EPA

EPAの評価 S


EPA

EPAとはEicosapentaenoic acidの頭文字を取った略称で、エイコサペンタエン酸のことをいいます。
魚油中に多く含まれている脂肪酸です。

EPAは、脂肪酸不飽和脂肪酸多価不飽和脂肪酸で、うちn-3系に分類されます。

 

EPAの説明に入る前に、前提知識として脂質、脂肪酸について簡単に説明します。

脂質とは

脂質とは水に溶けず、有機溶媒に溶ける性質をもつ化合物の総称のことです。
脂質は化学構造の違いにより、大きく単純脂質複合脂質誘導脂質の3つに分けられます。

  • 単純脂質
    脂肪酸と各種アルコールのエステル

    例 中性脂肪
    、ロウ
  • 複合脂質
    単純脂質にリン酸、糖などが結合したもの

    例 リン脂質
    、糖脂質、リポたんぱく質
  • 誘導脂質
    単純脂質や複合脂質の加水分解や合成で生じるもの

    例 ステロール類
    、脂溶性ビタミン類、脂肪酸

.
ざっくりな分け方をする(上 赤太文字)と、脂質は中性脂肪、リン脂質、コレステロールの3つに分けられます。それぞれ体の中で重要な役割を果たしています。

中性脂肪は必要に応じて、脂肪酸に分解されエネルギー源になります。
リン脂質とコレストロールは細胞膜の材料となります。
コレストロールはホルモン・胆汁酸・ビタミンDの原料となります。

脂肪酸

脂肪酸は、脂質の主要構成成分で、脂質の性質を決定づける重要な要素となります。
脂質の性質=油や脂の性質です。


出典元
すぐにわかるトランス脂肪酸
農林水産省

油脂の性質は脂肪酸の種類により決まります。

 

脂肪酸は、炭素(C)水素(H)酸素(O)が鎖状につながった形をしています。

炭素と水素が鎖状につながったもの(炭化水素鎖)の端にメチル基(CH3-)、もう一方の端にはカルボキシル末端(-COOH)が結合しています。

脂肪酸は炭素の数つながり方【炭化水素鎖中の二重結合(C=C)の有無、二重結合の数、二重結合の位置】により、下記の出典元のように種類わけされています。


出典元
脂質とEPA
EPA(イコサペント酸)について
エパデールT
商品情報サイト 大正製薬(株)

右端の絵🧴🐡は、その脂肪酸が多く含まれている油(の性質)や脂です。

油脂は、1種類の脂肪酸のみで構成されているわけではありません。複数の脂肪酸で構成されています。
その組成により、油脂の種類が決定されます。
🐡に多く含まれているのは EPA  DHA ということになります。

こちらの出典元を使用して、脂肪酸の種類を説明しつつ、EPAを説明していきます。

あみだ形式(出典元の赤ライン)で最終的に EPA にたどり着く形で、脂肪酸の種類を説明しつつ、EPAを説明していきます。

 

EPAの説明スタート

EPAの構造式はこちらです。


出典元
エイコサペンタエン酸
ウィキペディア

先の出典元この構造式を照らし合わせながら、説明を聞いてください。

 

①二重結合(C=C)の有無

脂肪酸は二重結合の有無により、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分かれます。

二重結合の有無

  • 飽和脂肪酸
    二重結合なし

  • 不飽和脂肪酸
    二重結合あり

EPAは二重結合があるので、不飽和脂肪酸に分類されます。

 

②二重結合の数

不飽和脂肪酸は二重結合の数により、一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸に分かれます。

二重結合の数

  • 一価不飽和脂肪酸
    二重結合が1個
  • 多価不飽和脂肪酸
    二重結合が2個以上

EPAは二重結合が5つあるので、多価不飽和脂肪酸に分類されます。

 

