鉄
16種類ある必須ミネラルの1種
そのうち9種類ある微量ミネラルの1種
鉄とは
鉄について
- 生体を構成する主要4元素(水素・炭素・窒素・酸素)以外の元素を総称してミネラルといいます。
-
ミネラルの中で極めて少量しか存在しないものを微量元素と呼びます。
-
鉄は微量元素のうち一番多く存在しています。成人の体内に約3~4g含まれています。
-
体内にある鉄の約60~70%は血液中に存在しています。ヘモグロビンの材料ヘム鉄として赤血球中に存在しています。
この鉄を機能鉄といいます。 -
体内にある鉄の約20~30%はフェリチン、ヘモジデリンとして肝臓、骨髄、すい臓に貯蔵されています。この鉄を貯蔵鉄といいます。
-
残りは筋肉内のミオグロビンや酵素中などに存在しています。ミオグロビンや酵素中の鉄を組織鉄といいます。
-
また血清中にもトランスフェリンと結合した形態【=血清鉄】で存在しています。トランスフェリンは鉄を輸送するたんぱく質です。なのでこの鉄は輸送鉄とも呼ばれます。血清中には全体の約0.1%存在しています。
- 鉄の体内分布を円グラフにすると次になります。※数値はアバウト
-
機能鉄が不足すると貯蔵鉄から放出されます。
- 貯蔵鉄が底をつくと鉄欠乏症貧血が起きます。
- なお過剰な鉄はフェントン反応を介して活性酸素を発生させます。活性酸素のうち最も酸化力が強いヒドロキシラジカルを発生させます。この鉄を自由鉄と呼びます。
フェントン反応
鉄を触媒として過酸化水素からヒドロキシラジカルが生じる反応をいいます。
- 鉄は体のすみずみまで酸素を運搬する重要な役割を果たしています。
- その他 エネルギー代謝、DNAの合成、コラーゲンの合成などの生理的機能を果たします。
鉄の補足
- 食物に含まれる鉄は大きく2種類にわけることができます。
- 動物性の食品に多く含まれるヘム鉄(Fe²⁺ 2価鉄)と植物性の食品に多く含まれる非ヘム鉄(Fe³⁺ 3価鉄)です。
- 食物から摂取された鉄は、十二指腸から空腸上部において吸収されます。
- ヘム鉄と非ヘム鉄の吸収の過程が異なります。
ヘム鉄ヘム鉄は、ヘム輸送体HCP1(heme carrier protein1)によりそのままの形で腸管上皮細胞から吸収され、細胞内でヘムオキシゲナーゼの働きにより2価の鉄(Fe²⁺)とポルフィリンに分解されます。非ヘム鉄非ヘム鉄は胃酸により溶解され、食物中の還元物質、または腸管上皮の細胞膜上にある鉄還元酵素「duodenal cytochrome b」によりFe²⁺に還元されてから吸収されます。食物中の還元物質
食物中の還元物質とは「アスコルビン酸(ビタミンC)」などのことです。
Fe²⁺に還元されてから細胞内へ鉄を輸送する2価金属輸送体がFe²⁺しか輸送できない=Fe³⁺は輸送できないためです。なので摂取した非ヘム鉄(Fe³⁺)は還元されてFe²⁺になる必要があります。
2価金属輸送体は鉄以外の2価の金属イオンの取り込みにも関与しています。具体的には亜鉛・銅です。そのためこの吸収は亜鉛・銅と競合します。
ここで言いたいことは「非ヘム鉄はヘム鉄に比べて吸収率が低い」です。
ヘム鉄の吸収率は15~25%があるのに対して、非ヘム鉄は2~5%とされています(数値は諸説あり)。
日本人が食事から取る鉄のほとんどは非ヘム鉄です。そのためトータル食事由来の鉄の吸収率は約5~10%とされています。鉄は吸収率が低いミネラルとして有名です。 - 吸収された後の話に移ります。腸管上皮細胞内に吸収されたFe²⁺は、フェロポーチンと呼ばれる鉄排出たんぱく質によって細胞外に輸送されます。その際、ヘファスチンと呼ばれる鉄酸化酵素によってFe³⁺に酸化されます。
※Fe²⁺の一部はアポフェリチンと結合しフェリチンとなって貯蔵されます。
- Fe³⁺はトランスフェリンと結合して【=血清鉄として】血流に乗って全身の各組織に運ばれます。その多くは骨髄へ運搬され赤血球の産生【=ヘモグロビン合成】に利用されます。なおトランスフェリン1分子は2原子の鉄(Fe³⁺)と結合します。
- 120日の寿命を終えた赤血球は脾臓などのマクロファージに補食されます。赤血球中のヘモグロビンは分解されてヘムとグロビンになります。
ヘムは鉄とプロトポルフィリンに分離されます。この際に放出された鉄はマクロファージの中にとどまりトランスフェリンと結合し、ヘモグロビン等の合成に再利用されます。※グロビンはアミノ酸に分解されたんぱく質の合成に再利用されます。
プロトポルフィリンはビリルビンに変わり、そのビリルビンはグルクロン酸抱合を受けた後、胆汁の成分として胆管を通り便の中へ排泄されます。 - 一般的に鉄は1日の食事から10~20㎎摂取しているとされています。そのうち体内に吸収されるのは1㎎前後です。
尿や糞便中など体外に排泄されるのは1日1㎎ほどです。
1日1㎎を吸収し排泄するといったバランスが保たれていることになります。
摂取量について
◆推奨量
7~7.5㎎/日(成人男性)
6~6.5㎎/日(成人女性)
※年代により異なります。
