α-GPCの評価 S
α-GPC
α-GPCとは
α-GPCとは、L-alpha-Glycerylphosphorylcholine(L-α-グリセリルホスホリルコリン)の略称です。
天然に存在するコリン誘導体です。
コリンは水溶性のビタミン様物質です。生体内ではセリンとメチオニンから合成されます。
体内で作ることはできます。が、これに「ある程度」という枕詞をつけなければなりません。
コリンは体内で生成される量だけでは足りないので、積極的に外から取り入れる必要があります。
アメリカではコリンの食事摂取基準=適正摂取量が定められており、「必須栄養素」として認知されています。
PCを脱アシル化したもの
α-GPCはリン脂質の1種ホスファチジルコリン(PC)の構造の一部である2本の脂肪酸を脱アシル化して生成される成分です。
リン脂質は大きくグリセロリン脂質とスフィンゴリン脂質にわけられます。
出典元
卵黄レシチンとは レシチンとは
キューピー(株)
主要なリン脂質は
1つの極性基(●の部分)=頭部と
2本の脂肪酸(2つのヒラヒラの部分)=尾部を持ちます。
極性基の種類でリン脂質の名前が決まります。
出典元一番上のPCは極性基が ホスホコリン【=リン酸化したコリン】 です。
α-GPCは、PCの2本の脂肪酸を脱アシル化した(取り除いた)水溶性の化合物です。
出典元
もっと知りたい!!α-GPCについて
健康専科 日油(株)食品事業部
α-GPCの摂取目的
α-GPCを摂取する主たる目的は「コリンの補給」です。
もう少し詳しくいうと「脳内の神経伝達物質アセチルコリンの前駆体であるコリンの補給」です。
アセチルコリンおよびコリン分子は血液脳関門を通過できません。
血液脳関門とは、脳毛細血管の内皮細胞同士の密着結合により形成されているバリア機能のことです。
血液脳関門は脳に有害な物質を通さないために、その物質が脳に必要なものかを判別している「関所」とよく例えられます。
なので脳内でアセチルコリンを増やすためには血液脳関門を通過できるコリンの前駆体 or コリンの補給剤となる成分の摂取が重要となります。
α-GPCはそれにあてはまります。
α-GPCはベストかも
α-GPC以外のコリンの前駆体 or コリンの補給剤は次があります。
- レシチン(PC)
リンク
- CDPコリン(シチコリン)
リンク
- 重酒石酸コリン
リンク
- DMAE
リンク
これらすべて血液脳関門を通過することができます。
ただより少ない量で、より効率よくと考えた場合、ベストな選択肢はα-GPCと言っていいかもしれません。
他と比べ、脳血液脳関門を容易に通過できるからです。
コリン補給剤の種類とその特徴
成分名 分子量 特徴 α-GPC 256 血液脳関門(BBB)を通過する
摂取量2.5倍PC
(ホスファチジルコリン)753
(脂肪酸C18)BBBを通過する
摂取量7.5倍塩化コリン 140
(コリン:104)BBBを通過する
トリメチルアミンによる魚臭様汗と体臭アセチルコリン 146 BBBを通過しない CDP-コリン
(シチコリン)488 BBBを通過する
医薬品(意識障害治療薬)引用元
もっと知りたい!!α-GPCについて
健康専科 日油(株)食品事業部
例えばレシチン(PC)と比較するとより少ない量で、より効率よくコリンを補給することができます。
◆より少ない量で
コリンの必要量に対して、α-GPCはレシチン(PC)の1/4で済みます。
◆より効率よく
体内へ吸収率が高いのもα-GPCのウリです。レシチン(PC)を脱アシル化しているので、レシチン(PC)より低分子です。
摂取したα-GPCの大部分は門脈経由で肝臓に到達します。一方でレシチン(PC)のほとんどはリンパ管より吸収されます。
.
こういった理由から「α-GPCはコリンの補給剤として最適な分子構造を有する」といわれています。
レシチンには狭義のレシチンと広義のレシチンがあります。
.