③二重結合の位置

多価不飽和脂肪酸は二重結合の位置により、次の2つに分けられます。

[/aside]二重結合の位置

  • n-3系脂肪酸(ω-3脂肪酸)
    メチル基末端から数えて3個目の炭素に最初の二重結合がある

  • n-6系脂肪酸(ω-6脂肪酸)
    メチル基末端から数えて6個目の炭素に最初の二重結合がある



出典元
エイコサペンタエン酸
ウィキペディア

EPAはメチル基末端から数えて3個目の炭素に最初の二重結合があるので、n-3系脂肪酸(ω-3脂肪酸)に分類されます。

ということで、無事 EPA に到着しました。

というわけで、EPAは、脂肪酸不飽和脂肪酸多価不飽和脂肪酸で、うちn-3系に分類されます。
※以降、下線部はω3系で統一します。

ω3系およびEPAのアレコレ

◆ω3系は

体内で合成できない必須脂肪酸です。

ω3系は大きくわけて
食用調理油由来α-リノレン酸
魚油由来EPA・DHAなど
から摂取できます。

ちなみにα-リノレン酸が多く含まれる油はアマニ油えごま油シソ油です。
これら油の脂肪酸組成の約6割はα-リノレン酸で占められています。

 

◆ω3系の総摂取量の約6割はα-リノレン酸

日本人が摂取する総ω3系の約55~58%を占めているのが、α-リノレン酸です。


出典元
1-3 脂質
P129 PDF3/25
厚生労働省

残りは主にDHA・EPAです。
およその比率はDHA:EPA=1.7:1の割合で、DHAのほうを多く摂取しています。

数字の出所

α-リノレン酸÷総ω3で計算

男 1.62÷2.95=55
女 1.43÷2.45=58

DHA:EPAで比率計算
男 0.66:0.39=1.692:1
女 0.51:0.30=1.7:1

 

◆α-リノレン酸はEPAやDHAのもと

α-リノレン酸は体内に取り入れられたあと、EPADHAに代謝されます

α-リノレン酸ステアリドン酸EPADPADHA

 

※代謝経路は一部省略しています。
※EPAからDPAを経由しないでDHAに変換される経路もあるので代謝経路は2つと考えてください。

ω3系の代謝経路を図にすると以下になります。出典元向かって左側です。


出典元
α-リノレン酸
ウィキペディア

なのでα-リノレン酸を摂取することで、EPAやDHAの有する「効果」を得ることができます。

◆あまり期待しないほうがよい

だだし「ある程度」という枕詞を付け加える必要があります。
というのも、その転換率は10~15%とされているからです。

このようにヒトを含めた多くの動物は体内でα-リノレン酸を原料としてEPAやDHAを生産することができるが、α-リノレン酸からEPAやDHAに変換される割合は10-15%程度である

引用元
α-リノレン酸
ウィキペディア

転換率は性別や年齢により差があるとの報告もあり、一般的に女性より男性のほうが低いとされています。また食事も転換率に影響を及ぼすとされています。ω6系であるリノール酸の多い食事はα-リノレン酸の転換率を下げるとされています。

というわけで、転換率は10~15%よりもっと低い【→非常に低い】とも言われています。
特にDHAには極わずかしか転換しないと言われています。

いずれにしても,α-リノレン酸から長鎖n-3系脂肪酸への転換効率は非常に低いと考えられ,上記EFAとしての α-リノレン酸の最小必要量の妥当性については更に検討する必要がある。

引用元
n-3系多価不飽和脂肪酸の生理的有効性と栄養学的側面からみた安全性評価
P4/18
J-STAGE

 

◆EPA・DHAは魚やサプリで

EPAやDHAの有する「効果」をしっかりと得たいのであれば、EPAやDHAは魚やサプリから直接とるようにしてください。

 

より血液サラサラを求めるなら

DHAとEPAの働きの違いに関しては、さほど気にすることはないと思います。

同じω3系で、構造式もよく似ているため、同じ働きをすることが多いからです。
また、魚から取るにしても、サプリから取るにしても、ほぼほぼ一緒に含まれているからです。

ただ「効力」に差はあります。

例えば

  • 脳の健康・目の健康 → DHAのほうが上
  • 抗炎症作用・抗血栓作用 → EPAのほうが上

です(と思われます)。

上記の働きのうち、どちらかをより得たいと考えた場合は、一方が より多く含まれている魚やサプリを選択するのがよろしいかと思います。

 

 

DHA・EPAにサプリによくある謳い文句「血液サラサラ」をより得たいと考えた場合は、EPAが多く含まれているものを選択するのがよろしいかと思います。

以上より、循環器系(血液や血管)の健康維持のために欠かせない、いわゆる血液サラサラ効果が明確なEPAは大人に、脳の構成成分であるDHAは成長期の子供におすすめであるといえます。

