L-カルニチン
ビタミン様物質の1種
アミノ酸の誘導体
L-カルニチンとは
カルニチンついて
- カルニチンはビタミンBTとも呼ばれるビタミン様物質です。
ビタミン様物質
ビタミン様物質とはビタミンと似た生理作用をもっている有機化合物のことをいいます。ビタミン同様に代謝において重要な役割を果たします。
が、ビタミンの定義から外れているためこのように呼ばれます。
ビタミンの定義は「必要量は微量であるが、体内で合成できない」「合成できたとしてもその量が十分でなく外から取り入れなければならない」です。
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カルニチンはアミノ酸の誘導体です。必須アミノ酸のリジンとメチオニンから合成されます。
- カルニチンはL-カルチニンとその誘導体アセチル-L-カルチニンなどの総称です。
L-カルニチンについて
- L-カルニチンは体内に約16g存在しています(成人男性・体重約70㎏)。そのほとんどは筋肉中に存在しています。
約95%~筋肉中に、約1.6%~は肝臓、腎臓に存在します。細胞外液中にもわずかに存在します。 - 生体内では、遊離カルニチンまたはアシル基と結合したアシルカルニチンとして存在しています。
アシルカルニチンのほとんどはアセチルカルニチンです。体内にあるカルニチンの約10%はアセチルカルニチンです。 - L-カルニチンは「脂質の」エネルギー産生に必須の成分です。
- 脂肪酸(長鎖脂肪酸)がミトコンドリアでβ酸化されるにはL-カルニチンの存在が不可欠です。
L-カルニチンが脂肪酸をミトコンドリア内に運ぶ役割を果たしているからです。 - L-カルニチンが不足すると脂肪酸はミトコンドリアに運搬されず、脂肪酸をエネルギーに変換することができなくなります→エネルギー不足に陥ります。
.
それだけでなくミトコンドリアに運ばれなかった脂肪酸は脂肪細胞に運ばれ、「脂肪」として蓄積されます→肥満につながります。 - L-カルニチンを摂取することで疲労回復効果、ダイエット効果が見込まれます。
- L-カルニチンの働きは「脂肪酸をミトコンドリアに運搬することでエネルギー産生を促進する」以外にも「ミトコンドリア内のアシルCoA/遊離CoAの比率を調節する」や「赤血球膜などの生体膜の安定性を維持する」が挙げられます。
L-カルニチンの補足 その1
- L-カルニチンはリジンとメチオニンから体内で合成できます。
- L-カルニチンの生合成の大まか流れは以下です。
リジン+メチオニン→トリメチルリジン→ブチルベタイン→L-カルニチン生体内でL-カルニチンはリジンがSAMe(S-アデノシルメチオニン)によりトリメチル化されて作られます。トリメチル化された後にさらにいくつかの酵素反応を受けて作られます。
各酵素反応における補酵素としてビタミンC・ビタミンB6・ナイアシン・鉄が必要です。
- なのでL-カルニチンの供給源は体内合成と食事由来の2つです。
ただし、その多くは食事由来です。体内のカルニチンの約75%は食事由来です。 - 食品中には羊肉や牛肉に多く含まれています。
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- なお合成量は加齢とともに低下します。
L-カルニチンの補足 その2
- カルニチンにはL-カルチニンとD-カルニチンあります。分子式が同じで構造が違う異性体の関係です。
- 生理活性を有するカルニチンはL-カルニチンです。D-カルニチンには生理活性はないとされています。それどころか、D-カルニチンは競合的にL-カルニチンの活性を阻害する作用があります。
- サプリで流通しているのはL体のみです。
D体はラセミ体であるDL-カルニチンとして、消化管機能低下に対する胃薬として利用されています。 - 先に説明したようにD-カルニチンはL-カルニチンに対して拮抗作用を有します。そのためL-カルニチン欠乏症を引き起こすことがあります。
現在 DL-カルニチンの使用はあまり勧められていないようです。 - L-カルニチンのサプリの原料は数種類あります。L-カルニチン、アセチル-L-カルニチン、L-カルニチンL-酒石酸塩、L-カルニチンフマル酸塩などです。
