ビタミンAの評価 S
ビタミンA
脂溶性ビタミン
ビタミンAは脂溶性ビタミンの1種です。
脂溶性ビタミンは水に溶けにくく尿中に排泄されないため、必要以上に摂取すると体内に蓄積されてしまいます。なので過剰摂取に気をつける必要があります。
脂溶性ビタミンの中で、ビタミンAは特に注意です。詳しくはビタミンAの摂取量、不足、過剰で説明します。
レチノール・レチナール・レチノイン酸
ビタミンAはA1系とA2系に大別されます。
- A1系
レチノール・レチナール・レチノイン酸 - A2系
3-デヒドロレチノール・3-デヒドロレチナール・3-デヒドロレチノイン酸
ビタミンAは一般的にはA1系の3種類のことを指します。
狭義にはレチノールのみを指します。
ちなみに、ビタミンAおよびその誘導体やビタミンAに類似した合成化合物を総称してレチノイドと呼びます。
ビタミンAの体内代謝
ビタミンAの主たる供給源は、
動物性食品に含まれる「レチニルエステル」と
植物性食品に含まれる「プロビタミンA」
です。
話をわかりやすくするためにここでは、ビタミンA(レチノール)として説明します。
レチニルエステルはビタミンA(レチノール)と脂肪酸のエステルです。食品に含まれるレチニルエステルは、小腸吸収上皮細胞において加水分解を受けビタミンA(レチノール)となって細胞内に取り込まれます。
プロビタミンAは、小腸吸収上皮細胞(あるいは肝臓、腎臓)でレチナールに分解されて、ビタミンA(レチノール)に変換されます。
ビタミンA(レチノール)は細胞内では再度エステル化されます。再エスチル化されたレチニルエステルはカイロミクロンに組み込まれ、その後リンパ管を経て肝臓に運ばれ「レチニルエステル」として貯蔵されます。
体内に取り入れられたビタミンAのほとんどは「レチニルエステル」として肝臓に貯蔵されます。
レチニルエステルは、必要に応じてエステル体からビタミンA(レチノール)に変換されます。
そして血流により標的組織に運ばれます。
その細胞内にてレチナール、レチノイン酸に酸化され、活性型となり「ビタミンAの生理作用」を発揮します。
ビタミンAの生理作用
ビタミンAの生理作用は視覚の機能維持、皮膚・粘膜の健康維持、成長促進、抗ガン作用、細胞の分化・増殖などです。
ビタミンAの生理作用の大半を担うのはレチノイン酸です。レチノイン酸が、標的とする細胞内で核内受容体を介した遺伝子発現を調節することにより、その生理機能を発揮します。
ビタミンAの生理作用のうち、視覚の機能維持はレチナールの働きです。
ビタミンAの生理作用のうち目に対しては主にレチナール、
目以外の全身に対しては主にレチノイン酸
が担当しているものと捉えてください。
ビタミンAの効果・効能
目の健康維持
目の網膜には光を感じる視細胞があります。視細胞には、杆体細胞(明暗に関与)と錐体細胞(色彩に関与)があります。
ロドプシンは、杆体細胞に存在する光を感知する光受容タンパク質です。
ロドプシンは「視覚」のために重要な物質で、オプシンというたんぱく質とビタミンA(レチナール)で構成されています。
ここでいう「視覚」とは対象物を光の情報として、それを電気信号化し、その信号を脳に伝えることで像として認識することをいいます。ロドプシンが光によって分解されることで、脳に信号が伝わりその結果として「視覚」が生じます。
分解されたロドプシンは次の分解に備え、自動的に再合成されるようになっており、ロドプシンが分解と再合成を繰り返すおかげでいろいろなものを「見る」ことができます。
構成成分のビタミンA(レチナール)が不足するとロドプシンが合成されにくくなります。その結果、暗い所でものが見えにくくなる症状=夜盲症が生じます。
皮膚や粘膜の健康維持
ビタミンA(レチノイン酸)が体内で生理活性を発揮するには細胞の核内にある核内受容体に結合する必要があります。
細胞の核内にはビタミンA受容体であるRAR(レチノイン酸受容体)とRXR(レチノイン酸X受容体)があります。ビタミンAと受容体が結合すると活性化され、それにより遺伝子の発現の制御が行われます。
ビタミンA(レチノイン酸)は遺伝子の発現調節を介して様々な作用をもたらします。そのうちのひとつが上皮細胞の機能維持です。ビタミンAが不足すると上皮組織(皮膚や粘膜)の健康が損なわれます。
