。リンク
健脳
6点
「脳」の健康 に関わるCLAの働きは主に次です。
-
インスリン感受性
糖尿病になると認知症の発症リスクが2倍にあがるといわれています。理由は糖です。糖は脳の唯一の栄養源(例外あり ケトン体)なので、インスリン抵抗性が起きると身体だけでなく脳にも作用すると考えられます。なのでインスリンの感受性を高めることは脳の健康につながるとされます。CLAにはインスリン感受性を高める作用があります。参照
40代に告ぐ!医師がすすめる「アルツハイマー治療」の秘策
講談社 ブルーバックス
CLAのサプリメント紹介
CLAのまとめ
分析【見た目編】36.5点
分析【中身編】43点
CLA 抗肥満作用 参照一覧
CLA 共役リノール酸のチカラ 日清オイリオグループ(株)
「共役リノール酸」 脂肪を減らしたい人は必見 かんたん、わかる!プロテインの教科書 森永製菓(株)
共役リノール酸の機能と代謝 J-STAGE
共役脂肪酸の機能性食品成分への応用に関する研究 J-STAGE
共役リノール酸 (CLA) の生理機能と食品への応用 J-STAGE
共役リノール酸の新規栄養生理機能 J-STAGE
共役リノール酸の食品中の含量と生理機能 J-STAGE
機能性脂質 J-STAGE
機能性脂質によるメタボリックシンドロームの予防・改善に関する研究 J-STAGE
食餌脂肪酸・タンパク質によるエネルギー代謝組織の遺伝子発現制御 農研機構
CLAサプリメント 共役リノール酸は減量に効果的? 副作用は?いつ飲めばいい? 摂取量は?
マイプロテイン公式サイトブログ
THE HUT GROUP
食品中のトランス脂肪酸(乳脂質を中心に) J-STAGE
トランス脂肪酸問題の現状 J-STAGE
トランス脂肪酸の低減化に向けて J-STAGE
明治のトランス脂肪酸量の低減への取り組み (株)明治
トランス脂肪酸問題についてのQ&A 食品のQ&A 日本生活協同組合連合会