摂取量について
1000㎎/日
厚生労働省はL-カルニチンの1日摂取量の上限を1000mgとしています。
◆実際摂取量
約75㎎/日
平均的なアメリカ人で約100~300㎎/日摂取していると言われています。
オセアニア地域の人は約300~400㎎/日摂取していると言われています。
食生活の違いから日本人はもっと低く約75㎎/日と言われています。
◆体内合成量
約20㎎/日
1日約20㎎体内で合成されます。
※以後 文章内ではL-表記を省きます。
L-カルニチンの効果・効能
L-カルニチンの効果・効能 3つ厳選
- 脂質代謝
- アシルCoA/遊離CoAの調節
- 脳機能改善
そのうち3つを詳しく
①脂質代謝
カルニチンは細胞内へ脂肪酸を運搬する役割を担っています。
それゆえに脂質代謝に必須の成分です。
脂肪燃焼を説明しながら、カルニチンの「役割」について説明します。
脂肪の分解
脂肪の燃焼は中性脂肪を脂肪酸とグリセリンに分解する過程から出発します。
分解されて生じた脂肪酸がエネルギー媒介物質「ATP」に変換されて(&消費されて)脂肪の燃焼が完成します。
まずは中性脂肪の分解過程について説明します。
食事由来の中性脂肪
食事より摂取した脂質の大部分は中性脂肪として摂取されます。
十二指腸で、すい臓より分泌される酵素リパーゼの働きによりグリセリンと脂肪酸に分解され、小腸絨毛上皮細胞から吸収されます。
吸収された後、脂肪酸とグリセリンは再び中性脂肪に再合成され、さらにこれにアポタンパク質が結合して、カイロミクロンというリポタンパク質になり血中を移動します。
カイロミクロンはリンパ管を経て血中に入ると、血管壁に存在するリポ蛋白リパーゼ(LPL)に働きによって脂肪酸とグリセリンに分解されます。
そのうち脂肪酸が筋肉や脂肪組織に取り込まれて、筋肉でエネルギー源として消費あるいは脂肪組織において脂肪として貯蔵されます。
体内の中性脂肪
脂肪組織にて中性脂肪として蓄積されたもの=体脂肪は、ホルモン感受性リパーゼ(HSL)の働きによって分解されます。その脂肪酸は血中に放出され、筋肉でエネルギー源として消費されます。
HSLが活性化されるのは空腹時や運動時です。空腹時や運動時に脂肪動員ホルモン(アドレナリン・グルカゴン・成長ホルモンなど)が分泌されるとHSLが活性化されます。
LPL・HSLともに脂肪を分解する酵素ですが、
LPLは【血中脂肪を分解して】脂肪細胞内に取り込む=体脂肪として溜める要素が強く
HSLは【体脂肪を分解して】脂肪細胞外に放出させる=脂肪を分解してエネルギーとして利用する要素が強く なっています。
脂肪酸→ATP
脂肪酸がATPに変換される過程は
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です。
脂肪酸が→に進むにはミトコンドリアに運ばれる必要があります。
出典元
L-カルニチンとは
機能性食品 L-カルニチン
ILS(株)
ミトコンドリアに脂肪酸を運搬するのがカルニチンの役割です。
カルニチンの「役割」
先の出典元のイラストを文章にて説明します。
イラストの矢印の色と文章の括りの色をリンクさせて説明します。
脂質→脂肪酸+カルニチン🚚→ミトコンドリア→ATPエネルギー産生🔥
脂肪酸はアルブミンというたんぱく質と結合し、筋肉の細胞に運ばれます。そして細胞質に取り込まれた後、活性化され脂肪酸アシルCoAに変換されます。
脂肪酸をエネルギーに変える場所はミトコンドリアのマトリックスです。
ミトコンドリアは外膜と内膜の二重の生体膜で構成されています。外膜はおおもとを囲っている線、内膜はくねくねした部分の線です。内膜はクリステと呼ばれるひだ状構造を持ちます。内膜に囲まれた内側をマトリックスといいます。
ただし、脂肪酸は脂肪酸アシルCoAのままではミトコンドリアの内膜を通過することができません。
一時的にカルニチンと結合し脂肪酸アシルカルニチンになることでミトコンドリア内膜を通過することができます。
ここで脂肪酸アシルカルニチンになれなければ脂肪に逆戻りすることになります。
なお脂肪酸アシルCoAから脂肪酸アシルカルニチンへ変換する反応を触媒する酵素は外膜に存在するCPT1です。
