フェニルアラニンの評価 A+
フェニルアラニン
たんぱく質は筋肉、臓器、皮膚、骨、髪、血液などの材料となっています。
人間の体を構成するたんぱく質は主に20種類のアミノ酸が数十~数百個以上結合し複雑に組み合わさることで作られます。組み合わせが違うため、たんぱく質の形・性質・働きが異なっています。
たんぱく質の働きは大きく構造的役割と機能的役割の2つにわけられます。
「構造的」は筋肉・皮膚・髪・結合組織などを構成するたんぱく質の役割です。
「機能的」は酵素・ホルモンなどを構成するたんぱく質の役割で、生体内の化学反応を触媒する・生理機能を調整する働きをします。
フェニルアラニンはたんぱく質を構成する20種類のアミノ酸の1種です。
20種類のアミノ酸は9種類の必須アミノ酸(体内で合成できないもの)と11種類の非必須アミノ酸(体内で合成できるもの)に分けられています。
必須アミノ酸(9種類)
ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、バリン、フェニルアラニン、トレオニン(スレオニン)、トリプトファン
非必須アミノ酸(11種類)
アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、システイン、プロリン、セリン、チロシン
フェニルアラニンは必須アミノ酸に分類されます。
非必須アミノ酸チロシンの材料です。フェニルアラニン水酸化酵素の働きによりフェニルアラニンにヒドロキシ基が付加されてチロシンに変換されます。
チロシンは【カテコールアミン・メラニン色素・甲状腺ホルモン】の前駆体として生体内で重要な役割を果たしています。
カテコールアミン
カテコールアミンとは分子内にカテコール骨格をもつ生体アミンの総称です。総称ではありますが、実際はドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリンの3つを指すことが多いです。
カテコールアミンはチロシンから生合成されます。
その代謝経路は次です。
チロシン→L-ドーパ→ドーパミン→ノルアドレナリン→アドレナリン
- チロシン→ドーパ チロシン水酸化酵素
- L-ドーパ→ドーパミン 芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素
- ドーパミン→ノルアドレナリン ドーパミンβ-水酸化酵素
- ノルアドレナリン→アドレナリン フェニルエタノールアミンN-メチル基転移酵素
.
ストレスが続くとカテコールアミンの消費が激しくなり、チロシンが不足する可能性があります。
なので大きなストレスを感じる時は、チロシンを意識して摂取することが大切となります。
それと同時にフェニルアラニンも意識してください。
フェニルアラニンはカテコールアミンの前駆体であるチロシンの原料だからです。
.
フェニルアラニンの摂取により、体内のチロシンの増加およびカテコールアミンの分泌が高まることが期待できます。
フェニルアラニンの効果・効能
神経伝達物質の材料
チロシンはアドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミンといった神経伝達物質の材料となっています。
フェニルアラニンはチロシンの材料です。体内で酵素の働きによりチロシンに変換されます。
アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミンの3つはホルモンとして、神経伝達物質として生体内で重要な役割を果たしています。
3つの生体内での役割を簡単にまとめます。
脳に多く存在
うれしいこと・楽しいことを感じると分泌される
- 運動調節・ホルモン調節に関わる。
- 快楽を得る・意欲を感じるに関わる。
- 学習・記憶などに関わる。
脳と交感神経終末に多く存在
ストレスを感じると分泌される
- 心拍数・呼吸数・血圧をあげて体を緊張状態・興奮状態にする。
- 覚醒するに関わる。
- やる気・集中力などに関わる。
副腎髄質に多く存在
ストレスを感じると分泌される
- ストレス反応の中心的な役割を果たす。
- 交感神経を刺激し、心拍数の増加、血糖値の上昇、気管支の拡張などの作用をもたらす。
この作用により運動器官への血液供給が増加し運動能力が上がる。 - 血糖値の上昇により脳も覚醒する。集中力や判断力が高まる。
.
