MCTオイルの評価 A+
MCTオイル
MCTオイルとは中鎖脂肪酸100%の油のことをいいます。MCTは中鎖脂肪酸の英語表記【Medium Chain Triglyceride】の頭文字を取った略語です。
MCTオイルはココナッツやパームフルーツといったヤシ科の植物の種子から中鎖脂肪酸のみを抽出したオイルです。
一般的なMCTオイルの脂肪酸組成はカプリル酸 約60%、カプリン酸 約40%で構成されていることが多いです。
※メーカーによりけり
MCTオイル=中鎖脂肪酸です。
なので「中鎖脂肪酸」を説明します。
その前に前提知識として脂質・脂肪酸・脂質(脂肪酸の働き)・不飽和脂肪酸の働きについて簡単に説明します。
脂質
脂質とは水に溶けず、有機溶媒に溶ける性質をもつ化合物の総称のことです。脂質は化学構造の違いにより大きく単純脂質と複合脂質と誘導脂質の3つに分けられます。
- 単純脂質
脂肪酸と各種アルコールのエステル
例 中性脂肪、ロウ - 複合脂質
単純脂質にリン酸、糖などが結合したもの
例 リン脂質、糖脂質、リポたんぱく質 - 誘導脂質
単純脂質や複合脂質の加水分解や合成で生じるもの
例 ステロール類、脂溶性ビタミン類、脂肪酸
脂肪酸
脂肪酸は脂質の主要構成成分で、脂質の性質を決定づける重要な要素となります。
脂肪酸は炭素(C)、水素(H)、酸素(O)が鎖状につながった形をしています。炭素と水素が鎖状につながったもの(炭化水素鎖)の端にメチル基(CH3-)、もう一方の端にはカルボキシル末端(-COOH)が結合しています。
脂肪酸は炭素の数、つながり方【炭化水素鎖中の二重結合(C=C)の有無、二重結合の数、二重結合の位置】により種類わけされており、その性質が異なります。
脂肪酸は大別すると飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸にわけられます。
飽和脂肪酸は短鎖・中鎖・長鎖脂肪酸に分類されます。
不飽和脂肪酸はすべて長鎖脂肪酸です。そして二重結合の数・位置により一価不飽和脂肪酸(=n-9系脂肪酸)、多価不飽和脂肪酸(=n-3系脂肪酸、n-6系脂肪酸)に分類されます。
- 短鎖脂肪酸
炭素数 6個以下 - 中鎖脂肪酸
炭素数 8~12個 - 長鎖脂肪酸
炭素数 14以上
※数字は書籍やサイトによりけり
- 飽和脂肪酸
二重結合なし - 不飽和脂肪酸
二重結合あり
- 一価不飽和脂肪酸
二重結合が1個 - 多価不飽和脂肪酸
二重結合が2個以上
- n-3系脂肪酸(ω-3脂肪酸)
メチル基末端から数えて3個目の炭素に最初の二重結合がある - n-6系脂肪酸(ω-6脂肪酸)
メチル基末端から数えて6個目の炭素に最初の二重結合がある - n-9系脂肪酸(ω-9脂肪酸)
メチル基末端から数えて9個目の炭素に二重結合がある
※ここでは一価不飽和脂肪酸=n-9系脂肪酸、多価不飽和脂肪酸=n-3系脂肪酸、n-6系脂肪酸と捉えてください
脂質(脂肪酸)の働き
脂質の主な働きはエネルギー源・細胞膜の材料・ホルモンの原料の3つです。
これを前提として不飽和脂肪酸・不飽和脂肪酸の働き及び特徴を簡単にまとめると以下になります。
- エネルギー源
- 細胞膜の材料
特徴
- 常温で個体
- 動物性の油に多い
- 酸化しにくい
- 取り過ぎると血液中の中性脂肪やコレストロールを増やす
- エネルギー源
- 細胞膜の材料
- ホルモンの原料
特徴
- 常温で液体
- 植物性の油に多い
- 酸化しやすい
- 血液中の中性脂肪やコレストロールを低下させる
なので、上記が必ずしもあてはまるわけではありません。例えば不飽和脂肪酸の一価は多価に比べると酸化しにくい脂肪酸です。
飽和脂肪酸は主にエネルギー源として、不飽和脂肪酸は主に生理活性物質およびその前駆体として「脂質」の役割を果たす といえます。
飽和脂肪酸の働き
脂質の主な働きはエネルギー源・細胞膜の材料・ホルモンの原料の3つです。脂質のうち主に飽和脂肪酸がエネルギー源として利用されます。
脂質は少ない量で多くのエネルギーを蓄えることができる効率的なエネルギー源です。
糖質・たんぱく質 1g=4kcal
なので脂肪酸のうち第一のエネルギー源となる飽和脂肪酸は効率的なエネルギー源のもとと捉えることが出来ます。
一方で、肝臓で中性脂肪やコレストロールに合成されるため過剰になると肥満や病気を招きやすいといった欠点もあります。