ミトコンドリアに内部に移動した脂肪酸アシルカルニチンは、ミトコンドリア内膜の内側に存在する酵素CPT2の働きによりカルニチンと脂肪酸アシルCoAに分かれます。
その後、脂肪酸アシルCoAはミトコンドリアのマトリックスにてβ酸化を受けアセチルCoAになります。
アセチルCoAは、TCA回路に組み込まれます。
TCA回路にてアセチルCoAはオキサロ酢酸と縮合反応しクエン酸となり、
そのクエン酸が8種類の酸に次々と変化していきます。
アセチルCoAはTCA回路を一巡する間に完全に燃焼します。
そして最終的に二酸化炭素(と水)になります。
その過程で生じた水素を水素受容体であるNAD⁺(及びFAD)が受け取ります。
→NAD⁺(及びFAD)は水素と結合することでNADH(及びFADH2)になります。
生じたNADH(及びFADH2)はミトコンドリアの電子伝達系に送られます。
なおカルニチンは細胞質に戻り再利用されます。
電子伝達系、酸化的リン酸化を経てATPエネルギー産生が産生されます。
電子伝達系はミトコンドリア内膜のたんぱく質複合体や補酵素間で電子(解糖系・β酸化・TCA回路で生じ、NADHやFADH₂で運搬してきた)のやり取りが行われる過程のことをいいます。
これにより生じるプロトン濃度勾配を利用してATPの合成が行われます。電子伝達系に共役して起こる一連のATP合成反応は酸化的リン酸化と呼ばれます。
まとめ
脂肪酸は単独ではミトコンドリア内に入ることができません。
「カルニチンと結合することで初めて入る」ことができます。
この一言が脂質代謝におけるカルニチンの重要性を物語っています。
カルニチンが不足すると脂肪酸はミトコンドリアに運搬されず、脂肪酸をエネルギーに変換することができなくなります。
ゆえにエネルギー不足に陥ります。
それだけでなく、ミトコンドリアに運ばれなかった脂肪酸は脂肪細胞に運ばれ、「脂肪」として蓄積されます。
ゆえに肥満につながります。
カルニチンの存在は、エネルギー産生のみならずダイエットの観点においても非常に重要です。
ここでの脂肪酸は長鎖脂肪酸のことです。
中鎖脂肪酸はカルニチンと結合することなくミトコンドリアに入ることができます。
長鎖脂肪酸と中鎖脂肪酸の特徴(違い)
- 炭素数14~
- 水に溶けにくいため胆汁酸によってミセルを形成しなければならない。
- 小腸から消化、吸収された後にリンパ管や静脈を通って全身に運ばれる。
- 脂肪組織や筋肉や肝臓などに蓄積され、エネルギーが必要な時にβ酸化を受け分解される。
- β酸化される(ミトコンドリア内に入る)にはカルニチンとの結合が必要となる。
- 炭素数8~12
- 胆汁酸によるミセル化が不要である。
- 小腸から門脈経由で直接肝臓に運ばれる。
- 肝臓に到着すると素早くβ酸化を受け分解される。
- カルニチンと結合せずともミトコンドリア内に輸送される
②アシルCoA/遊離CoAの比率調節
カルニチンの主たる役割は前述した細胞内への脂肪酸輸送です。
それ以外にもミトコンドリア内のアシルCoA/遊離CoAの比率を調節するといった役割も果たします。
これはミトコンドリア内の遊離CoAのプール維持につながります。
まず前提として、ミトコンドリア内の遊離CoAのプールには限りがあります。
ご覧の通りアセチルCoAは脂肪酸代謝の中間代謝物のみならずグルコース代謝の中間代謝物でもあります。
出典元
ケトン体・ケトン食とは
中鎖脂肪ケトン食
ミトコンドリア内の遊離CoAはピルビン酸デヒドロゲナーゼ(ピルビン酸をアセチルCoAに変換する酵素)の活性維持に関与しています。
ようは遊離CoAは糖質燃焼にも必要です。
脂肪酸のβ酸化では大量のアセチルCoAが生成されますが、この過程では大量の遊離CoAが必要となります。
するとミトコンドリア内の遊離CoAプールが維持できなくなり、糖質燃焼・他の代謝に影響を及ぼすことになります。
脂肪酸分子はβ-酸化によって大量のアセチルCoAを産生するが,このプロセスでは十分量の遊離CoAが必 要になる.遊離CoAが欠乏する状態では糖質燃焼も滞るため,それへの対応策としてピルビン酸からは乳酸への一時変換が,アセチルCoAからはケトン体を生成させて急場を凌ぐものと考えられている.