発がん抑制
レチノイド【ATRAやタミバロテン】が白血病の治療薬(分化誘導療法)としてすでに活用されています。
ビタミンAおよびその誘導体やビタミンAに類似した合成化合物の総称をいいます。
ビタミンAの活性本体であるレチノイン酸と同じ効果あるいは類似の作用をもつ化合物の総称をいいます。
他の抗がん剤が「白血病細胞を直接破壊する」のに対して、レチノイド【ATRAやタミバロテン】は「白血病細胞を分化・成熟させることによって、正常な白血球と同様な経過をたどって死滅させる」働きをします。
参照
急性骨髄性白血病 治療
それぞれのがんの解説 がん情報サービス
国立研究開発法人 国立がん研究センターがん対策情報センター
ビタミンAの摂取と皮膚がんリスクの低下の関連がみられるといった研究報告もあります。
この報告によると「ビタミンAの摂取量が最も多い人は、最も少ない人に比べて、皮膚がんの発症リスクが17%低い」とのことです。
ビタミンAの摂取量の多い順に5群に分けて解析したところ、ビタミンA摂取量が最も多い群の人は、最も低い群の人に比べて、皮膚がんに罹るリスクが17%低いことが明らかになったという。
出典元
ビタミンAは皮膚がんリスクの低下と関連!?
リンク・デ・ダイエット 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所
ということで、ビタミンAはガン予防に適した成分といえそうです。
動物由来ビタミンAやサプリからの摂取は要注意です。ビタミンAの過剰症は、ビタミンAを多量に含有する動物性食品(うなぎ・レバーなど)or ビタミンAサプリを大量に服用する ことにより発生する可能性があります。
ビタミンAは脂溶性ビタミンで体内に蓄積されるので、過剰症になりやすいです。
先ほどの研究報告(ビタミンAは皮膚がんリスクの低下と関連!?)のビタミンAの供給源の大半は植物由来(プロビタミンA)とのことです。
ビタミンAのサプリメントによくあるキャッチフレーズ集
- 目の健康に
- 視力維持や皮膚粘膜を丈夫にする働きが期待できます
- 目や皮膚、呼吸器系、消化管などに存在するビタミン
- 緑黄色野菜が不足しがちな方にも
- 若々しくいたい人に
ビタミンAの摂取量、不足、過剰
◆推奨量
800~900μgRAE/日(成人男性)
650~700μgRAE/日(成人女性)
※数値は年代により異なる
◆耐用上限量
2700μgRAE/日(成人)
◇単位について
ビタミンAの効力を示す単位はRAE(レチノール活性当量)あるいはIU(国際単位)が用いられます。
1μgRAEはレチノールとして1μg、1IUはレチノールとして0.3μgです。
レチノール 1μgは【β-カロテン 12μg、α-カロテン 24μg、β-クリプトキサンチン 24μg、その他のプロビタミン 24μg】に相当します。
上記、ビタミンAの量は、レチノールとプロビタミンA合わせた数値です。
欠乏症
:夜盲症 :角膜軟化症 :皮膚・粘膜の乾燥化 :免疫機能低下による細菌感染症
不足ぎみ
:目が乾燥する :暗い所で見にくくなる :肌がかさつく :風邪をひきやすくなる :抜け毛が増える
ビタミンAの欠乏症で特に有名なのは暗いところで目が見えにくくなる「夜盲症」です。ビタミンAが不足しているとロドプシンが合成されなくなり夜盲症が起こります。
慢性の中毒症状は、関節や骨の痛み、皮膚乾燥、脱毛などです。
急性の中毒症状は、腹痛・嘔吐・めまい・過敏症などが出現し、その後に全身の皮膚落屑がみられます。
ビタミンAの過剰症は、ビタミンAサプリを大量に服用する or ビタミンAを多量に含有する食品(うなぎ・レバーなど)を摂取することにより発生する可能性があります。
連日 25,000IU( 7,500μgRAE )を摂取すると慢性症状が出現すると言われます。
ビタミンAの豆知識
プロビタミンAとは体内でビタミンAに変換されるものの総称です。プロビタミンAは約50種類存在します。有名どころはβ-カロテン、α-カロテン、β-クリプトキサンチンの3つです。
プロビタミンAの代表ともいえるのがβ-カロテンです。
β-カロテンについて簡単にまとめます。
β-カロテン
β-カロテンはカロテノイドの1種です。
.
