メチオニンの評価 A+
メチオニン
体内には約10万種類のたんぱく質が存在していると言われています。それらたんぱく質はわずか20種類のアミノ酸が数十~数百個以上結合し複雑に組み合わさることで作られます。
20種類のアミノ酸は9種類の必須アミノ酸(体内で合成できないもの)と11種類の非必須アミノ酸(体内で合成できるもの)に分けられています。
必須アミノ酸(9種類)
ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、バリン、フェニルアラニン、トレオニン(スレオニン)、トリプトファン
非必須アミノ酸(11種類)
アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、システイン、プロリン、セリン、チロシン
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メチオニンは必須アミノ酸に分類されます。
メチオニンは側鎖に硫黄を含んだ含硫アミノ酸です。
メチオニンは体内でリサイクルされます、あるいはシステインに代謝されます。その代謝過程を簡単にまとめると下記となります。
出典元
メチオニンの代謝はヒトのES細胞およびiPS細胞の未分化な状態の維持および分化を制御している
新着論文レビュー
ライフサイエンス統合データベースセンター
次の①~⑤はイラストのピンク矢印の流れです。
①【メチオニンを起点に→】メチオニンとATP由来のアデノシンを基質としS-アデノシルメチオニン合成酵素の働きによりSAMe(S-アデノシルメチオニン)が生成されます。
②【SAMeを起点に↓】SAMeがメチル基転移反応酵素の働きによりSAH(S-アデノシルホモシステイン)になります。
③【SAHを起点に←】SAHはホモシステインに加水分解されます。
④ホモステインは再メチル化経路【ホモシステインを起点に↑】か硫黄転移経路【ホモシステインを起点に↓】に入ります。
⑤ホモシステインは再メチル化経路↑ではメチオニンに再生され、硫黄転移経路↓ではシステインに代謝されます。
メチオニンは肝臓や脳の健康に大きく貢献するアミノ酸です。
メチオニンの効果・効能
髪①
髪の90%以上は、ケラチンというたんぱく質からできています。ケラチンは18種類のアミノ酸でできています。
メチオニンは髪のケラチンのアミノ酸組成に1%しか含まれていません。が、この1%が満たされているかどうかで髪の毛の発育が左右されるといっていいほど重要な存在とされています。それは「メチオニンがたんぱく質合成の開始アミノ酸としての役割を果たしている」が理由だと考えられます。
通常の翻訳はメチオニンに対応するコドンAUGから開始されます。そのためメチオニンが不足するとすべてのたんぱく質合成に支障をきたすと言われています。
全てのタンパク質合成はメチオニンから始まるが、8割以上のタンパク質から翻訳中にメチオニンが除去される。
引用元
第1301回 リボソームから伸びるRNA触手の役割
広報・セミナー
京都大学 ウイルス・再生医科学研究所
まず、30S サブユニット(青)と「開始tRNA」と呼ばれるMet-tRNA(黄)の複合体がmRNA(赤いひも)に結合します。mRNAにコードされた開始コドン(AUG)をMet-tRNAが認識すると、リボソームの50Sサブユニットが結合し、タンパク質の合成(翻訳)が始まります。
引用元
Stage1 翻訳開始
マルチメディア資料館
国立遺伝学研究所
つまるところ【1%しか含まれていないメチオニン】が足りないだけでケラチンたんぱく質そのものが出来上がらない可能性があります。
メチオニンの不足が薄毛・抜け毛の原因になるはとても有名な話です。
髪②
髪のケラチンのアミノ酸組成をご覧ください。
※%はおおよその値です。
シスチンはシステインが2分子結合したアミノ酸です。システインが「ジスフィルド結合」としてケラチン分子を固く結びつける役割を果たしているため、シスチンが多く存在していることになります。
たんぱく質分子内、あるいはたんぱく質分子間で2つのシステインに含まれるSH基同士が酸化されることで形成させる架橋のことをいいます。S-S結合、シスチン結合、ジスルフィド架橋とも呼ばれます。