引用元
日本人とL-カルニチン:Low doseに目を向けて
J-STAGE
特に食後は、過剰にアセチルCoAが生成される(ミトコンドリアにおける アセチルCoAの生成量がTCA回路の許容量を上回る)ので、ミトコンドリア内の遊離CoAが大量に消費されることになります。
このような状況において、カルニチンは以下の反応により遊離CoAを確保するように働きます。
アセチルCoA+カルニチン→アセチルカルニチン+遊離CoA
→の反応を触媒する酵素はカルニチンアセチルトランスフェラーゼ (CrAT)
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生じたアセチルカルニチンは細胞から血中に移動します。
ということで、カルニチンがミトコンドリア内に十分に存在していれば、【ミトコンドリア内のアシルCoA/遊離CoAの比率が調節されるので】脂質代謝はもとより糖質燃焼・他の代謝にもプラスの影響をもたらします。
つまり、L-カルニチンが欠乏すると結果的に遊離CoAプールが維持できなくなり、脂肪酸代謝だけではなく、糖新生、尿素回路、解糖系、TCA回路などにも悪影響を与えるため、中枢神経への影響も大きい.
引用元
神経・筋疾患における L-カルニチン欠乏症と治療
J-STAGE
③脳機能改善
体内にあるカルニチンの一部(約10%)はアセチル化されたアセチルカルニチンとして存在します。
上では「生じたアセチルカルニチンは細胞から血中に移動します」で終わらせましたが、続きがあります。
細胞外に分泌されたアセチルカルニチンはカルニチンとは異なる生理機能を発揮します。
それが脳機能改善効果です。
アセチルカルニチンは【アセチルコリンを増やす】と【グルタミン酸&GABAの合成に関与する】の2ルートにより脳機能を向上させます。
アセチルコリン
アセチルコリンは脳内の神経伝達物質として機能し、記憶や学習に関与します。なので脳内でアセチルコリンが増えれば記憶力や集中力のUPにつながります。逆に脳内のアセチルコリンが不足すると脳機能は低下します。
アセチルコリンはシナプス前細胞内で、コリンとアセチルCoAを基質にして 酵素コリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)の作用により生成されます。
アセチルカルニチンは血液脳関門を通過して脳内に到達しアセチルコリンの産生を促し、脳機能を改善させます。
出典元
用途のご紹介
機能性食品 L-カルニチン
ILS(株)
脳内に到達したアセチルカルニチンはアセチル受容体であるCoAにアセチル基を転移させてアセチルCoAを生成します。それがコリンに受け渡されてアセチルコリンが生成されます。
グルタミン酸&GABA
グルタミン酸は中枢神経系における興奮性の神経伝達物質として機能しています。TCA回路の中間体α-ケトグルタル酸からアミノ基転移酵素の働きによりアミノ基の転移反応を受け合成されます。
脳内に運ばれたアセチルカルニチンは、そのアセチル基がTCA回路に入ります。その後にグルタミン酸の合成に利用されています。
γ-アミノ酪酸(GABA)は中枢神経系における抑制性の神経伝達物質として機能しています。
脳内ではグルタミン酸が脱炭酸されてGABAが生成されます。
脳内に運ばれたアセチルカルニチンはグルタミン酸を介してGABAの合成にも関わっていることになります。
脳内でアセチルカルニチンは、そのアセチル基がTCAサイクルに入りしようされ、その後にグルタミン酸の合成に利用されている。この一部はグルタミン、 アスパラギン酸、γ-アミノ酪酸の合成に利用される。