引用元
EPAとDHAの違いは?
EPAとは?
サラサラ生活向上委員会
日本水産(株)

 

個人的にはEPA重視

個人的に、ω3サプリはEPAが多く含まれているものを選択しています。

ナウフーズのオメガ3シリーズを愛用しています。ナウフーズのオメガ3シリーズはEPAのほうが多く含まれています。

自身がEPAを重視している理由をいくつか挙げます。

 

◆理由
EPA→DHA

ω3系はα-リノレン酸を出発物質として

α-リノレン酸ステアリドン酸EPADPADHA

※一部省略

といった感じに代謝されていきます。
ということで、EPAの一部がDHAに代謝されるので、「EPAさえ取れば、体内でDHAもある程度は増える」ことになります。

食生活でEPAを狙ってEPAの多い食品を摂っていればDHAが欠乏することはありませんが、DHAだけを狙って摂っているとEPAが不足する恐れがあります。

引用元
EPAとDHAの違いは?
EPAとは?
サラサラ生活向上委員会
日本水産(株)

◆理由
魚にはDHAのほうが多い

【ω3系およびEPAのアレコレ】の段落で、ω3系の総摂取量の約6割はα-リノレン酸、残りはDHA/EPAで、その比率はDHA:EPA=1.7:1と説明しました。

DHAの比率が多い理由は、「たいがいの魚にはDHAのほうが多く含まれている」からです。

一例をあげるとこんな感じです。

さんま
DHA:EPA=1600:850

マグロ(脂身)
DHA:EPA=3200:1400

サバ
DHA:EPA=2300:1600

単位 mg/魚肉(生)可食部100gあたり

ということで、通常の食生活では、意識せずともDHAのほうが取れているので、サプリではEPAが多いのを選んでいます。

 

◆理由
EPA/AA比

脂質メディエーターとは生理活性をもつ脂質のことをいいます。
※メディエーター(Mediator)は仲介役という意味です。

ω6系とω3系は脂質メディエーターとして生体内で重要な役割を果たしています。
ただしω6系とω3系は拮抗して作用します。


出典元
α-リノレン酸
ウィキペディア

 
ω6系

ω6系のアラキドン酸は、過剰に存在すると、エノコサイド【プロスタグランジンやロイコトリエン】といった炎症を起こす物質に代謝されます。

ということで、ω6系からは炎症を誘導する脂質メディエーターが産生されます。

出典元アラキドン酸から派生しているピンク炎症を促進する物質と考えてください

 
ω3系

ω3系はα-リノレン酸を出発物質としています。

α-リノレン酸ステアリドン酸EPADPADHA
といった代謝を経ていきます(一部省略)。

ω3系のEPAやDHAからレゾルビンプロテクチンと呼ばれる物質が作られます。この2つの物質はエノコサイド【プロスタグランジンやロイコトリエン】といった炎症を起こす物質の働きを抑制してくれる働きをします。

ということで、ω3系からは炎症を抑制する脂質メディエーターが産生されます。

なお、EPAからもエノコサイドが産生されます。EPA由来のエノコサイドは、【アラキドン酸由来に対して拮抗的に作用する、または(アラキドン酸由来と比べて)活性が弱い or 活性がない】です。

出典元EPAから派生している水色EPA由来のエノコサイドまたは炎症を抑制している働きを意味していると捉えてください。

.
もう一度、出典元をご覧ください。

代謝を触媒する酵素はω3系とω6系と共通となっています。

さきほど「ω6系とω3系は拮抗して作用」と説明しましたが、「拮抗」とは、これら「酵素を奪い合う」といった感じです。

体内で片方が多いもう片方の代謝(変換)が抑制されてしまいます。

 

現在、新しい動脈硬化の指数としてEPA/AA比というものがあります。AAはアラキドン酸のことです。

  • この比率が低い(EPAが低値でAAが高値)と心筋梗塞や脳梗塞になりやすい
  • この比率が高い(EPAが高値でAAが低値)と心筋梗塞や脳梗塞になりにくい

.
とされます。

 

これ、実際に調査データで証明されています。

デンマーク人に比べて、先住民族のイヌイットは 心臓病による死亡率が有意に低いという話を耳にしたことございませんか?