※女性の場合、月経あり・なしでも異なります。上記はなしです。ありの場合は次です。
◆月経ありの推奨量
10.5~11㎎/日
※年代により異なります。
◆耐用上限量
50~55㎎/日(成人男性)
40~45㎎/日(成人女性)
※年代により異なります。
by 日本人の食事摂取基準(2015年版) 厚生労働省
◆不足や欠乏症
- 鉄欠乏症貧血
- 筋力低下
- 集中力低下
- 免疫機能低下
- 疲労
- 頭痛
など
ただしサプリでとる場合は過剰摂取にならないように注意してください。活性酸素の大量発生につながり逆に健康を害することになります。
特に肝疾患をお持ちの方は鉄の摂取量に敏感になってください。食事でとった鉄は肝臓に蓄えられ、必要に応じて利用されますが、肝機能が低下していると鉄が必要以上に溜まってしまいます。その結果、病気の悪化につながります。
ヘム鉄は肉や赤身の魚などに含まれています。非ヘム鉄は野菜・豆類・海藻類・乳製品などに含まれています。主に動物性食品に含まれているのがヘム鉄、植物性食品に含まれているのが非ヘム鉄と考えてください。
吸収率のみを重視し、鉄摂取がヘム鉄中心になるとほかの栄養成分のバランスが崩れます。非ヘム鉄をふくめたトータル鉄の摂取を心掛けてください。
その際、鉄の吸収率を高める成分と一緒にとることをお勧めします。
たんぱく質、ビタミンC、クエン酸、ラクトフェリンです。
なお鉄の吸収率を阻害する成分として
食物繊維、タンニン、フィチン酸、カルシウム、ポリフェノール、ホスビチン(卵黄の成分)が挙げられます。
◆取り過ぎや過剰症
- 鉄過剰症(ヘモクロマトーシス)
- 便秘
- 他ミネラルの吸収阻害
など
鉄の効果・効能
鉄の効果・効能 5つ厳選
- 酸素の運搬
- エネルギー産生
- 筋肉中の酸素の貯蔵
- DNAの合成
- 肝臓における薬物代謝
そのうち2つを詳しく
①酸素の運搬
鉄は【赤血球の主成分であるヘモグロビンの構成成分として】体のすみずみに酸素を運搬する重要な役割を果たしています。
これを説明する前に、前提知識として「血液」「赤血球」「ヘモグロビン」についてまとめました。
血管内を流れる体液
【血液の役割】
◆運搬作用
- 栄養素や酸素やホルモンなどを細胞に届ける
- 細胞から二酸化炭素や老廃物を回収する
◆免疫作用
◆止血作用
◇体温調節作用
【血液の成分】
細胞成分 約45%
- 赤血球
- 白血球
- 血小板
液体成分 約55%
- 血漿
【各成分の主な働き】
- 赤血球
酸素の運搬 - 白血球
免疫 - 血小板
血液の凝固 - 血漿
血球・栄養素などの運搬、二酸化炭素・老廃物の回収
血液細胞の1種
細胞成分の96%を占める
【赤血球の大きさ】
直径 約7μm
厚さ 約2μm
【赤血球はいくつある】
約20兆個
※体内の細胞の数が約60兆個であるとして
【赤血球はどこで作られる】
骨髄
骨髄にある「造血幹細胞」と呼ばれる細胞から作られます。赤血球のみならず3種類の血球すべては造血幹細胞から作られます。
造血幹細胞は骨髄系幹細胞とリンパ系幹細胞に分かれており、前者から赤血球と血小板と白血球(顆粒球系、単球系)、後者から白血球(リンパ球系)が作られます。
【赤血球は1日いくつ作られる】
約2000億個
【赤血球の寿命】
約120日
寿命が来ると肝臓、脾臓でマクロファージにより壊されます。
【赤血球の構成】
- 1/3 ヘモグロビン
- 2/3 水分
【赤血球の働き】
◆全身に酸素を運搬する
◇二酸化炭素を回収する
※二酸化炭素の一部(約5%)は血漿に溶解されて運搬されます。
※二酸化炭素の大部分は赤血球内の炭酸脱水酵素によって重炭酸イオンに変換されてから、血漿に溶解されて運搬されます。
赤血球の主成分
【ヘモグロビンの構成】
ヘムという赤い色素とグロビンというたんぱく質から成ります。
【ヘモグロビンの性質】
ヘモグロビンは
酸素の少ないところ(=末梢の組織)では酸素を離す
ゆえに
赤血球の全身に酸素を運搬する働きはヘモグロビンが担っています。
【ヘモグロビンの特徴】
- ヘモグロビンはαグロビン鎖2本とβグロビン鎖2本からなる4量体で、各グロビン鎖には活性中心であるヘムが含まれています。つまりヘモグロビン1分子中に4つのヘムが含まれています。
- ヘム部分に酸素が結合します。なのでヘモグロビン1分子あたり4つの酸素を運搬します。
- (ヘモグロビン1分子中にある)4つあるヘムのうち1つが酸素と結合すると別のヘムの酸素親和性が上がり、より酸素と結合しやすい状態に変化します。
一方で、1つから酸素が離れると別のヘムも酸素を離しやすい状態に変化します。このことがヘムの性質【酸素の多いところで酸素と結びつき、酸素の少ないところでは酸素を離す】をつくりあげます。 - 酸素と結合したヘモグロビンを酸化ヘモグロビンといいます。酸素と結合していないヘモグロビンを還元ヘモグロビンといいます。酸化ヘモグロビンは鮮やかな赤色をしています。還元ヘモグロビンは暗い赤色をしています。
血液が赤いのはヘモグロビン、さらにいえば赤い色素をもつヘムによるものです。 - 寿命を終えたヘモグロビンはヘムとグロビンに分解されます。ヘムはさらに鉄とプロトポルフィリンに分けられます。この際、働く酵素はヘムオキシゲナーゼです