引用元
序論:カルニチンの基礎と臨床
生物試料分析
L-カルニチンの働き分析【見た目編】
合計 43/60点薄毛
6点
「薄毛」改善 に関わるL-カルニチンの働きは主に次です。
- 発毛エネルギー
細胞のエネルギー源であるATPは発毛の際にたくさん必要となります。なのでエネルギー産生工場と呼ばれるミトコンドリアを活発にさせることが「発毛」にとって大切です。
カルニチンにはミトコンドリア賦活作用があります。
白髪
6点
「白髪」予防 に関わるL-カルニチンの働きは主に次です。
- 発毛エネルギー
頭皮は細胞分裂が活発な場所です。一方で生命に関わらないためエネルギーの供給が体の中で一番後回しにされています。頭皮に存在する毛母細胞、毛乳頭細胞、色素細胞など「髪」に関わる細胞が機能するには多くのエネルギーを要します。なのでエネルギーが不足すると体内において髪が最も影響を受けると考えられます。
影響を受ける=薄毛&白髪になる です。カルニチンはエネルギー産生を促す成分です。
美肌
6.5点
「美肌」作り に関わるL-カルニチンの働きは主に次です。
- 肌のターンオーバー
細胞のエネルギー源となるのがATPです。肌細胞の生まれかわり=肌のターンオーバーにはATPが必要となります。
カルニチンは脂質代謝に必須の成分です。不足すると脂肪からATP作ることができなくなります。
肌細胞の生まれ変わりに必要なATPの供給源としてカルニチンの存在が重要となります。
事実、肌荒れの原因の1つにカルニチンの減少が挙げられています。皮膚においても、L-カルニチンが脂肪酸の燃焼を促し、表皮細胞が顆粒層から角質層に変化するためのエネルギーを供給すると考えられている。L-カルニチンが減少すると、角質層を形成するためのエネルギー供給が減り、肌荒れの原因になると考えられる。
引用元
カネボウ化粧品、皮膚のバリア機能高める塩化レボカルニチンを開発
日経メディカル 日経BP - 抗AGEs作用
糖化とは体内に余った糖質がたんぱく質とくっつき、たんぱく質を劣化させる現象のことをいいます。糖化によって作られるのがAGEs(終末糖化産物)です。AGEsが体内に蓄積されるといわゆる老化が進みます。
特に体内のコラーゲンがダメージを受けるといってもいいかもしれません。コラーゲン繊維は架橋によって分子間がつながっていますが、糖化されると この架橋が無秩序かつ過剰に形成されるようになります。通常は「コラーゲン架橋」ですが、無秩序かつ過剰に形成された架橋は「悪玉架橋(AGEs架橋)」と呼ばれます。
コラーゲンは肌の真皮の主成分です。そこで悪玉架橋ができるとコラーゲン繊維のしなやかさが失われ、ハリ・弾力が低下してしまいます。イコール肌の老化です。
カルニチンにはAGEsの蓄積を抑制する抗AGEs作用があります。参照
カルニチンの抗AGEs作用とは?
Web医事新報(株) 日本医事新報社
美白
6.5点
「美白」ケア に関わるL-カルニチンの働きは主に次です。
- 抗酸化作用
シミの原因となるメラニンは活性酸素の攻撃から肌(の細胞)を守るために作られます。なので体内に活性酸素が過剰に発生するとメラニンはたくさん作られます。
たくさん作られたメラニンが肌のターンオーバーともに排出されなければシミとなって肌の表面に現れます。
カルニチンには抗酸化作用があります。また,カルニチンは抗酸化作用があることも報告されている.例えば,カルニチンの投与により,抗酸化物質であるグルタチオンが増加したり,抗酸化酵素の発現が増加する.