ジスルフィド結合はたんぱく質の立体構造の安定化に大きく寄与しています。
ジスルフィド結合、またはS-S結合と呼ばれる結合は、タンパク質の中に含まれるイオウを用いた結合です。
この結合には、システインというイオウを含んだアミノ酸が深く関わっています(図1)。
システインは、タンパク質中の含有量としてはそれほど多くありませんが、タンパク質の中の他のシステインとジスルフィド結合を作ることができます(図1右)。
[図1]このジスルフィド結合は、他の結合に比べてとても強い結合なので、タンパク質はしっかりと構造を保つことができます。
引用元
タンパク質分子の形を保つ 2007.3.29 ~ ジスルフィド結合をつくる ~
大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構
ジスルフィド結合は髪のケラチンにおいて多く存在し、その構造を安定させています。
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システインは体内ではメチオニンから作られます。
「髪のケラチンにもっとも多く含まれているシスチン(システイン)はメチオニンから生成される」このことも薄毛予防効果のプラス材料です。
肝臓
メチオニンは肝機能を向上させるアミノ酸です。
その主たる理由は3つです。
①アルコールの代謝促進作用
肝臓でアルコールはADH(アルコール脱水素酵素)やMEOS(ミクロゾーム・エタノール酸化系)によって、二日酔いの原因となる物質アセトアルデヒドに分解されます。
続いてアセトアルデヒドは、ALDH(アルデヒド脱水素酵素)によって分解されて酢酸になります。
その酢酸は最終的に水と二酸化炭素に分解され、尿、汗などなって体外に排泄されます。
出典元
アルコール代謝のしくみ
お酒と健康の関係
アサヒグループ
メチオニンにはアルコールの代謝促進作用があります。
②抗脂肪肝作用
脂肪肝とは肝臓の病気の一つで肝臓に脂肪が異常に蓄積されている状態のことをいいます。メチオニンは脂肪の代謝を促進し、肝臓に脂肪が蓄積するのを防ぎます。
③SAMeの原料
SAMe(S-アデノシルメチオニン)は体内でメチオニンとATPから生成される物質です。肝臓や脳に多く存在し、肝機や脳の健康維持に大きく貢献します。
※SAMeの働きが上記①②の作用(の一部)に関わっています。
肌
皮膚の真皮にある線維芽細胞は、肌のハリ・弾力・潤いをもたらす成分【コラーゲン・エラスチン・ヒアルロン酸】を作り出す重要な役割を担っています。
線維芽細胞は自身で細胞分裂を行って絶えず新しい繊維芽細胞を増やし、これら成分を作り続けています。
ひし形内の〇が繊維芽細胞、ひし形の線部分がコラーゲン、線部分のつなぎめがエラスチン、ひし形内にあるのがヒアルロン酸などの基質
加齢や紫外線により肌の繊維芽細胞の働きが衰えると、おのずと美肌成分も減ります。その結果、肌にシワ・たるみが現れることになります。
つまり繊維芽細胞を活性化させることが年齢に負けない肌をつくる鍵となります。
ポリアミンは細胞分裂を促進させる物質です。
細胞内の核酸(特にRNA)と相互作用することで、核酸の合成やたんぱく質の合成を促進し細胞増殖促進効果をもたらします。真皮においては繊維芽細胞の分裂を促進させ美肌成分の産生量を増やします。
メチオニンはポリアミンの生合成に関与しています。
アルギニン→オルニチン→プトレスシン→スペルミジン→スペルミン
図 2. ポリアミンの合成経路出典元
オリザポリアミン
製品案内 オリザ油化(株)
- アルギニン→オルニチン (アルギナーゼの働きが必要)
- オルニチン→プトレスシン (オルニチンデカルボキシラーゼの働きが必要)
- プトレスシン→スペルミジン(スペルミジンシンターゼの働きが必要)
- スペルミジン→スペルミン (スペルミンシンターゼの働きが必要)
※プトレスシン→スペルミジン、スペルジミン→スペルミンの代謝ではもう一つの基質が必要となります。それが脱炭酸化SAM(S-アデノシルメチオニン)です。脱炭酸化SAMはメチオニン→S-アデノシルメチオニン→の流れで作られます。
※メチオニンの代謝物「SAMe」はメチル基(-CH3)の供与体として働きます。生体内での数多くのメチル化反応に関与しており、その数は数百種類ともいわれています。