これら神経伝達物質の材料であるチロシン【の材料であるフェニルアラニン】には
- ストレスを和らげる効果(ノルアドレナリン・アドレナリン)
- 集中力を高める効果(ドーパミン・ノルアドレナリン)
- 記憶力を向上させる効果(ドーパミン)
- うつ病を予防する効果(ノルアドレナリン・アドレナリン)
メラニンの材料
黒髪のもととなるメラニン(黒色メラニン)は頭皮の毛包内にあるメラノサイトでチロシンを原料に酵素チロシナーゼの作用により化学反応を起こし、いくつかの段階を経て作られます。
代謝の流れは以下です。
.
メラニンのもとであるチロシンの不足は白髪につながります。
チロシンは体内においてフェニルアラニンから生成されます。つまり上記代謝の流れにおいてチロシンの前にフェニルアラニンが置かれます。
.
白髪予防は毛包内にメラニンが十分にあることが前提です。そのためにはチロシンまたはそのもとであるフェニルアラニンをしっかりと体内に取り入れておく必要があります。
フェニルエチルアミンの材料
フェニルエチルアミン(PEA)は恋愛中、特に初期に脳内に最も多く分泌され恋愛特有のドキドキや多幸感をもたらします。なので「恋愛ホルモン」や「恋愛物質」の異名をもちます。
女性は「恋をすると美しくなる」とよく言われています。
それは一部PEAが関与しているともいえます。PEAが分泌されると食欲が減退するので美肌効果(肌がツヤツヤする)につながるからです。なおPEAが分泌されると食欲が減退するのは「恋をすると食事が喉も通らなくなる」からだといわれています。
フェニルアラニンはPEAの前駆体です。
DLフェニルアラニンの効果・効能
エンドルフィン
エンドルフィンとは脳内で機能する神経伝達物質の1つです。
内因性「endo-」のエンドとモルヒネ「morphine」のルヒネ→ルフィンが名前の由来です。モルヒネと類似した構造もつ内因性オピオイドペプチドです。脳で産生され、オピオイド受容体に結合し鎮痛作用を発揮します。
エンドルフィンにはα、β、γの3種類あります。
最も活性が強く、苦痛を取り除く時に最も分泌されるのがβ-エンドルフィンです。基本エンドルフィンといったらβ-エンドルフィンを指していると考えてください。
エンドルフィンは脳内のモルヒネ受容体に結合し鎮痛作用や快楽作用を示します。モルヒネなどの麻薬と似た作用を持つので脳内麻薬とも呼ばれています。
エンドルフィンの作用のわかりやすい例はランナーズハイです。ランナーズハイとは【長時間走り続けているうちに苦しさを感じなくなり気分が高揚している状態】を言います。
ランナーズハイはエンドルフィンに分泌によるものという説があります(ですとは断言できません)。
DLフェニルアラニンにはエンドルフィンの活性を高める作用があります。
DLフェニルアラニン(のサプリメント)はL型(天然型)とD型(非天然型=人工的に合成)が1:1の割合で合成されたものです。DLフェニルアラニンには痛みを抑える働きがあります。そのため鎮静剤として医療現場で利用されます。
なおDフェニルアラニンにエンドルフィンやエンケファリン(内因性オピオイドペプチドの1種)を分解する酵素の働きを阻害する作用があるとされています。
※DLはL型とD型の等量混合物でラセミ体とも呼ばれます。
アミノ酸は立体構造が左右対称なL型とD型を持つ光合異性体です。たんぱく質を構成する20種類のアミノ酸のうちグリシン以外の19種類がL型D型両方持ちます。
体たんぱく質を構成するアミノ酸はL型です。
アミノ酸サプリメントの原料はL型です(ですと言い切ってしまうのもなんですが、まあL型です)。
なのでこのブログの「アミノ酸」は基本すべて「L型のアミノ酸」のことです。そうなると題名等は本来L-〇〇〇〇(例 L-フェニルアラニン、L-アルギニン、L-システイン)とすべきですが、面倒なので「L-」はすべて省いております。
生体中に存在するアミノ酸のうちD型はほとんど存在しない(あっても生理機能をもっていない)と考えられてきました。