世間では「飽和脂肪酸を多くとること」は一括りに「悪」とされていますが、飽和脂肪酸の中には積極的にとるべき脂肪酸があります。
それが中鎖脂肪酸です。
中鎖脂肪酸について
中鎖脂肪酸は飽和脂肪酸に分類されますが、長鎖脂肪酸と異なる特徴や働きがございます。
中鎖脂肪酸は長鎖脂肪酸と比べると炭素数が約半分となります。
引用元
体脂肪になりにくい 中鎖脂肪酸
MCTサロン 日清オイリオグループ(株)
このことが代謝経路や消化吸収速度などの「違い」を生み出します。
出典:Am.J.Clin.Nutr.1982;36:950-962より作図
体脂肪になりにくい 中鎖脂肪酸
MCTサロン 日清オイリオグループ(株)より引用
各々の違い(特徴)を簡単にまとめると以下になります。
- 炭素数14~
- 水に溶けにくいため胆汁酸によってミセルを形成しなければならない。
- 小腸から消化、吸収された後にリンパ管や静脈を通って全身に運ばれる。
- 脂肪組織や筋肉や肝臓などに蓄積され、エネルギーが必要な時にβ酸化を受け分解される。
- β酸化される(ミトコンドリア内に入る)にはカルニチンとの結合が必要となる。
- 炭素数8~12
- 胆汁酸によるミセル化が不要である。
- 小腸から門脈経由で直接肝臓に運ばれる。
- 肝臓に到着すると素早くβ酸化を受け分解される。
- カルニチンと結合せずともミトコンドリア内に輸送される
これら「違い」により中鎖脂肪酸は長鎖脂肪酸と比較して
- 4~5倍の速さでエネルギーとして利用されます。
- 体脂肪として蓄積されにくくなります。
- ケトン体の生成を促進させます。
特に注目は「ケトン体の生成を促進させる」です。これに関して効果・効能で詳しく説明します。
MCTオイルの効果・効能
ケトン体
中鎖脂肪酸は、「体内で糖質が枯渇していなくてもケトン体を作り出す働きをする」成分です。
この仕組みについて順を追って説明したいと思います。
初歩の話からスタートしますが、ご了承ください。
3大栄養素のエネルギー源として利用される順番は【①糖質→②脂質→③たんぱく質】です。
体内に糖質が不足してくると脂質がエネルギーとして利用されるようになります。
筋肉の中の糖質【筋グリコーゲン】→血中の糖質→血中の遊離脂肪酸→蓄積された脂肪酸【体脂肪】の順で利用されていきます。
「脂肪酸をエネルギーとして利用すること」は「脂肪酸(遊離および体脂肪が分解して生じた)をATPに変換させること」です。
その流れを簡単に説明すると以下になります。
①β酸化
脂肪酸はカルニチンと結合してミトコンドリア内に輸送されβ酸化を受ける
②TCA回路
アセチルCoAに変換されてTCA回路に組み込まれる
アセチルCoAがオキサロ酢酸と縮合反応しクエン酸となり、8種類の酸に次々と変化する。アセチルCoAは酸化され二酸化炭素となり、NADH FADH₂を産生する。
③電子伝達系
NADH FADH₂を電子伝達系の電子伝達体に供与することで 酸化的リン酸化が起こり たくさんのATPが生成される。
体内で糖質が減ってくると脂質(脂肪酸)はこのような流れを経てエネルギーに変換されます。
さて 脂質(脂肪酸)→エネルギー にはもう一つのルートがございます。
それがケトン体です。
糖質を絶食しているとき脂肪酸のうち一部がケトン体という物質に変わります。
このケトン体もエネルギーとして利用することができます(肝臓・赤血球以外で)。
ケトン体の生成メカニズムは以下となります。
糖質を絶食している=体内にグルコースが枯渇している時には糖新生が行われます。
糖新生とは糖原性アミノ酸、ピルビン酸、乳酸、TCA回路の中間体 などからグルコースを作り出す経路です。
オキサロ酢酸は糖新生にも利用されます。そのためオキサロ酢酸が不足してきます。
TCA回路の最初の反応はアセチルCoAがオキサロ酢酸と縮合反応することです。
なのでオキサロ酢酸が十分に存在することがTCA回路をスムーズに回転させる前提となります。
アセチルCoAは【オキサロ酢酸が不足しているため】TCA回路に組み込まれなくなります。つまるところアセチルCoAが余剰になります。
余剰になったアセチルCoAの一部は 肝臓のミトコンドリアでアセトアセチルCoAと縮合したあと、ヒドロキシメチルグルタリルCoAを経てアセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸、アセトンなど「ケトン体」に作り変えられます。