引用元
全自動二次元電気泳動装置(Auto2D)を用いたカルニチンの抗酸化作用の解析
J-STAGE - 抗糖化
肌に透明感がなくなり、黄色くくすむ現象を黄くずみと言います。
糖化は黄くずみの原因となります。糖化により生成されるAGEsが茶褐色の物質だからです。AGEsが肌の内側に蓄積すると肌が黄色くくすむようになります。
カルニチンにはAGEsの蓄積を抑制する抗AGEs作用があります。
筋肉
8点
「筋肉」増強 に関わるL-カルニチンの働きは主に次です。
- アンドロゲン受容体
アンドロゲンは男性ホルモンの総称をいいます。テストステロン、アンドロステンジオン、デヒドロエピアンドロステロンなどの総称のことですが、ここではテストステロンのことと捉えてください。テストステロンは筋たんぱく質の合成を促すホルモンとして有名です。テストステロンは筋肉内のアンドロゲン受容体に結合することで合成を促します。
カルニチンにはアンドロゲン受容体を増やす働きがあります。カルニチンの摂取はテストステロン値アップにつながります。リンク - 筋肉痛
カルニチンの摂取は筋肉痛の低減につながるとされています。
これは、カルニチンに毛細血管を拡張する働きがある(→血流を改善することで、筋肉細胞の損傷を防ぐ)&運動中に発生する活性酸素を除去する働きがある(→活性酸素は筋肉細胞にダメージを与える)からだと考えられています。
脂肪
10点
「脂肪」減少 に関わるL-カルニチンの働きは主に次です。
- 脂質代謝
体内に蓄積されている脂肪および食事から取り入れた脂肪は脂肪酸に分解され、ミトコンドリアに取り込まれ、β酸化→TCAサイクル→電子伝達系を経てATPに合成されます。
脂肪は分解されても、生じた脂肪酸がATPに変換されなければ中性脂肪として体に蓄えられることなります。カルニチンは「ミトコンドリアに取り込まれ、β酸化→TCAサイクル→電子伝達系を経てATPに合成」の流れに必須の存在です。
というのも脂肪酸(長鎖脂肪酸)はカルニチンと結合しないとミトコンドリアに入ることができないからです。
カルニチンを摂取することは、ダイエットにおいて「当たり前」です(と思います)。
L-カルニチンの働き分析【中身編】
合計 48/60点
身体
5点
「身体」の構成材料 に関わるL-カルニチンの働きは主に次です。
- 筋肉
カルニチンは体内に約16g存在しています(成人男性・体重約70㎏)。そのほとんどは筋肉中に存在しています。
カルニチンは筋肉細胞のミトコンドリア内に脂肪酸を取り込むのに必須の成分です。
個人的な意見として、(筋肉を作るアミノ酸ではないのですが)筋肉を構成する成分の一部と捉えてもいいと思います。
エネ
10点
「エネルギー」生成 に関わるL-カルニチンの働きは主に次です。
- エネルギー産生
脂肪は栄養素の中で最も効率の良いエネルギー源です。
脂肪の構成成分で脂肪のエネルギーの約90%を占める長鎖脂肪酸はカルニチンがないとエネルギーに変換されません。
なぜならカルニチンが長鎖脂肪酸を燃焼させる場所である「ミトコンドリア」に運搬する役目を果たしているからです。
病気
7点
「病気」予防 に関わるL-カルニチンの働きは主に次です。
- 心筋症
心筋細胞は主に長鎖脂肪酸をエネルギー源としています。ということで心臓にとってカルニチンは重要です。カルニチンの不足は心筋症を引き起こすことがあります。※カルニチンはもともと心臓病の治療薬として用いられてきました。2002年12月より食品としての利用が認められています。
- 肝疾患
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◆脂肪肝/NASH
脂肪肝はアルコール性と非アルコール性の2種類があります。前者は「アルコールの飲みすぎ」による脂肪肝で、後者は生活習慣(過栄養、偏った食生活、運動不足)や遺伝による脂肪肝です。
非アルコール性の脂肪肝はNAFLDと呼ばれています。
NAFLDはnon-alcoholic fatty liver diseaseのことで、日本語では非アルコール性脂肪性肝疾患のことをいいます。
NAFLDは NAFL(non-alcoholic fatty liver 非アルコール性脂肪肝)とNASH(non-alcoholic steatohepatitis 非アルコール性脂肪肝炎 )とに分かれています。うちNASHは肝疾患へと進行する可能性がある脂肪肝です。