が、近年の研究によりD型(&その代謝や合成に関わる酵素)が生体内のさまざまな組織に存在し多様な生理機能をもっていることが判明しつつあります。
フェニルアラニンのサプリメントによくあるキャッチフレーズ集
- ストレスに負けない生活を送るため
- 気分がふさぎがちなかたを前向きにさせる
- 頑張る方を応援
- 運動やダイエットにも活用
- 白髪に悩んでいる方に
フェニルアラニンの摂取量、不足、過剰
フェニルアラニンの推奨摂取量は、1日当たり体重1kgに対して25mgとなっています。
例 体重50kgの場合 約1250㎎/日
※25㎎はフェニルアラニン+チロシンの数値です。
by 2007年 WHO/FAO/UNU合同専門協議会報告
参照 必須アミノ酸 ウィキペディア
サプリメントなどで度を超えて摂取することで、副作用が生じる恐れがあります
フェニルアラニンの豆知識
アスパラギン酸とフェニルアラニンから成る人工の甘味料の一種。 カロリーは砂糖と同じですが、同じ「甘さ」を得る場合にアスパルテームは砂糖の約1/200の量で足ります。
フェニルケトン尿症の人は、食品に含まれるフェニルアラニンの摂取量をコントロールしなければなりません。そのため、食品衛生法において「L-フェニルアラニン化合物」表示が義務づけられています。
例 甘味料(アスパルテーム・L-フェニルアラニン化合物)
参照 食品衛生の窓 東京都福祉保健局
フェニルアラニンと相性の良い栄養成分
・ビタミンB6
・ビタミンC
カテコールアミンは以下の代謝経て作られます。
フェニルアラニン→チロシン→L-ドーパ→ドーパミン→ノルアドレナリン→アドレナリン
この反応には酵素の働きが必要となります。一連の酵素反応をまとめると下記になります。
- チロシン→ドーパ チロシン水酸化酵素
- L-ドーパ→ドーパミン 芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素
- ドーパミン→ノルアドレナリン ドーパミンβ-水酸化酵素
- ノルアドレナリン→アドレナリン フェニルエタノールアミンN-メチル基転移酵素
L-ドーパ→ドーパミンの反応を触媒する酵素は芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素です。ビタミンB6はこの酵素の補酵素として必要です。
ドーパミン→ノルアドレナリンの反応を触媒する酵素はドーパミンβ-水酸化酵素(ドーパミンヒドロキシラーゼ)です。ビタミンCはこの酵素の補酵素として必要です。
なので原料であるフェニルアラニンまたはチロシンが十分であっても、ビタミンB6、ビタミンCが不足しているとカテコールアミンの減少につながってしまいます。
フェニルアラニンのレーダーチャート解説
- 6
このカテゴリーに効果があることで有名。即効性があったり、継続して摂取することで効果を感じる - 5
このカテゴリーに効果があることで有名。継続して摂取することでなんとなく効果を感じる - 4
このカテゴリーに効果があるといわれている。効果が得られることを期待して飲んでいる - 3.5
このカテゴリーに効果があるといわれているが、個人的に摂取目的としていない - 3
このカテゴリーになんらかの効果があるもの - 2
このカテゴリーとはあまり関係ないと思われる - 1
このカテゴリーとは関係ないと思われる
※4以上が摂取目的となっているカテゴリー
フェニルアラニン 総合評価 A+ 15
5つのカテゴリーのうち、評価が高い上位3つのカテゴリーを足したものです。「B~SS」でつけています。
SS 18点
S 16点以上
A+ 14点以上
A 12点以上
B+ 10点以上
B 9点以下
髪(白髪)評価6
黒髪のもととなるメラニン(黒色メラニン)は頭皮の毛包内にあるメラノサイトでアミノ酸チロシンを原料に酵素チロシナーゼの作用により化学反応を起こし、いくつかの段階を経て作られます。
実際の代謝の流れは以下です。