生成されたケトン体(アセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸)は血液の流れにより骨格筋・心臓・腎臓・脳などの組織に運ばれ、再びアセチルCoAに変換されてTCA回路に組み込まれエネルギーに利用されます。
特に脳にとってはケトン体は糖質が枯渇したときの唯一のエネルギー源となります。
脂肪酸→ケトン体の代謝経路はケトン体回路と呼ばれています。
糖質制限などを行い ケトン体回路が活発になる(ケトジェニック状態)とエネルギー源としてケトン体の合成が促進されます。
「ケトン体の合成が促進される」これはつまるところ「体脂肪が次々に分解され、遊離脂肪酸が放出され、肝臓でケトン体が合成される」という意味です。
ケトンちゃんの良いとこ、悪いとこを発表するよ~
- ケトン体は肝臓以外の組織のエネルギー源となる
ケトン体(アセト酢酸、b-ヒドロキシ酪酸)は血液の流れにより骨格筋・心臓・腎臓などの組織に運ばれ、再びアセチルCoAに変換されてTCA回路に組み込まれエネルギー生成に利用されます。 - ケトン体は脳のエネルギー源となる。
ケトン体は水溶性物質です。そのため血液脳関門を通過できます。飢餓時および糖尿病などで脳のエネルギー源としてグルコースが利用できない場合に、ケトン体が代わりに利用されます。ケトン体は糖質が枯渇したときの脳の唯一のエネルギー源です。
- ケトアシドーシス
血液のpHが酸性に傾いた状態をアシドーシスと言います。アシドーシスになると意識障害、昏睡をきたし、最悪の場合死に至ることもあります。
ケトン体が過剰になると血液が酸性に傾きます。ケトン体の過剰によるアシドーシスをケトアシドーシスと言います。 - ケトン臭
ケトン体は血液の中に増えると、呼気、汗などで排出されるようになります。その結果、吐く息、体臭が果物が腐ったような臭いになります。この臭いのもととなるのはケトン体(アセトン)です。ダイエットをし過ぎると口や体から臭いを発します。そのためダイエット臭とも呼ばれます。
口臭や体臭が臭くなる!?
ケトン体を作りすぎる(≒ダイエットをやり過ぎる)のも よくないのよ~
ケトジェネックの状態(ケトン体回路が活発になる)にもっていくためには とにかく糖質を減らす必要があります。
単に減らすのではなく極端に減らす必要があります。
例えば糖質の1日の目安摂取量は約300gとなっていますが、これを1/5である60gまで減らすことでケトン体回路が動き始めると言われています。
※糖質の1日の目安摂取量は年齢や性別、活動状況によりけり
さて厳しい糖質制限を実行する&それを続けることはなかなか難しいといえます。この厳しい糖質制限の「制限」を緩和する働きをするのが中鎖脂肪酸です。
摂取した中鎖脂肪酸は大部分はミトコンドリアのマトリックスに運ばれβ酸化を受けてアセチルCoAに代謝されます。このアセチルCoAは主にTCA回路に組み込まれエネルギー源となる or ケトン体生成経路に向かいケトン体になります。
簡単にいうと中鎖脂肪酸は、「体内で糖質が枯渇していなくてもケトン体を作り出す働きをする」成分です。
中鎖脂肪酸といえばMCTオイル
MCTオイルは中鎖脂肪酸100%油です。
MCTオイルの摂取はケトン体の生成を促進させます。
なので厳しい糖質制限を課せずとも、そこそこの糖質制限+MCTオイルの摂取で効率的に脂肪を燃焼させることができます。
体内の糖質を減らす=糖質を取らないだけではありません。運動をして体内の糖質を枯渇させれば良い話です。
なので運動+MCTオイルの摂取を習慣化づければ、自然と太りにくい体質になります。
※実験内容
一晩絶食した後 MCTオイルとコーン油を体重1㎏あたりに1g摂取した場合の血中ケトン体量の比較
MCTオイルのサプリメントによくあるキャッチフレーズ集
- 元気なダイエット生活をサポート
- ケトン体ダイエットを目指している方の強い味方
- 糖質制限の一歩先をいくダイエットの必須アイテム
- エネルギー消費をサポートする脂肪酸
- 空腹感を気にしない毎日を
MCTオイルの摂取量
前提(脂質の目安摂取量)
脂肪エネルギー比率 20%以上~30%未満
飽和脂肪酸 7%以下