メチオニンのサプリメントでよくあるキャッチフレーズ集
- 抜け毛の悩みに答える
- 抜けにくい毛髪や健康な爪の育成にも大切な栄養成分
- アレルギー症状の緩和に
- お酒をよく飲む方
- 健康にも美容にも重要な必須アミノ酸
メチオチンの摂取量、不足、過剰
例 体重50kgの場合 約520㎎/日
15㎎/kg/日 成人
例 体重50kgの場合 約750㎎/日
参照 必須アミノ酸 ウィキペディア
多量に摂取した場合には、臓器障害を引き起こす可能性があります。
メチオニン 豆知識
セレノシステインよりセレノメチオニンが【体内へすばやく吸収される&吸収率が高い】とされています。 セレノメチオニンはセレンとメチオニンが結合した(メチオニンの硫黄原子がセレンに置き換わった)アミノ酸です。
メチオニンと相性の良い栄養成分
・ビタミンB6
・亜鉛
メチオニンのレーダーチャート解説
- 6
このカテゴリーに効果があることで有名。即効性があったり、継続して摂取することで効果を感じる - 5
このカテゴリーに効果があることで有名。継続して摂取することでなんとなく効果を感じる - 4
このカテゴリーに効果があるといわれている。効果が得られることを期待して飲んでいる - 3.5
このカテゴリーに効果があるといわれているが、個人的に摂取目的としていない - 3
このカテゴリーになんらかの効果があるもの - 2
このカテゴリーとはあまり関係ないと思われる - 1
このカテゴリーとは関係ないと思われる
※4以上が摂取目的となっているカテゴリー
メチオニン総合評価 A+ 15.5
5つのカテゴリーのうち、評価が高い上位3つのカテゴリーを足したものです。「B~SS」でつけています。
SS 18点
S 16点以上
A+ 14点以上
A 12点以上
B+ 10点以上
B 9点以下
髪(薄毛) 評価6
髪の90%以上はケラチンと呼ばれるたんぱく質でできています。ケラチンは18種類のアミノ酸で構成されています。
※%はおおよその値です。
メチオニンはケラチンを構成しているアミノ酸の1つです。円グラフの「その他」の17%に含まれており、その率は1%です。
わずか1%となるとさほど重要ではないと思われます。
が、そうではありません。メチオニンは毛髪の生育のカギを握ると存在といっていいほど重要です。
メチオニンがたんぱく質合成の開始のアミノ酸としての役割を果たしているからです。
メチオニンはいわば「アミノ酸の行列のリーダー」といえます。このリーダーの後に、さまざまなアミノ酸がくっついて、その配列によって髪になったり、爪になったりするのです。つまり「リーダー」がいないと、せっかく他のアミノ酸が足りている状態でも、効率よく髪などの組織になりづらい、というわけです。
引用元
髪と「食事」の密な関係
健康の雑学
元気通信 養命酒製造(株)
またメチオニンはケラチンに一番多く含まれているアミノ酸「シスチン」の材料でもあります。
シスチンはシステインが2分子結合したアミノ酸です。システインがジスフィルド結合としてケラチン分子を固く結びつける役割を果たしているため、シスチンが多く存在していることになります。
体内でシステインはメチオニンから生成されます。
肌(美白)評価4
システインは美白効果の高い成分として非常に有名です。
その理由は主に次です。
シミのもととなるメラニンはチロシンとチロシナーゼ酵素が結合することで作られます。チロシナーゼが活性されるとメラニンがたくさん作られてしまいます。システインにはチロシナーゼの活性を抑制し、メラニンが過剰に作られるのを防ぐ働きがあります。
②メラニンを作ってもシミを作らない
メラニンには色の濃い黒色メラニン(ユーメラニン)と、色の薄い肌色メラニン(フェオメラニン)の2種類があります。肌色メラニンはシミを作らないメラニンです。
メラニンはチロシン→ドーパ→ドーパキノン→メラニン【黒色 or 肌色】という代謝過程を経て作られていきます。システインには黒色メラニン生成へ抑え、肌色メラニン生成を促す作用があります。
③シミのもととなる黒色メラニンを無色化
システインの抗酸化作用はメラニンに直接働きかけ黒色メラニンを色素を還元する(淡色化)働きをもっています。この作業は同じく抗酸化作用をもつビタミンCと協力して行われます。
