グリシンの評価 A+
グリシン
20種類のアミノ酸は9種類の必須アミノ酸と11種類の非必須アミノ酸に分けられています。グリシンは非必須アミノ酸に分類されます。
生体内のグリシン生合成の経路はいくつかあります。グリシンはセリン、グルタミン酸、グリオキシル酸、スレオニン、コリンなどから生成されます。
グリシンは20種類のアミノ酸のうち唯一、不斉炭素原子をもっていないアミノ酸です。そして最も単純な構造をしています。
互いに異なる4種類の原子または原子団が結合している炭素原子をいいます。不斉炭素原子があると立体異性体【原子のつながり方が同じで空間的配置が異なる2つの化合物】が存在します。
グリシンには睡眠改善効果、美白効果、解毒作用などがあります。
グリシンの効果・効能
睡眠
グリシンには自然な眠りに導く効果・睡眠の質を高める効果があります。この効果は下記3つの働きによりもたらされます。
睡眠と体温は深く関わっています。というのも手足の末端部分から熱を放出し、体の深部体温(脳や内臓などの内部の体温)が下がることで活動状態から休息状態に切り替わり眠りが訪れるからです。
深い睡眠の時ほど深部体温は低下します。
グリシンには血管を拡張させ(末端の熱の放出を促し)深部体温を下げる働きがあります。
睡眠はレム睡眠(浅い眠り)とノンレム睡眠(深い眠り)で構成されています。睡眠のおよそ25%がレム睡眠、75%がノンレム睡眠です。この2つの睡眠を1セットとし約90分のサイクルが繰り返されています。睡眠時間によりますが、一晩に4、5回のサイクルが行われていることになります。
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引用元
健康になる!睡眠の化学
健康の森
日本医師会
グリシンにはノンレム睡眠の時間を増やす働きがあります。
ノンレム睡眠内にも浅い~深い睡眠まで4段階の「深さ」があります。
ステージ1、2が浅い睡眠、3、4が深い睡眠です。正常な人の睡眠は、レム睡眠→ノンレム睡眠ステージ1→ステージ2→ステージ3→ステージ4の順に進んでいきます。ノンレム睡眠ステージ3~4のことを徐波睡眠といいます。
徐波睡眠は脳波がゆるやかになります。眠りが特に深くなり完全な休息状態になります。この徐波睡眠中に成長ホルモンが分泌され、細胞の修復などが行われています。
眠りの質は徐波睡眠がしっかりととれているかに大きく左右されます。
グリシンには徐波睡眠に早く到達させる働きがあります。
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グリシンは不眠症の症状を改善させるアミノ酸として大変有名です。
コラーゲン
グリシンはコラーゲンを構成しているアミノ酸で最も多く含まれています。その比率は約30%です。
コラーゲンのアミノ酸組成
多く含まれている理由はコラーゲン分子の「アミノ酸配列」にあります。
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引用元
コラーゲンとは?