1970年代に本土のデンマークとグリーンランドのイヌイットの食事内容と心臓病による死亡率を調査した結果がコチラです。


出典元
EPAの効果
EPA(イコサペント酸)について
エパデールT
商品情報サイト 大正製薬(株)

イヌイットはデンマーク人と同程度の脂肪を摂取していたにも関わらず、心臓病による死亡率が圧倒的に低いことが分かります。

主たる理由は、イヌイットが摂取している脂肪の脂肪酸の割合が【EPAが多く、アラキドン酸が少ない】からです。

 

食事内容の円グラフをご覧の通り、「脂肪」の割合はたいして変わりません。
ただし、脂肪の性質が大きく異なります。

イヌイットの食生活は魚およびアザラシなどの海獣の肉です。

魚にはEPAが豊富に含まれていることは言うまでもありません。
アザラシの肉には、肉なのにEPAが含まれています。理由はアザラシが【EPAを含む】魚を餌にしているからです。


ということで、イヌイットは脂肪を【EPAが豊富な】魚【EPAを含む】アザラシから摂取しているから、心臓病による死亡率が圧倒的に低いとされています。

というわけで、EPAを意識的に多く取り、アラキドン酸を控えることが「健康」につながる です。

 

ここでの結論

「サプリは個人的にはEPA重視です」
と言いましたが、オメガ3サプリであれば、EPA・DHAどちらが多いかはさして気にする必要はないと思います。

それだったら、今までの話の流れは???になってしまいますが・・・
逆に、DHAが多くて良い理由もあるからです。
理由は、ω3系の代謝にあります。

ω3系はα-リノレン酸を出発物質に以下のように代謝されます。

α-リノレン酸ステアリドン酸EPADPADHA

※一部省略

α-リノレン酸からEPA・DHAにわずかながら転換されるわけですが、
感覚的にはEPAはわずかDHAは極わずかです。

ということで、DHAは体内でほぼ作られないと考えれば、「DHAが多く含まれているものを取る」も、まったくもってアリといえます。

 

 

EPAの効果・効能

血中中性脂肪低下作用

こちらのグラフをご覧ください。

日本臨床栄養学会雑誌33(3.4):120-135,2011

出典元
中性脂肪にEPA 検診結果が気になる方に!
サラサラ生活向上委員会
日本水産(株)

これ(実験内容)は

対象者を無作為にEPA含有飲料対照飲料(オリーブ油配合飲料)を飲むグループに分けて、1日600㎎12週間飲んでもらった後に、血中中性脂肪値の変化値をあらわしたグラフです。

※対象者・・・血中中性脂肪値120-200mg/dlを中心としたボランティア

実験内容  

参照
中性脂肪にEPA 検診結果が気になる方に!
サラサラ生活向上委員会
日本水産(株)

イマークステックゼリー
日本水産(株)

イマークスティックゼリーでは摂取量はEPA・DHA860㎎となっています。その配分の記載がありませんが、商品の成分表示はEPA600㎎:DHA260㎎となっていることからEPA600㎎で実験が行われたと考えてよいと思われます。

EPAを飲んだグループは、中性脂肪値が約20%低下していることが判明しています。
ということで、EPAに血中中性脂肪低下作用があります。

 

EPAに血中中性脂肪低下作用があるのはEPAに以下の働きがあるからと考えられます。

①脂肪酸合成系酵素の遺伝子の発現を減少させる
SREBP-1cのプロモーター活性を減少させることで

②β酸化系に関わる酵素の遺伝子の発現を増やす
PPARαのリガンドとして機能することで

.
ここでの「SREBP-1cとはPPARαとは」の説明は省略します。
SREBP-1cとはPPARαについては、こちら【→DHA 血中中性脂肪低下作用】に記載していますのでよろしければご覧ください。

個人的には、作用機序とかメカニズムとか深く考えずに
とにもかくにも、EPAに血中中性脂肪低下作用があるでいいと思います。

脂肪燃焼促進作用

EPAは血中に限らず、体内に蓄積された中性脂肪(皮下脂肪や内臓脂肪)を減らす働きがあります。
EPAにはUCP-1の発現を増やす作用があるからです。

UCP-1の説明に入る前に、まずは脂肪細胞を説明します。

 

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脂肪細胞は細胞質に糖質や脂質を中性脂肪として蓄える袋(脂肪滴と呼ばれる)をもった細胞です。

脂肪細胞

緑→ミトコンドリア 
赤→核 
黄→脂肪滴

脂肪細胞には大きな脂肪滴が1つある白色脂肪細胞
中小の脂肪滴ミトコンドリアが多数存在する褐色脂肪細胞の2種類があります。

  • 白色脂肪細胞
    .