④肌のターンオーバーを正常化させる
肌のターンオーバーは表皮の細胞で行われています。
紫外線や加齢などの影響により表皮細胞の活動が衰えていると肌のターンオーバーが正常に行われなくなります。その結果、メラニンの排出が上手くいかずシミが増えてしまいます。シミを防ぐには、肌のターンオーバーを正常化させることが重要となります。システインには肌のターンオーバーを正常化させる働きがあります。
システインは生体内でメチオニンから作られます。
体型(筋肉)評価5.5
筋肉を増量するためには合成を繰り返し行えるだけの「たんぱく質」を意識して摂取する必要があります。
筋肉を増量するために特に意識して摂取するべきは体内で作ることのできない9種類の必須アミノ酸です。メチオニンは必須アミノ酸に分類されています。
たんぱく質合成において「すべてのたんぱく質の合成はメチオニンから始まる」「メチオニンが不足するとすべてのたんぱく質合成に支障をきたす」など、メチオニンについて言及されていることが多いです。
メチオニンはたんぱく質の合成に「特に重要なアミノ酸」と言っても過言ではありません。
体力(普段)評価4
筋収縮はATP がADPとリン酸に分解するときに放出されるエネルギーによって起こります。体を動かすためにはATPを供給し続けなければならないので、体内でATPを再合成する必要があります。
運動時のエネルギー供給機構はATP-CP系・解糖系・酸化系の3つです。
エネルギー供給機構
- ATP-CP系(クレアチン系)
- 解糖系
- 酸化系
ATPを再合成する3つの経路は運動の強度や運動する時間により変化します。
①②は短距離走など、瞬発力を必要とする運動(無酸素運素)の際に
③は長距離走など、持久力を必要とする運動(有酸素運動)の際に利用されます。
①がハイパワー③がローパワーです。
①→③にいくにつれ 持久力が上がります。
①が瞬発力③が持久力です。
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ATP-CP系(クレアチン系)は筋肉に蓄えられているクレアチンリン酸を使ってATPを再合成するシステムです。30秒以内の瞬発的な運動時に必要とする筋肉の収縮の際に使用されます。
※クレアチンリン酸がクレアチンとリン酸に分解されるとエネルギーが放出されます。このエネルギーを使ってリン酸とADPからATPを再合成します。
この反応で生じたクレアチンはクレアチンキナーゼによってリン酸化されクレアチンリン酸として再利用されます、あるいは非酵素的に分解されクレアチニンになります。
クレアチンは主に腎臓・肝臓でグリシン・アルギニン・メチオニンから生成されます。
①腎臓 L-アルギニン+グリシン → グアニジノ酢酸+L-オルニチン
②肝臓 グアニジノ酢酸+S-アデノシルメチオニン → クレアチン+S-アデニル₋L-ホモシステイン
①腎臓でアルギニンとグリシンを原料に、酵素【グリシンアミジノトランスフェラーゼ】の作用によりグアニジノ酢酸とオルニチンが生成されます。
②肝臓でグアニジノ酢酸+S-アデノシルメチオニンを原料に、酵素【グアニジノ酢酸メチルトランスフェラーゼ】の作用によりクレアチンが生成されます。
S-アデノシルメチオニンはメチオニンから生成されます。
抗酸化 評価4
メチオニンは以下2点より抗酸化作用を有するアミノ酸といえます。
◆セレンの運搬役
セレンは体内にある抗酸化酵素グルタチオンペルオキシダーゼの構成成分です。なのでグルタチオンペルオキシダーゼを活性させるにはセレンを摂取する必要があります。
食品中のセレンの多くはたんぱく質と結合した形【セレノシステイン or セレノメチオニン】です。このうちセレノメチオニンのほうがセレンを効率的に吸収できます。セレノメチオニンはセレンとメチオニンが結合した(メチオニンの硫黄原子がセレンに置き換わった)アミノ酸です。
◆システイン、グルタチオンのもと
強力な抗酸化作用を有する物質システインおよびグルタチオンは生体内ではメチオニンから生成されます。
メチオニン→SAMe→SAH→ホモシステイン→(硫黄転移経路)→シスタチオン→システイン→グルタチオン