鉄は骨髄でのヘムの合成などに再利用されます。ヘモグロビンに含まれている鉄の大部分はリサイクル鉄です。
プロトポリフェリンはビリベルジン→ビリルビンと変化します。ビリルビンは肝臓に輸送され、グルクロン酸抱合を受けた後、胆汁の成分として捨てられます。
グロビンはアミノ酸に分解され、たんぱく質の合成に再利用されます。
さて血液の役割のうち最も重要ともいえる酸素の運搬、これは血液に含まれている血球成分「赤血球」の働きによるものです。
より具体的にいうと赤血球の主成分である「ヘモグロビン」の働きによるものです。
ヘモグロビンに【酸素の多いところ(=肺)で酸素と結びつき、酸素の少ないところ(=末梢の組織)では酸素を離す】性質があるからです。
このヘモグロビンの酸素と結びつく性質は構成成分である「ヘム」によるものです。
ヘムがどのように酸素と結びつくのかというと、ズバリ「鉄」です。
ヘムに鉄原子が含まれており、それに酸素が結合します。
ヘムは鉄原子を利用することで酸素と結びつく性質を作り上げています。
この流れをウォーキングデッドの世界観を取り入れながら、マジカルバナナ風に要約します。
では血液の中で酸素の運搬を担っているのは?
赤血球はなぜ酸素を運搬することができる?
ヘモグロビンはなぜそのような性質をもつ?
それじゃあ「酸素の運搬」のために最も重要な栄養成分といえるのはなんだ?
やったか・・・
ということで「鉄は【赤血球の主成分であるヘモグロビンの構成成分として】体のすみずみに酸素を運搬する重要な役割を果たしている」です。
なので鉄が不足すると【赤血球の中のヘモグロビンが減り】体のすみずみに酸素を十分に運搬することができなくなります。イコール鉄欠乏症貧血を生じます。
②エネルギー産生
補欠分子族として「ヘム」を含むたんぱく質を総してヘムたんぱく質といいます。上で説明したヘモグロビンもヘムたんぱく質の1種です。
そのほか代表的なヘムたんぱく質としてミオグロビン・シトクロム類・シトクロムP450・カタラーゼ・ペルオキシダーゼなどが挙げられます。
これらの生体内の役割を簡単にまとめると以下になります。
ヘムたんぱく質とその役割
- ヘモグロビン 酸素の運搬
- ミオグロビン 酸素の貯蔵
- シトクロム類 エネルギー産生
- シトクロムP450 薬物代謝
- カタラーゼ 活性酸素の除去
- ペルオキシダーゼ 活性酸素の除去
ここではエネルギー産生過程においてミトコンドリアにおける【電子伝達系】で重要な役割を果たすシトクロム類について取り上げたいと思います。
シトクロム類
先の「酸素の運搬」ではヘムはプロトポルフィリンと鉄の錯体と説明しましたが、ヘムはそれ1つではなく種類があります。
ポルフィリンとは【4個のピロール環がメチン橋(-C=)により閉環して形成されたポルフィリン環に様々な側鎖(例 メチル基、ビニル基、エチル基、プロピオン酸基)が結合した構造をもつ】有機化合物のことをいいます。
プロトポルフィリンとは【ポルフィン環に、4つのメチル基、2つのビニル基、2つのプロピオン酸基が結合した構造をもつ】ポルフィリンの総称をいいます。
「酸素の運搬」で説明したヘムは正式にいうと プロトポルフィリンⅣと二価の鉄からなる錯体=ヘムb です。プロトヘムやフェロヘムとも呼ばれます。通常ヘムと呼ばれているものはヘムbのことを指します。
ポルフィリン環に結合する側鎖の種類によって数種類のヘムが存在し、ヘムb以外にもヘムa、ヘムcなどがあります。
シトクロムとは酸化還元機能を持つヘム鉄を含有するヘムたんぱく質のことです。
シトクロムは含まれるヘムの種類によってシトクロムa、シトクロムb、シトクロムcなどの種類があります。
これらシトクロム類は電子伝達系で活躍します。
シトクロム類と電子伝達系
食事から取り入れた糖質(酸素あり)・脂質は
糖質の場合
解糖系→TCA回路→電子伝達系
脂質の場合
β酸化→TCA回路→電子伝達系
特に電子伝達系で酸化的リン酸化が起こることにより大量のATPが合成されます。
電子伝達系はミトコンドリア内膜のたんぱく質複合体や補酵素間で電子(解糖系およびβ酸化・TCA回路で生じ、NADHやFADH₂で運搬してきた)のやり取りが行われる過程のことをいいます。これにより生じるプロトン濃度勾配を利用してATPの合成が行われます。
この「電子のやり取り」を簡単に説明します。
TCA回路で生じたNADHやFADH₂に含まれる高エネルギー電子がミトコンドリア内膜にある電子伝達系を通ります 。電子は内幕に埋め込まれた4種類のたんぱく質複合体(複合体Ⅰ~複合体Ⅳ)を介して受け渡されます。
電子の流れ
NADHからの電子 →複合体I→【ユビキノン】→複合体Ⅲ→【シトクロムc】→複合体Ⅳ→【酸素】
FADH₂からの電子→複合体Ⅱ→【ユビキノン】→複合体Ⅲ→【シトクロムc】→複合体Ⅳ→【酸素】
電子伝達系で伝達された電子は最終的に酸素分子に結合し、さらに水素イオンと結合して水を生成します。