ミトコンドリアの機能を改善するカルニチンはNASHに対して有効とされます。◆肝性脳症
体内で産生されたアンモニアは、通常は肝臓の尿素サイクルにて解毒されます。
肝機能が低下すると尿素サイクルの活性が低下します。そうすると血液中のアンモニア濃度が上昇します。血液中のアンモニア濃度の上昇は「肝性脳症(アンモニアなどが脳に達することによって、脳神経機能が低下して意識障害などの症状が起こる状態) 」の原因の一つです。さてこちらをご覧の通り、肝臓ではさまざまな代謝が行われています。
出典元
オルニチンの疲労回復効果
オルニチン研究会尿素サイクル(オルニチンサイクル)の他にも糖新生、脂肪酸代謝など様々な「代謝」が複雑に「連携」されて行われています。
連携の中心となっているのはミトコンドリアのエネルギー代謝です。なのでミトコンドリアを活性させることは様々な「代謝」の活性につながります。ここでいうと尿素サイクルの活性につながります。この観点より、肝性脳症の治療にカルニチンの投与が有効だと考えられています。
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有害なアシルCoAの除去
ミトコンドリア内における有害なアシルCoAの蓄積はTCA回路や尿素サイクルの働きを阻害し、ミトコンドリアの機能低下、高乳酸血症、高アンモニア血症などを引き起こします。出典元
栄養改善データベース
feed M.E
アボットカルニチンは、蓄積したアシルCoAのアシル基を受け取ってアシルカルニチン(カルニチンエステル)となって細胞の外に出て【=有害なアシルCoAを細胞内より除去する】、最終的に尿中へ排泄されます。
- 糖尿病
効果・効能欄「アシルCoA/遊離CoAの比率調節」で説明しましたが、カルニチンは間接的に糖代謝にも関与しています。なので糖尿病にも有効だと考えられます。
実際、糖尿病患者にカルニチンを投与することで、糖代謝機能が改善することが報告されています。
研究により「カルニチンがトリメチルアミン-N-オキシド(TMAO)を産生する」との報告がされています。腸内細菌がカルニチンを代謝する際、TMAOを形成するとのことです。TMAOは動脈硬化の危険因子です。
参照
赤身肉は是か非か カルニチン論争勃発!?
ダイヤモンド・オンライン (株)ダイヤモンド社
体質
7点
「体質」改善 に関わるL-カルニチンの働きは主に次です。
- 疲労回復
カルニチンは脂肪酸をミトコンドリア内に運ぶ役割をしています。カルニチンが不足すると脂肪酸はミトコンドリア内に運搬されなくなります=エネルギーに変換されなくなります。
エネルギー産生を促進するカルニチンには疲労回復効果が期待できます。 - 冷え性
熱はエネルギーを産生する&利用する際に放出されます。なのでエネルギーがしっかりと作られないと、体内で「熱」が生まれにくくなります。
その点より、カルニチンの摂取は冷え性対策にもなります。 - こむら返り
自分の意志とは関係なく、足の筋肉が突然痙攣をおこすことを「足がつる」または「こむら返り」といいます。
カルニチンは体内において、そのほとんどが筋肉に存在します。そして筋肉細胞内にエネルギー源となる脂肪酸を運搬する役割を果たしています。
こむら返りの原因の1つが体内のカルニチンの低下です。 - 貧血
貧血の種類の1つに腎性貧血があります。腎性貧血とは、腎臓で作られている造血ホルモン「エリスロポエチン」の分泌が減ることで、赤血球をつくる能力が低下することでおこる貧血です。血液透析患者さんに多い貧血です。
カルニチンには赤血球膜の生体膜の安定性を維持する働きがあります。腎性貧血の発症原因の1つにカルニチン欠乏が関与しているといわれています。
精力
10点
「精力」増進&「性機能」向上 に関わるL-カルニチンの働きは主に次です。
- 女性不妊症
産婦人科やレディースクリックで不妊治療の一環としてカルニチンサプリの摂取がよく勧められています。リンク
これは「ミトコンドリアの活性」が関係しています。女性不妊の原因の一つは卵子の老化です。