    余剰となったエネルギーを脂肪として蓄積する
    &必要時に血液中に遊離脂肪酸として放出する役割を果たします。
  • 褐色脂肪細胞
    .

    白色脂肪細胞から遊離された脂肪酸を取り込み、エネルギーに変換
    します。
    ※ミトコンドリアは鉄を含んでいます。ミトコンドリアが多くあるため褐色に見えます。

.
ここで、UCP-1が登場します。
褐色脂肪細胞の作用【白色脂肪細胞から遊離された脂肪酸を取り込み、エネルギーに変換する】は、褐色脂肪細胞のミトコンドリア内膜に特異的に存在するUCP-1によるものです。

UCP(脱共役たんぱく質)

ミトコンドリアの内膜に存在するたんぱく質です。酸化的リン酸化のエネルギーを生成する前に ミトコンドリア内膜での酸化的リン酸化反応を脱共役させ、エネルギーをATPとしてでなく熱として散逸させることができるたんぱく質です。Uncoupling proteinの頭文字を取ってUCPと略します。
哺乳動物UCPは5種類のアイソフォーム(UCP-1~UCP-5)が知られています。分布する場所は異なっています。

UCP-1は通常、褐色脂肪細胞のみ発現します。

最近の研究により、第3の脂肪細胞が存在することが明らかになっています。

それがベージュ脂肪細胞と呼ばれるものです。


出典元
第6回 3色の脂肪 予防医学としての食を学ぶ
インターネット公開文化講座
愛知県共済生活協同組合

ベージュ脂肪細胞とは白色脂肪細胞が「褐色化」し、UCP-1が発現、褐色脂肪細胞と同じようにエネルギー消費能をもつ脂肪細胞のことをいいます。
ベージュ脂肪細胞は、常温では白色脂肪細胞ですが、寒冷刺激などにより「褐色化」します。

ということで

UCP-1の発現が増える(褐色脂肪細胞で or 白色脂肪細胞で=ベージュ脂肪細胞が増える)と脂肪を分解してできたエネルギーが【ATPを介せず】直接熱に変換され散逸消費されていく
ことになります。

これは次のように言い換えることができます。

UCP-1の発現が増える(褐色脂肪細胞で or 白色脂肪細胞で=ベージュ脂肪細胞が増える)と脂肪細胞の代謝が活発になって【体温が上昇し】脂肪が勝手に燃焼されていく

動物実験により、EPAには褐色脂肪組織および白色脂肪組織でUCP-1の発現を増やすことが確認されています。

参照
魚油摂取は交感神経を介して、「脂肪燃焼細胞」を増やす-「魚油」の効果で体脂肪燃焼を促す新メカニズムを解明
研究成果
京都大学

 

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GLP-1分泌促進作用

GLP-1は代表的なインクレチン(インスリンの分泌を促す働きをもつ消化官ホルモンの総称)です。GLP-1は消化官内に栄養素が流入すると消化官粘膜上皮から分泌されます。

GLP-1を分泌させることは肥満予防につながります
GLP-1には次の3つの働きがあるからです。

  • 血糖値の上昇を抑える
    GLP-1はすい臓に作用し【血糖値を下げる】インスリンの分泌を促進させます。また【血糖値を上げる】グルカゴンの分泌を抑制します。
    なおGLP-1のインスリン分泌促進作用は血液中のグルコース濃度の上昇に応じて行われます。
    つまり血糖値が高い場合のみインスリンの分泌を増やします。
  • 胃からの排出物を遅くする
    GLP-1には摂取した食物の胃からの排出を遅らせる作用があります。この作用により糖が腸でゆっくりと吸収されるようになります。なのでGLP-1を活発に分泌させれば食後の血糖値の上昇がゆるやかになります。その結果、食事をしても太りにくくなります。
  • 食欲を抑える
    脳の視床下部には、空腹を感じる「摂食中枢」と満腹を感じる「満腹中枢」が存在します。摂食中枢が刺激されれば空腹感を、満腹中枢が刺激されれば満腹感を感じるようになります。GLP-1が多く分泌されると満腹中枢が刺激されます。満腹感を高め、食欲を抑える作用があります。