電子伝達系を電子が通る際にミトコンドリア内膜の内外にプロトン濃度勾配が形成されます。
複合体I、Ⅲ、Ⅳが電子を伝達する際にプロトン(水素イオン、H⁺)をミトコンドリアのマトリクスから膜間スペースにくみ出します(=ミトコンドリア内膜の内外にプロトンの濃度の差を生じさせる)。
このプロトン濃度勾配を利用し、最終的にATP合成酵素(=複合体Ⅴ)の働きによりADPとリン酸からATPが生成されます。
上の話をより簡潔に説明しているサイトがありました。
こちらを読めばすんなり頭に入ると思います。
具体的には、複合体 I ではNADH、複合体 IIではコハク酸をそれぞれ酸化することで、ユビキノンを還元してユビキノールにし、複合体 IIIでユビキノールを酸化することでシトクロムcを還元します。
複合体IVでシトクロムcが酸化され、酸素分子に電子を伝達することで水に還元します。この過程でミトコンドリア内膜を隔ててH+勾配が生じ、このH+勾配を駆動力としてATPを合成します。
引用元
ミトコンドリア呼吸鎖(電子伝達系)複合体と活性酸素種
東邦大学 HP
複合体Ⅲから複合体Ⅳへ電子の受け渡しをしている電子伝達体はシトクロムcです。シトクロムcのヘムに含まれる鉄イオンの酸化還元反応を利用して電子の伝達が行われます。
ヘムは複合体の構成要素としても利用されています。電子伝達系の複合体Ⅱ、Ⅲ、Ⅳの構成要素で、酸化還元反応の活性中心として重要な役割を果たしています。
- 複合体Ⅱ コハク酸デヒドロゲナーゼ
- 複合体Ⅲ シトクロムbc1複合体
- 複合体Ⅳ シトクロムcオキシダーゼ
長々と書きましたがいいたいことは次です。
シトクロムとは酸化還元機能を持つヘム鉄を含有するヘムたんぱく質である
ゆえにエネルギー産生過程においてヘム鉄の存在が必須
鉄が不足すると酸素供給のみならず、エネルギー産生もスムーズにいかなくなります。
鉄の働き分析【見た目編】
合計 47.5/60点
薄毛
8点
「薄毛」改善 に関わる鉄の働きは主に次です。
- 酸素の運搬
髪の発育には栄養素と酸素が必要です。これらは毛細血管を通じて血液によって運ばれてきます。
ここで酸素を届けているのが血液中の赤血球です。赤血球は肺から末梢の組織に酸素を届ける役割を果たしています。
より詳しくいうと赤血球の酸素を届ける役割はその主成分であるヘモグロビンの働きによるものです。ヘモグロビンには酸素が多い場所=肺では酸素と結合し、酸素が少ない場所=各組織では酸素を離す性質があります。
ヘモグロビンはヘム【鉄+ポルフィリン】とたんぱく質【グロビン】で構成されています。
そのうちヘムに含まれる鉄と酸素が結びつきます。
鉄は「酸素の運搬」において非常に重要な存在といえます。 - 鉄欠乏症貧血
上と通ずる話になりますが、酸素が十分に届かなくなると血行不良が起きます。それにより髪に必要な栄養素も届かなくなります。なので貧血になると抜け毛が増えます。貧血の中で一番多いのは鉄欠乏症貧血です。
髪にツヤがなくなる・抜け毛が増えるなどの原因に「鉄分不足」も考えられます。参照
放っておくと恐ろしい貧血 はじめよう!ヘルシーライフ オムロン ヘルスケア(株)HP - 発毛エネルギー
細胞のエネルギー源であるATPは発毛の際に必要となります。
毛髪は毛包にて毛母細胞が分裂・分化することで形成・成長していきますが、この際に多くのATPを要します。実際 発毛している時は毛母細胞内にATPが増えていることが確認できています。
なので細胞のミトコンドリアを活性させ、ATPの産生を増やすことでハリやコシのある元気な髪を生みだすことができます。
ミトコンドリアを活性させる≒ヘムを増やすことといえるかもしれません。
というのもヘムはミトコンドリアにおける電子伝達系の複合体 II、Ⅲ、IV、シトクロームcの構成要素だからです。
ヘムはALA(5-アミノレブリン酸)と鉄が結合することで作られます。 -
甲状腺ホルモン
甲状腺ホルモンは脳の下垂体から指令を受けて甲状腺から分泌されるホルモンです。全身の新陳代謝を促進させる働きをします。
甲状腺は喉ぼとけにある蝶々のような形をした部分です。ヘム含有の甲状腺ペルオキシダーゼは甲状腺ホルモンの合成過程で働く酵素です。そのため鉄欠乏症は甲状腺ホルモンの分泌異常につながります。甲状腺ホルモンの分泌異常の症状には「抜け毛」があります。
白髪
8.5点
「白髪」予防 に関わる鉄の働きは主に次です。
- 抗酸化酵素
黒髪のもとメラニンはメラノサイトでアミノ酸【チロシン】に酸化酵素【チロシナーゼ】が作用することで生成されます。
活性酸素の一種「過酸化水素」はチロシナーゼを破壊する働きがあります。なので過酸化水素を除去することが白髪予防につながります。体内には過酸化水素を除去する抗酸化酵素が存在します。カタラーゼおよびグルタチオンペルオキシダーゼです。
これら酵素を活性させることが白髪予防になります。カタラーゼ過酸化水素を水と酸素に分解する反応を触媒する酵素です。
グルタチオンペルオキシダーゼ
ペルオキシダーゼは過酸化水素を用いて電子供与体の酸化反応を触媒する酵素です。