1日にとるエネルギー(カロリー)のうち脂質からを20%以上~30%未満にしてかつ飽和脂肪酸を7%以下に抑えましょうということです。対象年齢は20%以上~30%未満は1歳以上、7%以下は18歳以上です。
by 脂質のとりすぎに注意 農林水産省
年代によって脂質の摂取量は異なりますが、40~60g/1日が適正量といえます。
MCTオイルの目安摂取量
中鎖脂肪酸の目安摂取量たるものはありません。
こちらの日清オイリオさんのMCTサプリメントゼリーの目安摂取量は1本~3本となっています。1本=6gなので、6g~18gです。
この数値を一つの基準として食生活や目標度合(ダイエット目的で糖質制限をした場合)などで「量」を調整するのがよろしいかと思います。
MCTオイルの摂取例
MCTオイルの関連本
MCTオイルをかける・混ぜる食品例
- コーヒー
- サラダ
- ヨーグルト
- 味噌汁
MCTオイルのレーダーチャート解説
- 6
このカテゴリーに効果があることで有名。即効性があったり、継続して摂取することで効果を感じる - 5
このカテゴリーに効果があることで有名。継続して摂取することでなんとなく効果を感じる - 4
このカテゴリーに効果があるといわれている。効果が得られることを期待して飲んでいる - 3.5
このカテゴリーに効果があるといわれているが、個人的に摂取目的としていない - 3
このカテゴリーになんらかの効果があるもの - 2
このカテゴリーとはあまり関係ないと思われる - 1
このカテゴリーとは関係ないと思われる
※4以上が摂取目的となっているカテゴリー
MCTオイル 総合評価 A+ 14.5
5つのカテゴリーのうち、評価が高い上位3つのカテゴリーを足したものです。「B~SS」でつけています。
SS 18点
S 16点以上
A+ 14点以上
A 12点以上
B+ 10点以上
B 9点以下
髪 評価 2.5
紫外線などの酸化ストレスにより頭皮はダメージを受けます。これは「髪の発育に関わる細胞の機能低下」や「頭皮環境を健やかにするコラーゲンの破壊」につながります。
ケトン体の1種 β-ヒドロキシ酪酸 には酸化ストレスを抑制する働きがあります。
MCTオイルにはケトン体の生成を促す作用があります。
肌 評価2.5
糖化とは「体内に余った糖質がたんぱく質とくっつき、たんぱく質を変性させAGEs(終末糖化産物)と呼ばれる物質が生成されること」をいいます。
よく活性酸素が体内に過剰に発生すること【=酸化】が、体が「サビ」ると例えられるのに対して、
AGEsが体内に蓄積されること【=糖化】は、体が「コゲ」ると例えられます。
AGEsは健康面のみならず美容面においても悪影響を与えます。
肌において、AGEsが増えコラーゲンの分子間にAGEsによる架橋(AGEs架橋)が形成されるとコラーゲンが破壊・変性されます。その結果、肌のハリ・弾力は失われシワ・たるみが生じやすくなります。
さてMCTオイルを飲めば抗糖化作用を得られるというわけではありません。ですが、「糖質制限」の手助けをする成分です。
糖質制限は抗糖化につながります。その手助けをするMCTオイルは抗糖化に役立つ成分といえそうです。
体型(ダイエット) 評価6
MCTオイル(中鎖脂肪酸)には体内で糖質が枯渇していなくてもケトン体を作り出す働きがあります。
ケトン体の合成が促進され一旦ケトン体回路が回りだす=ケトジェネック状態になると脂肪が面白いように燃え始めます。
MCTオイルを摂取する=痩せるではありませんが、【MCTオイル+糖質制限をする】や【MCTオイル+毎日運動をする】と効率的に体脂肪を減らすことが可能となります。
体力(普段) 評価6
脂質は3大栄養素の中で最も効率の良いエネルギー源です。脂質のうちエネルギー源となるのは脂肪酸です。うち飽和脂肪酸が主要なエネルギー源です。
中鎖脂肪酸は長鎖脂肪酸と比べ4~5倍の速さでエネルギーとして利用されます。また脂肪として蓄積されにくいといった特徴もあります。エネルギー源としてベストな成分といえます。MCTオイルは中鎖脂肪酸100%のオイルです。
その他(抗酸化)評価3
ケトン体には、アセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸、アセトンなどがあります。ケトン体のうちβ-ヒドロキシ酪酸には抗酸化作用があります。
短距離走や筋トレなど高強度の運動ではエネルギーとして糖質が
ジョギング・ウォーキングなどの有酸素運動では糖質→脂質の順で使われるよ