1月26日はコラーゲンの日
(株)ニッピコラーゲン化粧品
配列の特徴として3残基ごとにグリシン(Gly)が存在していることです。
【Gly-X-Y】の配列が繰り返されています。
コラーゲン分子のα鎖のアミノ酸配列は3残基ごとにグリシン(Gly)が必ず存在しています。
なので、コラーゲンを構成しているアミノ酸で最も多く【コラーゲンアミノ酸組成の約1/3=約30%を占める】含まれています。
グリシンは美肌作りに欠くことのできないアミノ酸です。
グルタチオン
グルタチオンは動物や植物のあらゆる細胞の中に存在している物質です。体内で抗酸化作用や解毒作用を発揮します。
グルタチオンはグルタミン酸・システイン・グリシンからなるトリペプチドです。
①グルタミン酸+システイン→γ-グルタミルシステイン
②γ-グルタミルシステイン+グリシン→グルタチオン
①の反応はγ-グルタミルシステイン合成酵素により
②の反応はグルタチオン合成酵素により行われます。
1、2の反応ともにATP1分子が必要です。
ALA
ヘムはヘモグロビン、ミオグロビン、シトクロムなどのヘムたんぱく質の構成要素として、さまざまな生理機能を発揮します。
ミオグロビン→酸素の貯蔵
シトクロム→エネルギー産生
ヘムはALA(5-アミノレブリン酸)によって作られます。
ヘムの生合成はミトコンドリア内にあるグリシン+スクシニルCoAを基質として、ALA合成酵素の働きにより「ALA」が生成される反応を第1段階とし、その後 7段階の酵素反応を経ていきます。

核酸
核酸は新しい細胞を作る時に不可欠な成分です。グリシンは核酸の合成に関与しています。
核酸はヌクレオチド【リン酸、糖および窒素塩基】が多数結合した鎖状の高分子化合物質です。
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引用元
核酸とは
ヤマサ醤油(株)医薬・化成品事業部
塩基は「プリン塩基」と「ピリミジン塩基」に分けられています。
- プリン塩基 アデニン グアニン
- ピリミジン塩基 ウラシル シトシン チミン
プリン塩基の生合成にグリシンが関与しています。
グリシンのサプリメントによくあるキャッチフレーズ集
- ぐっすり眠れて朝スッキリ
- 良質な睡眠を手助けする成分
- 睡眠薬に頼らず自然な眠りを
- ストレス社会で頑張るかたに
- コラーゲンの1/3を構成、美肌に重要

グリシンの摂取量、不足、過剰
「睡眠の質の向上」を目的とした場合の目安摂取量(食品会社・サプリメーカーが設定)は、1日1000~3000㎎が多くなっています。
不足していると寝つきが悪くなったり、不眠症になる可能性があります。
(コラーゲンの主成分であるため)肌トラブルや関節痛を引き起こします。
サプリから摂取する場合は用量・用法を守ってください。
グリシンの豆知識
グリシンは、キレート作用により鉄分など不足しがちなミネラルの溶解性を向上させ、吸収を促進します。
引用元
たべもの・のみもの
グリシン百科
有機合成薬品工業(株)
海外の鉄サプリの原料はグリシンと鉄を結合させたビスグリシン酸鉄(キレート化鉄)が多くなっています。
海外の亜鉛サプリの原料の1つにグリシンと亜鉛を結合させたグリシン酸亜鉛(キレート化亜鉛)があります。
グリシンは、多くのアミノ酸の中でも、菌の活動をおさえる静菌作用を持つ数少ない物質です。
特に耐熱性芽胞菌に対して静菌効果があり、数多くの食品で日持ち向上効果が認められます。引用元
たべもの・のみもの
グリシン百科
有機合成薬品工業(株)
グリシンはコンビニのおにぎりやお弁当などの食品添加物に利用されます。
グリシンと相性の良い栄養成分
・GABA
・テアニン

グリシンのレーダーチャート解説
- 6
このカテゴリーに効果があることで有名。即効性があったり、継続して摂取することで効果を感じる - 5
このカテゴリーに効果があることで有名。継続して摂取することでなんとなく効果を感じる - 4
このカテゴリーに効果があるといわれている。効果が得られることを期待して飲んでいる - 3.5
このカテゴリーに効果があるといわれているが、個人的に摂取目的としていない - 3
このカテゴリーになんらかの効果があるもの - 2
このカテゴリーとはあまり関係ないと思われる - 1
このカテゴリーとは関係ないと思われる
※4以上が摂取目的となっているカテゴリー
グリシン 総合評価 A+ 15.5
5つのカテゴリーのうち、評価が高い上位3つのカテゴリーを足したものです。「B~SS」でつけています。