グルタチオンペルオキシダーゼはグルタチオンを用いて過酸化水素を水と酸素に分解する反応を触媒する酵素です。カタラーゼとペルオキシダーゼは活性部位にヘムを持つ金属酵素です。鉄はヘムの構成成分です。
- 貧血
貧血とは、血液中の赤血球の数が少ない状態 or 赤血球中のヘモグロビンの濃度が低い状態のことをいいます。鉄欠乏性貧血とは、ヘモグロビンの主成分である鉄が不足することで起こる貧血です。貧血と白髪は関係しています。
貧血により血流が悪くなり頭皮に十分な血液(栄養素+酸素を含んでいる)が届かなくなると
頭皮にある毛母細胞でケラチン(髪本体)が、メラノサイトでメラニン(黒髪のもと)が十分に作られなくなるからです。ただ貧血→白髪というよりは、白髪→貧血の流れのほうが正しいといえるかもしれません。
貧血の前に白髪が出現する、つまり「最近、やけに白髪が増えた」と感じたら貧血の可能性があると考えてください。
貧血・白髪はこれで治せる―貧血体質と生理痛を治せばシミ・シワ・白髪は消える (リヨン・ブックス)鉄の摂取は貧血の予防になります。それに付随して白髪の予防にもなるといえそうです。
美肌
8点
「美肌」作り に関わる鉄の働きは主に次です。
- コラーゲンの合成
真皮の主成分となっているのがコラーゲン繊維です。コラーゲンは真皮の乾燥重量のうち70%を占め 肌のハリや弾力を生みだしています。若々しい肌を保つためになくてはならない成分です。
※真皮層を拡大したイラストです。ひし形の線部分がコラーゲン。コラーゲン繊維の形成には2価の鉄イオンが必要です。
- シトクロム
ヘムの構成成分である鉄はシトクロムの形成に必須です。シトクロムは以下2点により美肌作りに貢献します。
①ATP産生
細胞のエネルギー源となるのがATPです。肌細胞の生まれかわり=肌のターンオーバーにはATPが必要となります。なので肌の老化を防ぐには体内でATPが絶えず使われている状態=ATPを絶えず作りだしている状態を保つことが大事です。シトクロムはミトコンドリアの電子伝達系【大量のATPを合成する】で活躍します。②代謝水
電子伝達系で伝達された電子は最終的に酸素分子に結合し、さらに酸化酵素の働きで水素イオンと反応し水を生成します。この水はいわゆる「代謝水」と呼ばれるものです。肌の潤いのカギを握るのは水分です。代謝水が増えることで細胞の内側から肌を潤すことができます。
シトクロムはエネルギー産生に欠くことのできない物質=「代謝水」を作り出すのに欠くことのできない物質です。参照
ALA 5-アミノレブリン酸 ララ・ソロモン サステナブル・クルー(株)HP -
ヘモグロビン
鉄はヘモグロビンの構成成分として肌の細胞に必要な酸素を運ぶ役割を果たしています。鉄が不足すると肌の細胞への酸素供給量が減ります。イコール肌の細胞の機能が衰える→美肌成分が減る&新陳代謝が衰える→しわ&たるみが増えるといった流れをたどることになります。
美白
7.5点
「美白」ケア に関わる鉄の働きは主に次です。
- 赤血球
顔の皮膚は他の場所より薄いため皮膚を通して血管を流れる血液の色が反映されてしまいます。つまり血液の色が明るければ肌の色も自然と明るくなります。血液の「明るさ」は酸素を運ぶ役割をする赤血球(の主成分ヘモグロビン)の状態によります。
ヘモグロビンが酸素と結びついているときは血液(赤血球)は鮮やかな赤色をしています。
ヘモグロビンが酸素と離れているときは血液(赤血球)は暗い赤色をしています。血液の赤い色はヘモグロビンの構成成分である「鉄」によります。
というのもヘモグロビンの酸素と結びつく性質はその構成成分である「ヘム」によるもので、ヘムに鉄原子が含まれており、鉄に酸素が結合がするからです。
血液の色を明るくする=肌の色を明るくするためには ヘモグロビンの材料である鉄を取り赤血球を増やす&元気にすることが大切です。
参照
増やせ!元気でかわいい赤血球 NHKBSプレミアム 美と若さの新常識 HPより - エネルギー産生
シミ・くすみのもとメラニンは肌のターンオーバーとともに排出されます。
肌のターンオーバーには大量のエネルギー(ATP)が必要となります。ATPをたくさん作る代謝過程(電子伝達系)に必須のシトクロムはヘム鉄を含有するヘムたんぱく質です。
筋肉
7.5点
「筋肉」増強 に関わる鉄の働きは主に次です。
- ミオグロビン
ミオグロビンは、筋肉中に存在して酸素を貯蔵するヘムたんぱく質です。
ミオグロビンはヘモグロビンによって運ばれた酸素を受け取り筋肉中に貯蔵する役割を果たしています。
酸素に対する親和性がヘモグロビンより高いため、筋肉においてこの【ヘモグロビンから酸素を受け取り貯蔵する】役割を果たすことが出来ます。筋繊維には性質と見た目から速筋と遅筋に分類できます。
速筋
瞬発的な大きな力を発揮する。
赤い色素(=鉄を含むヘム)を持つミオグロビンの量が少ないため白く見える。
遅筋
持続的な力を発揮する 。
赤い色素(=鉄を含むヘム)を持つミオグロビンが多く含まれているため赤く見える。鉄は持久力を向上させるための必須の栄養成分です。