チロシン→ドーパ→ドーパキノン→ドーパクロム→インドール-5,6-キノン→黒色メラニン
チロシンは体内ではフェニルアラニンから生成されます。つまり上記代謝の流れにおいてチロシンの前にフェニルアラニンが置かれます。
フェニルアラニン→チロシン→ドーパ→ドーパキノン→ドーパクロム→インドール-5,6-キノン→黒色メラニン
肌(美肌)評価2
NMFは人間がもともともっている皮膚の保湿成分で角質細胞内においてケラチンとともに存在しています。角質層において体内の水分を逃さない役割(肌の保湿機能)や外的刺激から肌を守る役割(肌のバリア機能)を果たしています。
NMFの主成分はアミノ酸です。NMFはアミノ酸およびアミノ酸誘導体(PCA)で半分以上占められています。
NMFの組成
NMF内のアミノ酸組成
※数値は諸説あり
フェニルアラニンおよびチロシンはNMF内のアミノ酸組成に含まれています。
うちフェニルアラニンは約1%、チロシンは約2%を占めています。
※チロシンはずばりメラニンの材料です。フェニルアラニンはチロシンの原料です。
チロシンが体内に増えることは多かれ少なかれ肌のメラニンの量も増えることになってしまいます。なので、そのもとであるフェニルアラニンは、肌(美白)にはあまりプラスにならないかもしれません。
体型(ダイエット)評価4.5
脂肪燃焼
脂肪燃焼のメカニズムを簡単にまとめると以下になります。
- 分解 体内に蓄積された中性脂肪を遊離脂肪酸とグリセリンに分解する
- 運搬 分解されてできた遊離脂肪酸を細胞のミトコンドリアに運搬する
- 燃焼 ミトコンドリアで遊離脂肪酸がエネルギー貯蔵物質ATPに変わる
ATPがエネルギーとして消費される→脂肪燃焼
①分解の過程について
運動時や飢餓時などエネルギーが必要となる時に、中性脂肪は遊離脂肪酸とグリセリンに分解されます。
もう少し詳しく言うと
運動時や飢餓時などエネルギーが必要となる時に、中性脂肪は脂肪動員ホルモンの刺激により脂肪細胞内にある脂肪分解酵素リパーゼが活性されて遊離脂肪酸とグリセリンに分解されます。
脂肪動員ホルモンにあてはまるのはノルアドレナリン、アドレナリンといったカテコールアミンや成長ホルモン、グルコガンなどです。
カテコールアミンは生体内で以下のように代謝されます。
フェニルアラニン→チロシン→L-ドーパ→ドーパミン→ノルアドレナリン→アドレナリン
前駆体であるフェニルアラニンを摂取することで、カテコールアミンの分泌が高まることが期待できます。フェニルアラニンは脂肪燃焼に貢献するアミノ酸の1つにカウントしてもいいかもしれません。
食欲抑制
フェニルアラニンには食欲を抑制する作用があるアミノ酸として有名です。この作用はフェニルエチルアミンが関係していると考えられます。
フェニルエチルアミンは恋愛中(特に初期)に脳内に最も多く分泌される物質で、恋愛特有の「ドキドキ」を演出します。
この物質が分泌されると食欲が抑制される理由は「恋をすると食事が喉も通らなくなる」といった現象を引き起こすからです。
フェニルエチルアミンは脳内でフェニルアラニンが変換されることで生成されます。
体力(普段)評価4
ストレスを受けるとストレスホルモンの消費が激しくなります。ストレスホルモンはコルチゾール・アドレナリン・ノルアドレナリンなどが当てはまります。フェニルアラニンはアドレナリン・ノルアドレナリンの前駆体です。なのでフェニルアラニンの摂取はストレスを緩和する効果が期待できます。
その他(代謝)評価2.5
コエンザイムQ10は「電子の受け渡し」の際に働く補酵素で、エネルギー産生に必須の成分です。この成分が不足することが「電子の受け渡し」がスムーズにいかない(=エネルギー不足)大きな要因となります。
コエンザイムQはキノン骨格(ベンゾキノン環)とイソプレノイド側鎖から成る化合物です。
ベンゾキノン環はチロシンから合成され、イソプレノイド側鎖はアセチルCoAからメバロン酸経路を経て合成されます。フェニルアラニンはチロシンの材料です。