狭義はグリセロリン脂質のPC(ホスファチジルコリン)のことをいいます。
広義はリン脂質を含む製品全体の総称のことを言います。
ところで、表題に「ベストかも」と「かも」をつけています。
その理由はコストです。コリン補給剤サプリの中では値段が高いほうです。コスト面を考慮すると「かも」となります。
α-GPCに期待できる効果
α-GPCを摂取することで脳内のアセチルコリンの増加が見込まれます。
なので脳機能改善効果が期待できます。
またα-GPCには、成長ホルモンの分泌を促進させる働きもあります(次の効果・効能欄にて説明)。
なので脳だけでなく体全体の若返り効果が期待できる成分といえます。
α-GPCの効果・効能
成長ホルモンの分泌促進
α-GPCは、数あるコリン補給源の1つです。
なので、コリンの補給(コリンの働き)を目的とするならば、吸収率などの違いはあるといえども他のものでも用は足ります。
コリンは、生体内において主に3つの経路にて代謝されます。
②アセチル化→アセチルコリンに変換
③不可逆的に酸化→ベタインに変換
.
ゆえに、3つの重要な役割を果たします。
②アセチルコリンの前駆体として→神経伝達物質として働く
③ベタインの前駆体として→メチル基供与体として働く
ただしα-GPCには他のコリン補給剤には見られない作用があります。
それがGH(成長ホルモン)の分泌促進作用です。
GH(成長ホルモン)は脳の視床下部から分泌されるGHRH(成長ホルモン放出ホルモン)の反応を受け放出されるホルモンです。GHRHの反応をうけると脳下垂体前葉にあるGH分泌細胞より分泌されます。
GHは視床下部にあるGHRH(成長ホルモン放出ホルモン)により分泌が促進され、SRIF(ソマトスタチン)により分泌が抑制されます。
なのでGHの分泌量はこの2つのバランスに依存します。
簡単にいってしまえば
- GHRH>SRIFであれば成長ホルモンの分泌量が増え、
- GHRH<SRIFとなると分泌量が少なくなる
ことになります。
※ここでの>・<は過剰でないことが条件
.
SRIFの分泌はコリン系促進物質で抑制されているといわれています。
コリンを増やすα-GPCは【ソマトスタチンの分泌を抑制する⇒GHRH>SRIFを促すことで】成長ホルモンの分泌を促進します。
脳下垂体前葉における GH 分泌は、視床下部の GH 放出ホルモン(GHRH)と GH 分泌抑制ホルモン(ソマトスタチン)の分泌バランスに影響される。
ソマトスタチン分泌は、コリン系促進物質で抑制されることから、GPC が脳下垂体でアセチルコリンの原料となるコリン系促進物質として機能し GH 分泌抑制ホルモンの放出を抑制すると考えられる引用元
脂質系栄養素:コリンの普及に際し、アメリカの現状から
PDFページ 14/18
J-STAGE
というわけで、
海外ではα-GPCはよく成長ホルモン分泌促進系の複合サプリの一成分として配合されています。
その際は、ソマトスタチンを阻害する成分として配合されています。
ちなみに、α-GPCはGHRHと接合して成長ホルモン分泌を促進させるといった話もあります。
GPCは 成長ホルモン分泌刺激ホルモ ン(GHRH)と接合して下垂体前葉より分泌される内因性ヒト成長ホルモンを増加させる。すなわち,GPCとGHRHは 自然に一致して作用するためヒト成長ホルモンの遊離を刺激する。
引用元
脱アシルリン脂質 : グリセロホスフォコリンの調製と中枢賦活機能剤の開発
PDFページ 7/13
J-STAGE
つまるところ、α-GPCは【GHRHの分泌を増やし⇒GHRH>SRIFを促すことで】成長ホルモンの分泌を促進させるとも考えられます。
深く考えずに、α-GPCには成長ホルモンの分泌を促進する作用があるでいいと思います。
α-GPC を摂取すると成長ホルモンの分泌が確認されている 。