ちょっと前に起きた「鉄剤注射」問題は記憶に新しいところです。 - 一酸化窒素合成酵素(NOS)
一酸化窒素(NO)には血管を拡張させる作用があります。なので体内にNOが多くある状態【=NOが生成されやすい状態】で筋トレをすると、負荷を与えた筋肉への血流が増え、筋肉細胞に水分が集まりパンプアップ状態になりやすいといわれています。パンプアップを起こすことは、間接的に筋肥大につながるとされます。パンプアップ
筋トレで負荷を与え続けることによって、血液中に乳酸などの代謝物質が溜まっていきます。乳酸などが溜まると水分を引きこんで筋肉が膨れ上がります。この状態をパンプアップといいます。
パンプアップが間接的に筋肥大につながるとされているのは以下の流れでです。①負荷を与えた筋肉に乳酸が溜まる→②成長ホルモンが分泌される→
③IGF-1が分泌される→
その筋肉に必要な特定のアミノ酸の輸送が促進される→
=筋肥大
NOの前駆体はアルギニンです。
「アルギニン」と「NADPH」と「酸素」を基質にして、一酸化窒素合成酵素(NOS)の働きにより「シトルリン」と「NO」が産生されます。NOSは活性中心にヘムをもちます。
脂肪
8点
「脂肪」減少 に関わる鉄の働きは主に次です。
- 遅筋
遅筋は持久力が必要な時に使われる筋肉です。具体的にいうと有酸素運動の際に使われます。
遅筋にはミオグロビンという酸素を貯蔵するたんぱく質が豊富に含まれており、有酸素運動時には長い時間に渡って酸素を供給しつづけます。いうなれば脂肪をエネルギーに変えるのをサポートする筋肉です。鉄はミオグロビンの材料です。 - シトクロム
体内に溜まっている脂肪および食事から取り入れた脂質は脂肪酸に分解され、ミトコンドリアに取り込まれβ酸化→TCAサイクル→電子伝達系を経てATPに合成されます。
食事から取り入れた糖質はグルコースまでに分解された後 吸収され、細胞質で行われる解糖系を経てミトコンドリアに取り込まれTCAサイクル→電子伝達系を経てATPに合成されます。さてこの「代謝」が効率よく行われなければエネルギー媒介物質である「ATP」を十分に作りだすことが出来ません。十分に作りだすことができないことは単にエネルギー不足になるだけでなく、今ある脂肪が燃焼されない&脂質や糖質が脂肪として蓄えられるにつながってしまいます。
シトクロムはミトコンドリアの電子伝達系で「電子の受け渡し」に関与し、ATPの産生効率の向上に大きく貢献している物質です。
シトクロムは反応中心にヘム(鉄とポルフィリンの錯体)をもつたんぱく質です。
鉄の働き分析【中身編】
合計 51/60点
身体
10点
「身体」の構成材料 に関わる鉄の働きは主に次です。
- ヘムの原料
ヘムは下記たんぱく質の構成成分です。
◆ヘモグロビンヘムは鉄とポルフィリンの錯体です。鉄は生命維持する&身体活動を行う上で必須の成分といえます。
赤血球の中に存在し、酸素を運搬する役割を果たす◆ミオグロビン
筋肉の中に存在し、酸素を貯蔵する役割を果たす◆シトクロム
細胞内のミトコンドリアに存在し、エネルギー生産に関与する
- DNAの合成
リボヌクレオチド還元酵素はリボヌクレオチドのリボース部分を還元してデオキシリボースにしてデオキシリボヌクレオチドを合成する酵素です。この酵素は活性中心に鉄を含みます。DNAの合成に鉄は必要です。
エネ
10点
「エネルギー」生成 に関わる鉄の働きは主に次です。
- エネルギー産生
こちらは細胞のイラストです。
このうちミトコンドリアにクローズアップします。
ミトコンドリアは外膜と内膜の二重の生体膜で構成されています。外膜はおおもとを囲っている線、内膜はマトリックス(くねくねした部分)の周りの線です。
ミトコンドリアは好気呼吸におけるエネルギー産生の場として、重要な細胞小器官です。ミトコンドリア内膜上にある呼吸鎖複合体において、酸化還元反応を利用したエネルギー代謝により、ATPを産生しています。具体的には、複合体IではNADH、複合体IIではコハク酸をそれぞれ酸化することで、ユビキノンを還元してユビキノールにし、複合体Ⅲでユビキノールを酸化することでシトクロムcを還元します。
複合体IVでシトクロムcが酸化され、酸素分子に電子を伝達することで水に還元します。この過程でミトコンドリア内膜を隔ててH+勾配が生じ、このH+勾配を駆動力としてATPを合成します。引用元
ミトコンドリア呼吸鎖(電子伝達系)複合体と活性酸素種
東邦大学 HP
上記の電子の流れを簡単にまとめたのは次です。
電子の流れ
NADHからの電子
→複合体I→【ユビキノン】→複合体Ⅲ→【シトクロムc】→複合体Ⅳ→【酸素】FADH₂(コハク酸→フマル酸の変化に生じた)からの電子
→複合体Ⅱ→【ユビキノン】→複合体Ⅲ→【シトクロムc】→複合体Ⅳ→【酸素】電子伝達系で伝達された電子は最終的に酸素分子に結合し、さらに水素イオンと結合して水を生成します。
複合体Ⅲから複合体Ⅳへ電子の受け渡しをしている電子伝達体はシトクロムcで、シトクロムcのヘムに含まれる鉄イオンの酸化還元反応を利用して電子の伝達が行われます。