卵子には多くのミトコンドリアが存在しています。ミトコンドリアの機能低下が卵子の老化につながるとされています。なので卵子のミトコンドリアを活性させることができれば卵子の老化を遅らせ、その質を保つことができます。カルニチンは長鎖脂肪酸をミトコンドリア内に運ぶことでエネルギー産生を促進させます。「ミトコンドリアのエネルギー産生を促進」イコール「ミトコンドリアを活性させる」です。
カルニチンは不妊に悩んでいる女性を「妊娠しやすい体質にする」のを強力にサポートします。 - 男性不妊症
ミトコンドリアを活性させる働きは、当然ですが精子にも当てはまります。実験により、カルニチンを摂取することで、精子の濃度の向上や精子の運動率が上がることが報告されています。参照
カルニチンで精子が元気になる! 精子無力症患者30人中4人で、おめでた
日経メディカル 日経BP
健脳
9点
「脳」の健康 に関わるL-カルニチンの働きは主に次です。
- 脳機能改善
アセチルコリンは脳内の神経伝達物質として記憶・認知・学習に関与します。アセチルコリンは神経細胞内でコリンとアセチルCoAを基質にしてChATの作用により生成されます。
出典元
アセチルコリン
脳科学辞典生成されたアセチルコリンがシナプス間隙に放出されシナプスの後膜にあるアセチルコリン受容体と結合すると作用します。
アセチルカルニチンは血液脳関門を突破し、脳内に入りこむことができます。
脳内に到達したアセチルカルニチンはアセチル受容体であるCoAにアセチル基を転移させてアセチルCoAを生成します。それがコリンに受け渡されてアセチルコリンが生成されます。ようはアセチルカルチンは脳内のアセチルコリンの量を増やすです。
アセチルカルニチンはカルニチンの代謝産物です。
カルニチンの摂取は認知機能向上や認知症の予防になるとされています。※アセチルコリンを増やす以外にもグルタミン酸&GABAの合成に関与することで脳機能を改善させます。
- 脳保護
アセチルカルニチンには抗酸化作用があります。神経細胞を酸化障害から守ります。アセチル-L-カルニチン(ALCAR)は生体内に存在する化合物であり,クエン酸回路へのエネルギー源の供給と抗酸化作用によって脳保護効果を有するといわれている。
引用元
カルニチンエステルの脳保護作用:スピン解析による検討
KAKEN 科学研究費助成事業データベース
L-カルニチンのサプリメント紹介
Now Foods, L-カルニチン、1000 mg、100粒
iHerb.com
ALLMAX Nutrition, L-カルニチン+酒石酸塩、120カプセル
iHerb.com
アセチル-L-カルニチンがメイン成分のサプリメントを紹介します。
L-カルニチンのまとめ
分析【見た目編】43点
分析【中身編】48点
L-カルニチン 脂質代謝 参照一覧
カルニチン 「統合医療」情報発信サイト 厚生労働省
『カルニチン欠乏症の診断・治療指針 2018』 公益社団法人 日本小児科学会
L-カルニチン情報サイト ロンザジャパン(株)
L-カルニチンのリラックス効果 サプリメントとしての可能性 L-カルニチン情報サイト
L-カルニチン | 減量効果は?摂取量やタイミングは?副作用は? マイプロテイン公式サイトブログ
THE HUT GROUP HP
カルニチン J-STAGE
骨格筋におけるカルニチン:動態解析から見えた新たな役割 J-STAGE
骨格筋エネルギー代謝におけるカルニチントランスポーターの役割 J-STAGE
アセチルカルニチン測定による脂肪酸β酸化活性の評価 J-STAGE
カルニチンの脂質栄養効果と脳の抗老化作用の研究 J-STAGE
神経・筋疾患におけるL‐カルニチン欠乏症と治療 J-STAGE
日本人とL-カルニチン:Low doseに目を向けて J-STAGE
透析とカルニチン J-STAGE
全自動二次元電気泳動装置(Auto2D)を用いたカルニチンの抗酸化作用の解析 J-STAGE
健康食品
序論:カルニチンの基礎と臨床 生物試料分析
骨格筋のカルニチン代謝と老化 日本基礎老化学会
L- カルニチンの脂肪酸に対する 心筋ミトコンドリア保護作用 川崎医療学会誌 学校法人 川崎学園
たまった脂肪は「L-カルニチン」でぐんぐん燃やせ! 日経グッデイ 日本経済新聞社
ダイエット成分のカルニチン、ヒットの兆し ゼリー飲料、ペット飲料、サプリなどが幅広く登場
日経メディカル 日経BP
疾肝啓発〜よくわかる肝臓の病気〜 あすか製薬(株)