β-カロテンは摂取されると 小腸粘膜吸収上皮細胞内で、開裂酵素β-カロテン-15,15′-モノオキシゲナーゼ(BCMO1)の作用により中央開裂し2分子のレチナールを生成します。
β-カロテンが体内でビタミンAとして利用される率はおよそ1/12となります。
β-カロテンのビタミンA(レチノール)の転換効率が50%& β-カロテンの吸収率が1/6のため【1/2(転換効率)×1/6(吸収率)=1/12】です。
ここでは下記のように、わけて覚えてください。
- 2分子レチナールを生成する
- レチノールへの転換率が1/2 × β-カロテンの吸収率が1/6
ゆえにビタミンAとしての生体利用率はおよそ1/12
つまり「2分子のレチナールを生成するβ-カロテンは、2分子のビタミンA(レチノール)に変換されるではなく、重量当たりで1/12のビタミンA(レチノール)に変換される」です。
※レチナールとレチノールの違いに注意。
βカロテンはビタミンAとして利用される率は高くありませんが、βカロテンから摂取するメリットがあります。それは「過剰症の心配がない」です。
βカロテンにはビタミンAが不足している時に必要とする量だけビタミンAに変換され、ビタミンAが十分に存在する時にはビタミンAに変換されないという特徴があります。
さらにいうと、ビタミンAがもっていない活性酸素「一重項酸素」を除去する働きも有します。
以上より β-カロテンは、【ビタミンA(ビタミンA作用)を得たいと考えた時に】
「オプション」としてではなく「スタンダード」としても十分に活躍します。
実際、我々日本人はビタミンAの多くをβ-カロテンより取っていると言われています。
なお、変換率の話は食事由来に限ります。サプリメントからだと率は異なります。
サプリのβ-カロテンだと、ビタミンAの生体利用率は1/2程度です。
なお、サプリメントとして摂取する油溶化β─ カロテンは、ビタミン A としての生体利用率が1/2 程度なので、従来どおり2 µg のβ─カロテンで1 µg のレチノールに相当し、食品由来のβ─カロテンとは扱いが異なる。
引用元
5. 1. 1.ビタミン A
厚生労働省
ビタミンAと相性の良い栄養成分
・ビタミンD
ビタミンAのレーダーチャート解説
- 6
このカテゴリーに効果があることで有名。即効性があったり、継続して摂取することで効果を感じる - 5
このカテゴリーに効果があることで有名。継続して摂取することでなんとなく効果を感じる - 4
このカテゴリーに効果があるといわれている。効果が得られることを期待して飲んでいる - 3.5
このカテゴリーに効果があるといわれているが、個人的に摂取目的としていない - 3
このカテゴリーになんらかの効果があるもの - 2
このカテゴリーとはあまり関係ないと思われる - 1
このカテゴリーとは関係ないと思われる
※4以上が摂取目的となっているカテゴリー
ビタミンA総合評価 S 17
5つのカテゴリーのうち、評価が高い上位3つのカテゴリーを足したものです。「B~SS」でつけています。
SS 18点
S 16点以上
A+ 14点以上
A 12点以上
B+ 10点以上
B 9点以下
髪(薄毛)評価4.5
髪は皮膚(表皮)の細胞が変化(角化)して作られるものです。ビタミンAは皮膚の代謝(=頭皮の代謝)を正常にする働きをします。頭皮の皮脂の過剰分泌を防ぐあるいは乾燥を防ぐことで健やかな髪を生み出す環境を作り上げます。
髪の毛は上皮組織の一部です。上皮組織の健康を保つ働きがあるビタミンAは髪の健康にも有効な成分です。
参照
薄毛が気になりだしたらビタミンA不足を疑え!