ヘムは複合体の構成要素としても利用されています。電子伝達系の複合体Ⅱ、Ⅲ、Ⅳの構成要素です。- 複合体Ⅱ コハク酸脱水素酵素
- 複合体Ⅲ シトクロムc還元酵素
- 複合体Ⅳ シトクロムc酸化酵素
このようにシトクロム【酸化還元機能を持つヘム鉄を含有するヘムたんぱく質】はミトコンドリアのエネルギー産生過程において必要不可欠な物質です。
つまるところエネルギー産生過程において鉄は必須の成分です。
病気
4.5点
「病気」予防 に関わる鉄の働きは主に次です。
- 骨粗鬆症
骨の7割は無機物で、2割は有機物です(残り1割は水分)。有機物の主成分はコラーゲンです。
骨の強さは骨量+骨質といわれています。骨質に関わるのがコラーゲンです。なのでコラーゲンの減少および劣化は骨の強度低下につながります。
実際骨量が多くても骨粗鬆症になるケースがあり、それがコラーゲンの減少および劣化だとされています。コラーゲンの合成にはビタミンCと鉄が必要です。 - 貧血
貧血を侮ることは危険です。病気の原因になったり、病気にリンクしていたりします。例えば心不全
貧血になると、心臓から拍出された血液が運搬する酸素量が減るので、心臓が脈拍を上げて運搬回数を増やそうとします。その結果、心臓に負担がかかり、高齢者では心不全を起こしやすくなるため、注意が必要です。引用元
貧血を軽視しないで 深刻な症状が表れる場合も
時事メディカルHP 運営会社 (株)時事通信社 (株)キョーイク例えばがん
貧血を侮ってはいけない理由は、その裏に別の病気が潜んでいる場合があるからです。病気による出血が原因となっている場合は、もととなっている病気の治療を行わなければなりません。 実は、がんによっても貧血が引き起こされます。その主ながんは大腸がん、胃がん、食道がんといった消化器系のがんです。~略~
血液のがんである白血病も、貧血を伴う場合がほとんどです。
引用元
vol.151 放っておくと恐ろしい貧血
はじめよう!ヘルシーライフ オムロン ヘルスケア(株)HP貧血予防成分の代表といえる鉄を適量摂取することはさまざまな病気予防につながるといえそうです。
鉄は体内で過剰になると活性酸素を増やします。
なので鉄が体内の組織や臓器に蓄積されると、細胞にダメージを与えます。
そのため鉄の過剰摂取は肝硬変、糖尿病、心不全、がんなどの病気のリスクを高めます。
あくまでも適量摂取が大事となります。
体質
10点
「体質」改善 に関わる鉄の働きは主に次です。
- 貧血
貧血は血液の赤血球やそのなかのヘモグロビンが少ない状態のことをいいます。貧血の原因で圧倒的に多いのは鉄不足=鉄欠乏症貧血です。鉄はヘモグロビンの主成分です。 - 解毒
体内の有害物質(以後、毒物)の多くは肝臓で無毒化されます。肝臓の「解毒」システムは2段階の化学反応を経て行われます。第Ⅰ相反応
第Ⅰ相反応は水溶性を高める反応で、薬物代謝酵素が脂溶性の毒物を排出されやすい形に変換させます。具体的には脂溶性の毒物に水酸基・カルボキシル基・アミノ基など官能基を導入します。
これにより水溶性が向上した毒物は、第Ⅱ相反応に進むことになります。第Ⅱ相反応
第Ⅱ相反応は脂溶性の毒物の官能基に、グルクロン酸、硫酸塩、アミノ酸などの水溶性物質を結合させる反応です。これは抱合反応と呼ばれます。
抱合反応を受けることでさらに水溶性が上昇し尿や胆汁として体外へ容易に排出されるようになります。
抱合反応にはグルクロン酸抱合・グルタチオン抱合・硫酸抱合・アセチル抱合・アミノ酸抱合・メチレーションなどがあります。
※体外へ排出されるプロセスを第Ⅲ相反応として、「解毒」システムを3段階の化学反応としていることもあります。さて第Ⅰ相反応で「薬物代謝酵素が脂溶性の毒物を排出されやすい形に変換させる」と説明しましたが、この薬物代謝酵素の代表ともいえるのがシトクロムP450です。
シトクロムP450は活性中心にヘムを持つ薬物代謝酵素です - 免疫力
鉄は細胞の増殖に必要なDNAの合成に必要な成分です。免疫細胞は骨髄で常に作られています。
新しい免疫細胞を作る(免疫細胞を増殖する)のに鉄が必要です。鉄の摂取は免疫力強化につながります。
看護師・看護学生のためのなぜ?どうして?2020-2021 5 免疫/血液/感染症/呼吸器 (看護・栄養・医療事務・介護他医療関係者のなぜ?どうして?シリーズ) - 疲労回復
鉄はヘモグロビンの構成成分として体内のすみずみに酸素を届ける役割を果たします。またミトコンドリア内でエネルギー代謝に関わるシトクロムの構成成分でもあります。鉄が不足するとだるさや疲れを感じやすくなります。 - 爪
貧血と爪の健康は関連しています。爪が割れやすい・爪が蒼白・爪がスプーン状であれば貧血の疑いがあります。貧血のうち「鉄欠乏症貧血」の疑いがあります。
精力
8.5点
「精力」増強&「性機能」向上 に関わる鉄の働きは主に次です。
- 子宮内粘膜
鉄は子宮内粘膜の材料です。子宮内粘膜を厚くすることで、受精卵が着床する可能性が高くなります。
鉄は子宮内粘膜を厚い状態にし妊娠しやすい体質に導きます。参照
妊娠体質になる鉄分を取り、子宮内環境を整える 日経DUAL 日経BP HP - 妊活