このような働きをするGLP-1はメディアでは「やせるホルモン」と呼ばれています。

 

GLP-1が分泌される場所はL細胞です。

L細胞


L細胞は小腸(下部)および大腸に存在します。
L細胞には「EPAを受け入れる受容体」が存在しており、EPAが結合するとL細胞を刺激します。

つまるところEPAを摂取すると、L細胞よりGLP-1の分泌が増えるようになります。

 

 

前の【より血液サラサラを求めるなら】で

  • 脳の健康・目の健康 → DHAのほうが上
  • 抗炎症作用・抗血栓作用 → EPAのほうが上

と記載しました。脳の健康・目の健康に関してはDHAのレビューに記載しています。よろしければご覧ください。

 

EPAのサプリメントによくあるキャッチフレーズ集

  • 血液をサラサラにする
  • 血液中の余分な脂肪分を取り除く
  • 積極的に摂取したい成分
  • カロリー、コレステロールが気になる方
  • さば缶ダイエットの主役成分

 

 

EPAの摂取量、不足、過剰

EPAの摂取量

目安摂取量
2g~2.4g
/日 成人男性
1.6g~2g/日 成人女性
ω3系脂肪酸としてです
※目安摂取量は年代により異なります

参照
日本人の食事摂取基準(2015年版)
 厚生労働省

 
EPAの不足
EPAは体内で作ることのできない必須脂肪酸です。不足は、生活習慣病のリスクを高めることになります。
 
EPAの過剰
DHA・EPAの摂取量に関して欧州では1日5g、アメリカでは1日3gの摂取でも特に問題ないとされています。

参照 Q&A DHA・EPA協議会

サプリなどで大量に取らない限り、過剰についてあまり心配する必要ないかもしれません。
ただし、トータル脂質の過剰に注意してください。肥満や病気につながります。
健康のためにω3系のDHA・EPAの摂取を増やした場合は、ω6系を減らす&飽和脂肪酸を減らすことが大切です。

なお、海外の論文にEPAを医薬品として大量に取ると死亡率がアップしたとの報告があります。

参照
サプリ過剰摂取は「死亡率」を引き上げていた
東洋経済オンライン

 

EPAの豆知識

脂肪酸の摂取比率

飽和脂肪酸の過剰摂取は動脈硬化のリスクを高めます。一方で不飽和脂肪酸の適量摂取は動脈硬化の予防になります。

現代の日本人の食生活においては 飽和脂肪酸を取り過ぎている&不飽和脂肪酸が不足しがちな 傾向があります。なので飽和脂肪酸を減らし、不飽和脂肪酸を増やすことが大切です。

とはいえ、飽和脂肪酸が不足、不飽和脂肪酸が過剰でも体にとってはマイナスとなります。摂取するバランスがとても重要です。

3大栄養素のうち脂質から摂取する比率は25%未満に抑えることを前提として

エネルギー産生栄養素バランス

脂肪酸の理想の摂取バランスは以下です。

飽和脂肪酸:一価不飽和脂肪酸:多価不飽和脂肪酸=3:4:3

多価不飽和脂肪酸のうち日本人が取りすぎている傾向があるのがω6系です。理由としては日本人がω6系のリノール酸をよく取るからです。
なので多価不飽和脂肪酸にも理想の摂取バランスがあります。

ω6系:ω3系=4:1

普段の食生活において、飽和脂肪酸とω6系の摂取を減らして、ω3系の摂取を増やすことを心掛けることが大切となります。

 
EPAの由来

EPAとはEicosapentaenoic acidの頭文字を取った略称で、エイコサペンタエン酸のことをいいます。
炭素数20、二重結合が5個のためエイコサペンタエン酸です。

