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カルニチンと言えば、脂肪燃焼です。
というか、「カルニチン」がないと脂肪は燃焼しません。
脂肪が分解されて生じた長鎖脂肪酸がエネルギーに変換される過程は以下です。
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長鎖脂肪酸は細胞質に取り込まれた後、活性化され長鎖アシルCoAに変換されます。
長鎖脂肪酸が次の代謝過程であるβ酸化を受けるにはミトコンドリアに運ばれる必要があります。
ですが、長鎖アシルCoAのままだと、ミトコンドリアの内膜を通ることができません。
ミトコンドリアの内膜を通過するにはカルニチンの手助けが必要となります。
長鎖アシルCoAは、一時的にカルニチンと結合することでミトコンドリア内膜を通過することができます。
ここで「なぜ?」と考えずに、そういうものとして受け入れください。
通過した長鎖アシルCoAはb酸化の出発原料になり、アセチルCoAにまで分解されます。
そのアセチルCoAはTCA回路に組み込まれ、その後の代謝過程(TCA回路→電子伝達系)をたどっていきます。
長鎖脂肪酸をミトコンドリアに取り込む過程に必須の成分、それがカルニチンです。
なお、わざわざ脂肪酸の前に「長鎖」をつけている理由は、中鎖脂肪酸はカルニチンの手助けを必要なしに直ぐにβ酸化を受けれるからです。これ、中鎖脂肪酸が長鎖脂肪酸より約4倍早くエネルギーになる理由の1つです。
カルニチンの生理機能として忘れてならないは「ミトコンドリア内の遊離CoAに対するアセチルCoAの割合を調節する」です。
今回の話の肝はこれです。
ご存知の通り、アセチルCoAは脂肪酸の代謝過程の中間物質のみならず、グルコースの代謝過程のそれでもあります。
出典元
ケトン体・ケトン食とは
中鎖脂肪ケトン食
脂肪酸のβ酸化では大量のアセチルCoAが生成されます。この過程では大量の遊離CoAが必要となります。
細胞内の遊離CoAが欠乏していると糖質燃焼も滞ります。それより、ミトコンドリア内のあらゆる代謝に影響を及ぼすことになります。
脂肪酸分子はβ-酸化によって大量のアセチルCoAを産生するが,このプロセスでは十分量の遊離CoAが必 要になる.遊離CoAが欠乏する状態では糖質燃焼も滞るため,それへの対応策としてピルビン酸からは乳酸への一時変換が,アセチルCoAからはケトン体を生成させて急場を凌ぐものと考えられている.
引用元
日本人とL-カルニチン:Low doseに目を向けて
J-STAGE
とりあえず、ここでは深く考えずに
【過剰にアセチルCoAが生成される(アセチルCoAの供給>TCA回路でのアセチルCoAの消費)と、遊離CoAが欠乏する】⇦これ ミトコンドリアによくないこと
だと捉えてください。
このような状況において、カルニチンは以下の反応により遊離CoAを確保するように働きます。
アセチルCoA+カルニチン→アセチルカルニチン+遊離CoA
このとき L -カルニチンがミトコンドリア内に十分に存在していれば以下の酵素反応がおこる.
アセチルCoA+ L -カルニチン → アセチルカルニチン+遊離CoA
これにより遊離CoAの欠乏状態が緩和される(カルニチンによるアセチルバッファー効果).一方生じたアセチルカルニチンはミトコンドリアから血中に移行する.引用元
日本人とL-カルニチン:Low doseに目を向けて
J-STAGE
ということで、カルニチンにはミトコンドリア内の遊離CoAに対するアセチルCoAの割合を調節する=遊離CoA プールを維持する 機能があります。
これは「ミトコンドリア内でのエネルギー代謝を維持する」「※有害な物質をミトコンドリアの外に運び出す」ためのとても重要な役割です。
※細胞内で酸化されず蓄積したアセチルCoAは糖代謝を抑制するようになるので、悪性脂質と表現されることがあります。
アセチルCoAは,糖代謝の重要な律速酵素であるピルビン酸デヒドロゲナーゼ(PDH; pyruvate dehydrogenase)の阻害剤として働いて糖代謝を抑制する.このアセチルCoAのように,完全に酸化されずに中間代謝物として蓄積した脂質は,代謝を抑制するように働くことから悪性脂質と表現されている.