引用元
コリン化合物の重要性と運動機能への影響
PDFページ 4/6
J-STAGE
さて、ここで一つ 疑問が浮かぶかもしれません。
コリン系促進物質にソマトスタチンの分泌抑制の働きがあるならば「他のコリンの前駆体や補給剤にも成長ホルモン分泌促進作用がないのか」といった疑問です。
この点に関しては「他にはない」と考えていいと思います。
断言はできないのですが、他コリン促進物質で成長ホルモン分泌促進作用のことを言及しているのを見たことがないからです。
最後に成長ホルモンの主な作用をまとめます。
成長ホルモンの主な作用
- 細胞分裂を促進
→ 新陳代謝促進(骨形成・発毛・美肌など) - 細胞の修復
→ ケガの回復・肌のターンオーバー正常化 - たんぱく質の合成を促進
→ 筋肉量の増加 - 糖質、脂質の代謝促進
→ エネルギー産生・脂肪の蓄積を防ぐ・脂肪の分解を促す - 血糖値が低い時に血糖値をあげる
→ 低血糖を防ぐ
成長ホルモンの作用はその標的組織に直接働きかける場合と、IGF-1と呼ばれる成長因子を介して働きかける場合があります。
子供の成長期において、骨の軟骨細胞に作用し身長を伸ばす働きもあります。
.
α-GPCを摂取することで、これら作用が得られることが期待できます。
α-GPCのサプリメントによくあるキャッチフレーズ集
- 若々しさと知能をサポート
- 物忘れが気になり始めたら
- 成長期を応援
- アメリカで必須栄養素のコリンを効率よく吸収
- いつまでも若々しくいたい人に!今話題の成分
α-GPCの摂取量、不足、過剰
海外のサプリでは目安摂取量を300~600㎎/日に設定していることが多いです。
α-GPCをサプリから取る場合は、目安量を守ってください。目安量さえ守れば、過剰の心配はないと思います。ただし他のコリン補給剤と合わせてのコリンの過剰には注意してください。
α-GPCの豆知識
ですが、大豆、肉、バナナ、ヨーグルトといった身近な食品に含まれています。
ちなみに母乳にも含まれています。
ただし、食品からだけだと、海外のサプリの目安摂取量(300~600㎎/日)に達するのは厳しいと思います。
α-GPCと相性の良い成分
α-GPCのレーダーチャート解説
- 6
このカテゴリーに効果があることで有名。即効性があったり、継続して摂取することで効果を感じる - 5
このカテゴリーに効果があることで有名。継続して摂取することでなんとなく効果を感じる - 4
このカテゴリーに効果があるといわれている。効果が得られることを期待して飲んでいる - 3.5
このカテゴリーに効果があるといわれているが、個人的に摂取目的としていない - 3
このカテゴリーになんらかの効果があるもの - 2
このカテゴリーとはあまり関係ないと思われる - 1
このカテゴリーとは関係ないと思われる
※4以上が摂取目的となっているカテゴリー
α-GPC 総合評価 S 16
5つのカテゴリーのうち、評価が高い上位3つのカテゴリーを足したものです。「B~SS」でつけています。
SS 18点
S 16点以上
A+ 14点以上
A 12点以上
B+ 10点以上
B 9点以下
髪(薄毛)評価5
髪は毛母細胞が細胞分裂を繰り返すことで生まれ成長していきます。
成長ホルモンは細胞分裂を促進するホルモンです。
α-GPCは成長ホルモンの分泌を促進させる作用があります。薄毛予防に効く成分としても有名です。
肌(美肌)評価5
成長ホルモンにはたんぱく質同化促進作用や細胞の分化・増殖作用があります。これは肌にとっては非常にプラスになる作用です。
成長ホルモンがIGF-1介して肌細胞に働きかけることで
→肌の弾力にかかわるたんぱく質「コラーゲン」の合成を促します。
②細胞の分化・増殖作用
→コラーゲン・エラスチン・ヒアルロン酸といった美肌成分を生み出す繊維芽細胞を活性化させます。