ギリシャ語

20個(エイコ) 二重結合(エン) 5個(ペンタ)

 
痩せホルモン
EPAには、TVでたびたび取り上げられる痩せるホルモン「GLP-1」の分泌を促進させる働きがあります。
詳しくは効果・効能にて説明しています。

 

 

EPAと相性の良い栄養成分

・DHA

 

EPAのレーダーチャート解説

評価基準

  • 6 
    このカテゴリーに効果があることで有名。即効性があったり、継続して摂取することで効果を感じる
  • 5 
    このカテゴリーに効果があることで有名。継続して摂取することでなんとなく効果を感じる

  • このカテゴリーに効果があるといわれている。効果が得られることを期待して飲んでいる
  • 3.5 
    このカテゴリーに効果があるといわれているが、個人的に摂取目的としていない

  • このカテゴリーになんらかの効果があるもの

  • このカテゴリーとはあまり関係ないと思われる

  • このカテゴリーとは関係ないと思われる

※4以上が摂取目的となっているカテゴリー

 

 

 

EPA総合評価 S 17

 総合評価について
5つのカテゴリーのうち、評価が高い上位3つのカテゴリーを足したものです。「B~SS」でつけています。
SS  18点
S  16点以上
A+ 14点以上
A  12点以上
B+ 10点以上
B  9点以下

 髪(薄毛)評価4.5 
髪は毛母細胞が細胞分裂することで生まれ成長していきます。もう少し詳しくいうと毛細血管を通じて栄養素を受け取った毛乳頭が発毛の「シグナル」をだし、そのシグナルを受け取った毛母細胞が細胞分裂をすることで髪は生まれ育っていきます。

なので血流が悪くなると必要な栄養素が届かなくなり、健康な髪が育ちにくくなります。

血流の悪化【=血液ドロドロ】は血液中に中性脂肪やコレストロールが増加することによるところが大きいです。
脂質の代謝を改善する働きをするEPAは血液をサラサラにします。その結果、必要な栄養素が頭皮にしっかりと届くようになり健康的な髪が育ちやすくなります。

TVでよく髪の悩み(薄毛・白髪予防)にイワシやサバの缶詰の摂取をすすめていますが、それはイワシやサバに血液の流れを良くするEPAが多く含まれているからです。

TBS系列の健康番組「名医のTHE太鼓判!」で薄毛・白髪予防食としてイワシやサバが紹介されています。

50歳になったら 栄養の取り方を変えようSP 2018年7月放送

髪は健康のバロメーター! 薄毛・抜け毛・白髪 髪の悩み徹底解消スペシャル! 2019年2月放送

 

 

 肌(美白)評価4 
顔の皮膚は他の場所より薄いため皮膚を通して血管を流れる血液の色が反映されてしまいます。

つまり血液の色が明るければ肌の色も自然と明るくなります。

血液の「明るさ」は酸素を運ぶ役割をする赤血球(の主成分ヘモグロビン)の状態によります。
ヘモグロビンが酸素と結びついているときは血液(赤血球)は鮮やかな赤色をしています。



ヘモグロビンが酸素と離れているときは血液(赤血球)は暗い赤色
をしています。

赤血球が身体の末端にある肌にたくさんの酸素を届ける=肌の色を明るくするためには 鉄などヘモグロビンの材料を取ることが重要となります。プラスして赤血球を柔らかくすることが重要です。

EPAを摂取すると赤血球膜に取り込まれ、膜を柔らかくします。EPAには赤血球の変形能を改善する働きがあるからです。
その結果、肌の表皮までたくさんの酸素を供給することが可能となり、肌の色を明るくさせます。


赤血球の変形能

赤血球はその直径より狭い毛細血管を通らなければなりません。

赤血球は基本的に柔らかくて変形能力に富んでいます。 そのため毛細血管の中を通過するときは変形して中を通っています。

赤血球は真ん中がへんこんだ円盤状のような形をしています。この形は固定されているのではなく血管を通るときは丸まったり、折れ曲がったりします。このように変形する性質を変形能といいます。

参照
増やせ!元気でかわいい赤血球  
NHKBSプレミアム 美と若さの新常識 

 

 体型(ダイエット)評価6 
EPAはダイエット効果が高い成分です。これに関しては効果・効能欄で説明済みです。
なおダイエット効果として、次で説明するアディポネクチンの分泌促進作用もプラスしてください。