SS 18点
S 16点以上
A+ 14点以上
A 12点以上
B+ 10点以上
B 9点以下
髪(薄毛)評価4
肌の真皮の7割はコラーゲンで形成されています。これは地肌(頭皮)にもあてはまります。なのでコラーゲン不足は頭皮環境の悪化につながります。
加齢とともに体内で作られるコラーゲン量が減少するため「コラーゲンを増やす」ことは髪にとっても大切となります。
事実、研究によりコラーゲンを取ると髪が太くなることが確認されています。
髪が太くなる髪のハリやコシに影響する毛髪の直径が増す。メカニズムは不明だが、女性を対象にした実験で、コラーゲンペプチドを8週間とると、直径が増加し、自覚症状で髪の「なめらかさ」が改善した。明治らの研究。
引用元
髪や爪にも効果 コラーゲン、そのとり方はNG
WOMAN SMART ビューティー 日経ヘルス
体内のコラーゲンを増やすにはコラーゲンペプチドを取ることはもとより、コラーゲンを構成しているアミノ酸やその合成に関わる成分を取ることも大切となります。グリシンはコラーゲンを構成しているアミノ酸の中で一番多く含まれてます。
肌(美肌)評価6
◆コラーゲン
こちらは真皮層のイラストです。ひし形の線部分がコラーゲンです。

コラーゲンは真皮の乾燥重量のうち70%を占め、肌のハリや弾力を生みだしています。若々しい肌を保つためになくてはならない成分です。
コラーゲンのアミノ酸組成の1/3を占めるのがグリシンです。
グリシンはコラーゲンを特徴づける3重らせん構造の形成に必須のアミノ酸です。
◆エラスチン
こちらは真皮層を拡大したイラストです。
ひし形の線部分がコラーゲンで、つなぎ目にあるのがエラスチンです。エラスチンはコラーゲンの網目状の部分を束ねコラーゲンを支える働きをしています。ベットで例えるとコラーゲンがマットレスでエラスチンがスプリングです。
エラスチンは真皮全体の5%程しかありません。ですが、エラスチンが不足するとコラーゲンの構造が崩れてしまうため、肌のハリや弾力を保つためにとても重要な成分です。
エラスチンは800個以上のアミノ酸から構成されています。グリシンはエラスチンのアミノ酸組成全体の約30%を占めています。最も多く含まれているアミノ酸です。
体型(筋肉)評価3.5
「筋トレ」で使われる主要なエネルギー源はクレアチンです。クレアチンは「強度の高い運動(無酸素運動)の筋収縮時」のエネルギー源として利用されます。
クレアチンが筋肉内に満たされていれば、トレーニングの質(筋トレ時に最大筋力を発揮できる)があがり、間接的な筋肉量の増加につながります。
クレアチンはアルギニン・グリシン・メチオニンから生合成されます。
①腎臓 L-アルギニン+グリシン → グアニジノ酢酸+L-オルニチン
②肝臓 グアニジノ酢酸+S-アデノシルメチオニン → クレアチン+S-アデニル₋L-ホモシステイン
①腎臓でアルギニンのアミジノ基がグリシンに転移することによりグアニジノ酢酸が生成されます。この反応を触媒する酵素はグリシンアミジノトランスフェラーゼです。
②肝臓でグアニジノ酢酸にS-アデノシルメチオニンのメチル基が供与されクレアチンが生成されます。この反応を触媒する酵素はグアニジノ酢酸メチルトランスフェラーゼです。
※①に膵臓も関与しています。
※S-アデノシルメチオニンはメチオニンから生成されます。
体力(普段)評価3.5
グリシンには血管を拡張させ末端の熱の放出を促し深部体温を下げる働き・ノンレム睡眠の時間を増やす働きがあります。
深部体温を下げることにより自然な眠りに導かれます。ノンレム睡眠の時間を増やすことは熟睡感を得ることができます。つまるところグリシンを摂取することで睡眠の質が改善されます。
質の良い睡眠をとり、疲労回復につなげるといった意味で、普段の体力に貢献しているといえます。
その他(抗酸化)評価5.5
グルタチオンは水溶性の抗酸化物質です。細胞質基質や血漿中で活性酸素を除去する働きをします。
グルタチオン自身が抗酸化物質として働きます。そして体内にある抗酸化酵素グルタチオンペルオキシターゼの触媒反応の基質としても機能します。
またビタミンCを還元する作用があります。ビタミンCは自身が酸化されることで抗酸化作用を発揮しますが、グルタチオンはその力を再生させます。
グルタチオンはグルタミン酸・システイン・グリシンからなるトリペプチドです。
この3つのアミノ酸を原料に酵素(γ-グルタミルシステイン合成酵素とグルタチオン合成酵素)の働きによって2段階で生合成されます。