引用元
骨格筋における L -カルニチン:動態解析から見えた新たな役割
PDFページ 2/7
J-STAGE
話の都合上、アセチルCoAで話を進めました。書籍やサイトにより「ミトコンドリア内の遊離CoAに対するアシルCoAの割合を調節する」で説明されていることがあります。
ここで アセチルCoAをアシルCoAに置き換えても、結局のところ遊離CoA プールを維持することになります。それより生じる機能「ミトコンドリア内でのエネルギー代謝を維持する」「有害な物質をミトコンドリアの外に運び出す」は一緒です。
※アシルCoAは有害です。
というわけで、カルニチンは、アセチルカルニチンとなり、遊離CoAを確保します。
産生されたアセチルカルニチンは血中の放出されるのですが、これはカルニチンとは全く違った生理作用を発揮します。
脳に運ばれ(アセチルカルニチンは血液脳関門を通過する)、そこでアセチルコリンの生合成の増加などに関与します。
それにより脳機能向上効果をもたらします。
アセチルカルニチンはカルニチンとは異なる生理作用を有する.その一つに神経保護作用があり,脳機能を高めることが分かってきた
引用元
骨格筋における L -カルニチン:動態解析から見えた新たな役割
PDFDページ 6/7
J-STAGE
ちなみに、生体内に遊離で存在するカルニチンの10%程度はアセチルカルニチンです。
ということで、カルニチンはダイエットにも、妊活にも(← ミトコンドリアの機能低下が不妊の原因の1つ)、脳にもいい成分です。
ところで、カルニチンサプリには大きくL-カルニチンとアセチル-L-カルニチンの2種類があります。
脂肪燃焼効果目的であるならばL-カルニチン、脳機能向上効果目的であるならばアセチル-L-カルニチンといった風潮が一部あるような気がしますが、どっちでとっても両方とも得られます。
これ「ミトコンドリア内の遊離CoAに対するアセチルCoAの割合を調節する」のくだりを読んでいただくお分かりいただけると思います。
アセチル-L-カルニチンはカルニチンサプリの形態の1つで、アセチル化することでカルニチンの吸収を高めたものという認識でよろしいかと思います。
ただ、ダイエットなんてどうでもよく完全に脳機能向上効果目的であるならば、アセチル-L-カルニチンを選択しておいたほうが無難です。
アセチル-L-カルニチンは血液脳開門を効率よく通過するからです。海外のカルニチンの認知機能関連の治験に用いられるのは、だいたいアセチル-L-カルニチンです。
アセチル‐L-カルチニンはL-カルチニンよりも小腸からの吸収がよく、血液脳関門を効率よく通過するため(脳組織まで届く)、研究者は研究でアセチル‐L-カルチニンを使用することを好む
引用元
海外の情報 カルニチン
『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』
厚生労働省
実は、以前は自分も この考えでした。
➡【脂肪燃焼効果目的であるならばL-カルニチン、脳機能向上効果目的であるならばアセチル-L-カルニチン】
で、自分にとってカルニチンといえば、脂肪燃焼効果目的なので、もっぱらL-カルニチンサプリを購入していました。
ただ、いろいろ勉強するようになり(さっきの厚生労働省の引用文より、)主にアセチルカルニチンでいいかな~と思うようになりました。
ところで、この商品は200粒入りのもあります。
iHerb限定の話ですが、200粒入りを買うより100粒入りを2パック買ったほうが、全然お得です。粒単価3円ぐらい違います。
ぱっと見 内容も全く一緒です(くまなく調べていません。間違っていたらすいません)。
普通は粒数が多くなるとそれだけ安くなるはずです。
なるべく安くをモットーにしている方、間違っても200粒入りは選択しないようにしてください。
※レビュー作成時。今後価格の変更はあるかもしれません。
参照一覧
骨格筋における L -カルニチン:動態解析から見えた新たな役割
J-STAGE
日本人とL-カルニチン:Low doseに目を向けて
J-STAGE
カルニチンの脂質栄養効果と脳の抗老化作用の研究
J-STAGE
健康食品におけるカルニチンの基礎 -測定、生化学、生理学的役割について-
生物試料分析
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※レビューの内容について
→個人の見解です。