ということでEPAのダイエット効果は、単に高いのではなく非常に高いといえます。

 

 体力(普段)評価5 
脂肪細胞からさまざまな生理活性物質が分泌されています。脂肪細胞から分泌される生理活性物質を総称してアディポサイトカインといいます。
アディポサイトカインには善玉と悪玉があります。

アディポネクチンは善玉アディポサイトカインの1つです。

アディポネクチン
  • アディポネクチンは動脈硬化の進行を抑制します。
  • アディポネクチンは糖尿病などの生活習慣病を防ぐ働きをします。
  • アディポネクチンは中性脂肪を減少させます。

◆動脈硬化の予防 
アディポネクチンにはプラークの形成を防ぐ働きがあります。
アディポネクチンは血管壁の傷を修復する働きがあります。

◆糖尿病の予防
アディポネクチンにはインスリン感受性を高める働きがあります。

◆高血圧の予防
アディポネクチンには血管を拡張させる働きがあります。

◆中性脂肪を減少
アディポネクチンは中性脂肪を低下させます。
脂肪を燃焼させる&脂肪の蓄積を防ぐ働きがあるからです。
アディポネクチンにはAMPキナーゼを活性させる作用あります。

AMPキナーゼ

AMPキナーゼは、細胞のエネルギーセンサーのような役割を果たしている酵素です。運動などをしエネルギーが不足するとこの酵素が活性され、【糖の筋肉細胞へ取り込み・脂肪酸のβ酸化・糖新生の抑制】が促進されます。糖に関してはインスリンを要せずにです。

簡単にいうと AMPキナーゼが活性化されると脂肪の蓄積をやめ脂肪の燃焼を促進する【=痩せる】です。

AMPキナーゼは基本 運動などをし、飢餓状態にもっていくことで活性化されます。
アディポネクチンには飢餓状態にもっていかなくとも活性化させる作用があります。

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EPAにはアディポネクチンの分泌を促進させる
働きがあるとされています。

なので、EPAを体内に取り入れると

  • 動脈硬化の進行抑制効果
  • 生活習慣病予防効果
  • 脂肪燃焼効果
が期待できます。

EPAの摂取は、健康的な生活につながります。

参照
「やせホルモン」と呼ばれる「アディポネクチン」って何? 
はじめよう!ヘルシーライフ オムロン ヘルスケア(株)

 

 その他(血液)評価6 
よくDHA/EPAのサプリのキャッチフレーズに「血液サラサラ」が使われます。
この言葉はEPAにより当てはまると言えるかもしれません。というのも赤血球の細胞膜を柔らかくする作用はEPAのほうが優れているからです。

実際、血液の粘度、いわゆる血液サラサラに重要な赤血球の柔らかさに関して比較したヒトの試験では、EPAを摂取した時はEPAが赤血球の膜に取り込まれて赤血球自身が柔らかくなり、血液粘度も低下する(サラサラになる)ことが確認されたのに対し、DHAを摂取した時はEPAよりも赤血球膜に取り込まれにくく、赤血球の柔らかさと血液粘度のいずれも改善が認めらなかったことが報告されています。

引用元 
EPAとDHAの違いは? 
サラサラ生活向上委員会 日本水産(株)

 

 

EPA 参照一覧 

シーチキンのまぐろから搾ったDHA +EPA はごろもフーズ 

心血管疾患の新規治療標的としてのmicroRNA-33a/b J-STAGE 

PPARsと免疫・炎症システム―関節疾患治療への応用― J-STAGE 

脂肪燃焼組織・褐色脂肪の食品成分による活性化と抗肥満効果 (一財)食品分析開発センターSUNATEC 

シリーズ生活習慣病にならないために 第3回肥満 ヘルシスト(株)ヤクルト本社 

魚油摂取は交感神経を介して、「脂肪燃焼細胞」を増やす-「魚油」の効果で体脂肪燃焼を促す新メカニズムを解明 研究成果 京都大学 

魚を食べると体脂肪が燃焼するメカニズムを解明 EPAとDHAの効果 
「保健指導リソースガイド 」 日本医療・健康情報研究所/創新社 

 

 

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