からだケア 日経Gooday
ただし、ビタミンAが過剰となった場合は逆効果(脱毛を促す)になる ので注意が必要です。
肌(美肌)評価6
ビタミンAの美肌効果をざっとまとめると以下なります。
- 皮膚の健康維持
上皮細胞の機能維持に働くビタミンAは皮膚の健康維持に貢献しています。
不足すると乾燥肌になったり、ニキビができたりと肌トラブルが多くなります。 - 繊維芽細胞を活性
繊維芽細胞は真皮を構成している美肌成分(コラーゲン・エラスチン・ヒアルロン酸)を産生する細胞です。
加齢などが原因で繊維芽細胞の機能が衰えると 美肌成分が不足します。その結果「しわ・たるみ」となって肌に現れます。ビタミンAには繊維芽細胞を活性させる働きがあります。 - 繊維芽細胞のDNA修復
紫外線を浴びると直接(紫外線UVB)および活性酸素を介して(紫外線UVA)、真皮層にある繊維芽細胞のDNAがダメージを受けてしまいます。ビタミンAは損傷を受けたDNAに働きかけダメージを修復させます。 - 肌のターンオーバーの正常化
ビタミンAは細胞の分化・増殖に関わっています。この働きは肌においては肌のターンオーバーを促進し正常にさせる作用をもたらします。
美肌作りに必須のビタミンです。
体型(ダイエット)評価3.5
脂肪細胞は核よりも大きい脂肪滴がほとんどを占めています。
緑→ミトコンドリア
赤→核
黄→脂肪滴
その過剰蓄積が肥満につながります。ビタミンAは脂肪滴の蓄積を防ぐ働きをするといわれています。
レチノイン酸は脂肪滴の蓄積を抑制する役割があるので、ダイエット効果も注目されています。ビタミンAは毎日摂っても適量なら毒性がなく、健康管理に向いているので、サプリメントのような形でダイエットに活用する研究が進められています。
引用元
ビタミンAはミラクルな薬~がん治療薬から美肌・ダイエットまで~
夢ナビ
(株)フロムページ
体力(夜のほう)評価5
ビタミンAは生殖機能を維持する働きをします。
不足すると精子形成や胎盤形成に影響を及ぼします。
その他(視力)評価6
網膜にある視物質ロドプシンに光りがあたると信号が生じ、その信号が脳に伝達されることで「ものを見る」できます。
ロドプシンは光の刺激を受けると分解されます(その結果、脳に信号が伝わる)。分解されたロドプシンは自動的に再合成されることで、新たな光の刺激を受けることができます。
私たちはロドプシンが分解と再合成を繰り返すおかげで「ものを見る」ことができます。
ビタミンAはロドプシンの原料です。不足するとロドプシンの再合成が間に合わず「ものが見にくく」なります。
ビタミンA 参照一覧
脂溶性ビタミン 厚生労働省 PDF
ビタミンAの働きと1日の摂取量 健康長寿ネット 公益財団法人長寿科学振興財団
ビタミンA 「統合医療」情報発信サイト
ビタミンAとは? 公益社団法人ビタミン・バイオファクター協会
ビタミンAとβ-カロテンによる疾病の予防と治療 J-STAGE
ビタミンA関連医薬の現状と展望 J-STAGE
腸管免疫におけるビタミンAの役割 J-STAGE
ビタミンAの代謝と生理作用 J-STAGE
レチノイドによる自己免疫疾患の治療 J-STAGE
レチノール結合タンパク質群によるビタミンAの輸送,貯蔵,代謝の調節とその意義 J-STAGE
魚類ビタミンAの胚発生での役割解明に向けて 国立研究開発法人 水産研究・教育機構