卵子および精子のミトコンドリアを活性させることが卵子および精子の「質」を上げることになります。イコール妊娠しやすい体質を作り上げます。
ミトコンドリアを活性させることは「ミトコンドリアを増やしたり、ミトコンドリアでのATP産生をスムーズにさせること」と捉えることができます。鉄は後者に関わる成分です。シトクロムとしてミトコンドリア内のATP合成を手助けします。
鉄は妊活を応援するサプリの主成分の1つとしてよく配合されています。
【公式】葉酸サプリ エレビット Elevit パウチ 90粒 バイエル薬品 葉酸 ビタミン ミネラル 鉄分 妊活 カルシウム - 妊娠中の貧血
妊娠中は血液を胎児や胎盤などに供給するため鉄の需要が高まります。妊娠後期は血液量が増加するので特に貧血になりやすくなります。 - 生理中の貧血
生理中の貧血も主に鉄欠乏症によるものです。 - NOS
勃起とは、陰茎内にあるスポンジ状の組織「陰茎海綿体」に血流が充満し、海綿体内圧が上昇することによっておこる現象です。
勃起を完成させるはNO(一酸化窒素)の働きが重要となります。というのも海綿体の内皮細胞からNOが大量に放出されることで海綿体の平滑筋が弛緩される=海綿体に血流が流入するからです。
NOはアルギニンを基質にしてNOS(一酸化窒素合成酵素)の働きによりに産生されます。
NOSは活性中心にヘムを含みます。
健脳
8点
「脳」の健康 に関わる鉄の働きは主に次です。
- 酸素の運搬
赤血球(の主成分ヘモグロビン)は体のすみずみまで酸素を届ける働きをしています。当然ですが、脳にもです。
脳は体内で最も酸素を消費する場所で、全体の25%を占めるとされています。なので酸素が不足すると脳の機能はすぐに低下してしまいます。
酸素はヘモグロビンの構成成分である鉄と結合することで運搬されます。酸素の運搬において鉄は最も重要な成分といっても決して言い過ぎではありません。 - 神経伝達物質の合成
神経伝達物質を合成する際に働く酵素「トリプトファン水酸化酵素」「チロシン水酸化酵素」の活性中心に鉄が含まれています。◆トリプトファン水酸化酵素
トリプトファン→5-HTP→セロトニン→5-HIAA
の代謝のうちトリプトファン→5-HTPの反応を触媒する酵素
◆チロシン水酸化酵素
チロシン→L-ドーパ→ドーパミン→ノルアドレナリン→アドレナリン
の代謝のうちチロシン→L-ドーパの反応を触媒する酵素鉄が不足すると、セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンといった神経伝達物質が十分に作られなくなります。うつ病やパニック障害の症状を引き起こしやすくなるとされます。
参照
うつ、パニック障害…“心の病気”は鉄分不足も一因か 本がすき。 (株)光文社HP
過剰な鉄は活性酸素(ヒドロキシラジカル)の産生を強力に触媒します。これは脳に大きなダメージを与えることになります。神経細胞における鉄の異常な蓄積は神経変性疾患(アルツハイマーやパーキンソン病など)を引き起こすとされます。
参照
鉄を介した酸化ストレスの産生と変性疾患
分子生体防御学講座 弘前大学大学院医学研究科 附属高度先進医学研究センターHP
鉄のサプリメント紹介
(FERROCHEL、ビスグリシン酸鉄キレート)
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※価格は記事作成時のものです。価格が変動する可能性があります。
Doctor’s Bestのフェロシェル入り高吸収性鉄はバイオアベイラビリティを高めるのに役立ち、さらに鉄の補給によって引き起こされる悪心や消化不良を予防するためにキレート化されています。キレート化はミネラルが最適に吸収されるよう、腸壁を容易に通過することを可能にするものです。
鉄は正常な赤血球の生産に役立つ必須ミネラルです。体全体に酸素を運ぶヘモグロビンの重要な成分となります。
鉄は葉酸の代謝において重要な役割を果たし、葉酸は胎児の神経系の発達にとって重要です。妊婦の貧血は低出生体重や早産に関連性があります。貧血の最も一般的な原因は鉄欠乏症です。
フェロシェル鉄はビスグリシン酸アミノ酸でキレート化されており、高い吸収性と忍容性を提供します。
- 鉄欠乏症の予防を助けます
- 免疫の健康を助けます
- 細胞生産を助けます
成分表示中の鉄に着目
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1粒=27mg 100粒入り
使用目安 1日=1粒
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鉄のまとめ
分析【見た目編】47.5点
分析【中身編】51点
鉄 酸素の運搬 参照一覧
ミネラル成分の鉄分の働きと1日の摂取量 健康長寿ネット 公益財団法人長寿科学振興財団 HP
鉄 「統合医療」情報発信サイト HP
(2)微量ミネラル ①鉄(Fe) 厚生労働省 PDF
ポルフィリン合成受託サービス フナコシ(株)HP