成長ホルモンの分泌を促進させることは肌を美しさを保つために重要です。
α-GPCには成長ホルモンの分泌促進作用があります。
α-GPCがこの項目に関わる働きは次です。
◆成長ホルモン
筋肉のたんぱく質は合成と分解を24時間繰り返しています。
筋肉は合成<分解になると減っていきます。
なので、筋肉量を維持するためには合成>分解に、すくなくとも合成=分解の状態にもっていくことが大切です。
そのためには筋肉のもととなる「たんぱく質」と「合成を促進させる」成分を積極的にとる必要があります。
「合成を促進させる成分」とはたんぱく質の合成に関与するビタミンやミネラル、あるいはたんぱく質の合成を促進させるホルモンの分泌を促す成分のことです。
たんぱく質の合成を促進させるホルモンの筆頭ともいえるのが成長ホルモンです。成長ホルモンは筋肥大に大きく貢献します。
α-GPCは成長ホルモンの分泌を促進させる成分です。
◆コルチゾール
ストレスホルモン「コルチゾール」は筋肉の異化(糖を生み出すために筋肉を分解)を促進させます。
3カ月間 α-GPCを1日1000mgを投与する実験(筋肉注射により)をしたところ、コルチゾールの血中濃度低下が確認されています。
(Le Basi Razionali della Terapia., 23(Suppp.3)., 108-116., (1993))出典元
α-GPCについて
健康専科 日油(株)食品事業部
α-GPCは合成を促すだけでなく、筋肉の分解を防ぐといった観点からも「筋肉」にプラスとなる成分と言えます。
成長ホルモンとは文字通り「成長」を促すホルモンで、子供の成長期において骨の軟骨細胞に作用し身長を伸ばす働きや各組織の細胞に作用し成長を促す働きをします。
α-GPCはその成長ホルモンの分泌を促す働きをします。母乳や大豆に含まれている安全な成分のため、よく身長応援系サプリに主成分として配合されています。
思春期の方で身長にお悩みの方は試す価値はあるかもしれません。
ただし、その際はご両親にしっかりと相談してからが大前提となります。
アセチルコリンは脳内の神経伝達物質として記憶・認知・学習に関与します。
アセチルコリンおよびコリン分子は血液脳関門を通過できません。なので脳内でアセチルコリンを増やすにはいかにして【血液脳関門を通過できるコリンの前駆体またはコリンの補給剤】を摂取するかが重要となります。
α-GPC
レシチン(PC)
CDPコリン(シチコリン)
重酒石酸コリン
DMAE
これらは代表的なコリンの前駆体 or コリンの供給剤で、すべて血液脳関門を通過できます。
なのでどれを摂取しても、脳内にコリンを、しいてはアセチルコリンを増やせることにはなります。
ただ、より少ない量で、より効率良くと考えた場合、ベストな選択肢はα-GPCと言えるかもしれません
コリンの必要量に対して、α-GPCはレシチン(PC)の1/4で済みます。
◆より効率よく
体内へ吸収率が高いのもα-GPCのウリです。レシチン(PC)を脱アシル化しているので、レシチン(PC)より低分子です。
摂取したα-GPCの大部分は門脈経由で肝臓に到達します。一方でレシチン(PC)のほとんどはリンパ管より吸収されます。
実際、ヨーロッパではα-GPCはアルツハイマー病患者の治療目的で用いられているとのことです。
α-GPC 参照一覧
α-GPCについて 健康専科 日油(株)食品事業部
もっと知りたい!!α-GPCについて 健康専科 日油(株)食品事業部
コリン化合物の重要性と運動機能への影響 J-STAGE
脂質系栄養素:コリンの普及に際し、アメリカの現状から J-STAGE
脱アシルリン脂質 : グリセロホスフォコリンの調製と中枢賦活機能剤の開発 J-STAGE
バクテリア由来新規ホスホリパーゼ J-STAGE